詐欺の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近30年間)を見ると,8-3-1-1図のとおりである(特殊詐欺(本項(3)参照)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移については,8-3-1-17図参照)。
認知件数は,平成元年から10年までは5万件前後,11年から13年までは4万件台前半で推移していたが,15年及び16年に大きく増加し,17年には8万5,596件に達した後,18年から減少し,23年には3万4,720件となった(CD-ROM参照)。その後,再び増加傾向に転じ,29年には4万2,571件に達したが,翌年からは毎年減少し,令和2年は3万468件(前年比5.4%減)であった。なお,特殊詐欺については,罪名としては,詐欺のほか,恐喝又は窃盗にも該当し得ることに留意する必要があるが,その被害が目立ち始めたのは平成15年夏頃であり,16年には特殊詐欺の認知件数が約2万5,700件に達している(本項(3)参照)。刑法犯の認知件数総数に占める詐欺の認知件数の割合は,令和2年は5.0%であり,平成3年(2.0%)よりも高い(1-1-1-3図及びCD-ROM資料1-2参照)。
検挙件数は,平成10年までは4万件台を維持していたが,11年以降減少し,13年から21年まで,おおむね3万件前後で推移した後,更に減少し,25年からは1万件台で推移し,令和2年は1万5,270件(前年比4.0%減)であった。
検挙率は,平成10年までは90%台であったが,11年以降の検挙件数の減少及び14年以降の認知件数の増加により大きく低下し,16年には32.1%まで低下した後,22年(66.1%)まで上昇し続けた。その後,再び低下し,25年から令和元年まで40%台で推移したが,2年は50.1%(前年比0.7pt上昇)であった。
令和2年における詐欺の認知件数及び検挙件数の手口別構成比を見ると,8-3-1-2図のとおりである。
詐欺の主な手口別の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近20年間)を見ると,8-3-1-3図のとおりである。
売付けの認知件数は,平成17年(2万2,052件)をピークに,翌年から23年(3,585件)まで減少し続けた後,24年から26年(9,612件)まで増加したものの,29年以降は減少を続けていたが,令和2年は6,090件(前年比6.3%増)であった。検挙件数は,平成17年(4,407件)をピークに,翌年から減少傾向にあったが,令和2年は1,146件(同7.1%増)であった。なお,平成17年から20年までの間,オークション利用詐欺の検挙件数が1,000件を超えていたことにも留意が必要である(4-5-2-1表CD-ROM参照)。検挙率は,16年(15.3%)から上昇傾向にあり,23年には,認知件数の減少等により50.2%に達したが,その翌年から減少し,近年は,おおむね10%台で推移している。
借用の認知件数は,平成14年(6,515件)をピークに,翌年から減少傾向にあり,令和2年は,971件(前年比0.3%減)であり,平成14年の約7分の1の水準である。検挙件数は,同年(4,789件)をピークに,翌年から減少傾向にあり,令和2年は804件(同1.9%増)であった。検挙率は,平成13年以降,一貫して60%を上回っており,22年以降,おおむね80%前後で推移している。
有価証券等利用の認知件数は,平成13年(4,862件)以降,減少傾向にあるものの,16年に3,000件を下回った後も,1,300件台から2,400件台の間で推移していたが,令和2年は1,184件(前年比13.5%減)であった。検挙件数は,平成13年(4,223件)を最多に,翌年から減少傾向にあり,25年以降はおおむね800件台から1,600件台の間で推移し,令和2年は903件(同25.0%減)であった。検挙率は,平成28年(92.7%)を最高に,60%を上回る水準で推移している。
買受けの認知件数は,平成15年(4,754件)を最多に,20年まではおおむね3,000件を上回って推移していたが,21年に大きく減少し,その後も減少傾向にあり,令和2年は1,002件(前年比23.6%増)であった。検挙件数は,平成14年(2,746件)をピークに,翌年から減少傾向にあり,20年に一旦増加したものの,21年以降はおおむね500件台から1,200件台の間で推移し,令和2年は792件(同25.3%増)であった。なお,平成17年から20年までの間,オークション利用詐欺の検挙件数が1,000件を超えていたことにも留意が必要である(4-5-2-1表CD-ROM参照)。検挙率は,17年(42.4%)を除いて,50%を上回る水準で推移しており,近年は上昇傾向にある。
無銭の認知件数は,平成15年(1万2,679件)を最多に,21年までは1万件台で推移していたが,22年(9,253件)以降,減少傾向にあり,令和2年は3,452件(前年比12.0%減)であった。検挙件数は,平成18年(7,210件)を最多に,翌年から減少傾向にあり,29年以降は2,000件台で推移しており,令和2年は2,352件(同7.0%減)であった。検挙率は,平成13年以降,50%台前半から60%台前半の間で推移していたが,令和2年は68.1%であった。
保険の認知件数は,平成13年から16年(620件)まで増加し,翌年に大きく減少した後は,18年から24年までは400件台,25年から28年までは300件台,29年以降は200件台でそれぞれ推移していたが,令和2年は182件(前年比30.0%減)であった。検挙件数は,平成25年(283件)以降,200件台で推移していたが,令和2年は176件(同24.8%減)であった。検挙率は,他の手口と比較して総じて高く,平成18年(80.0%)を最低に,一貫して80%以上を維持している。
特殊詐欺に関係する手口である留守宅の認知件数は,平成15年に急増(前年比786.3%増)した後,その翌年から令和元年までは3,000件台から9,000件台で推移していたが,2年は2,540件(同62.4%減)と大きく減少した。検挙件数は,平成20年から28年まで1,000件台で推移した後,29年に2,000件台,30年に3,000件台に至ったが,令和2年は1,993件(同39.2%減)であった。検挙率は,平成22年から令和元年までは30%台から40%台で推移していたが,2年は78.5%(同29.9pt上昇)と大きく上昇した。
募集の認知件数は,平成17年(9,629件)をピークに,その翌年から減少傾向にあり,令和2年は838件(前年比7.7%増)であった。検挙件数は,平成13年以降,300件台から2,300件台の間で増減を繰り返しており,令和2年は561件(同59.8%増)であった。検挙率は,平成13年以降,上昇・低下を繰り返しており,令和2年は66.9%(同21.8pt上昇)であった。
詐欺の検挙人員(総数・女性)及び女性比の推移(最近20年間)を見ると,8-3-1-4図のとおりである(特殊詐欺の検挙人員の推移については,8-3-1-23図参照)。詐欺の検挙人員総数は,平成21年(1万2,542人)をピークに翌年から減少傾向にあり,令和2年は8,326人(前年比5.8%減)であった。女性の検挙人員は,平成18年から21年まで2,000人台で推移した後,減少傾向にあり,令和2年は1,477人(同2.6%増)であった。女性比は,平成13年(13.2%)から19年(18.1%)まで上昇し続け,その後は,14%台から17%台の間で推移しており,令和2年は17.7%(同1.5pt上昇)であった。2年の詐欺の女性比は,刑法犯検挙人員総数の女性比(21.3%。1-1-1-6表参照)よりも低い。
令和2年における刑法犯の検挙人員に占める詐欺の検挙人員の割合は,総数では4.6%であり,女性では3.8%であった(CD-ROM資料1-1参照)。
詐欺の検挙人員について,犯行時の年齢層別構成比の推移(最近20年間)を見ると,8-3-1-5図のとおりである(特殊詐欺の検挙人員の年齢層別構成比については,8-3-1-25図参照)。詐欺の検挙人員のうち少年の構成比は,平成16年(10.0%(前年比3.3pt上昇))に大きく上昇した後,20年から29年までは7%台から8%台の間で推移していたが,30年に11%台に上昇したのを経て,令和2年は8.2%(同1.6pt低下)であった。詐欺の検挙人員のうち20歳代の者の構成比は,上昇傾向を示しており,2年における少年及び20歳代の者の検挙人員の合計は,詐欺検挙人員の37.1%(平成13年比12.0pt上昇)を占める。40歳代の者の構成比は,21年以降,17%台から19%台の間で推移し,50~64歳の者の構成比は,14年(28.0%)を最高に低下傾向にある一方,65歳以上の高齢者の構成比は,上昇傾向にある。令和2年の詐欺の検挙人員に占める高齢者の比率は8.9%(前年比0.1pt上昇)であったが,令和2年の刑法犯検挙人員総数に占める高齢者の比率(22.8%。1-1-1-5図参照)よりも顕著に低い。なお,同年における高齢者の詐欺の検挙人員(745人)のうち70歳以上の者は,430人であった(CD-ROM参照)。
少年による詐欺の検挙人員(触法少年による補導人員を含む。)及び人口比の推移(最近20年間)について,犯行時の年齢層別に見ると,8-3-1-6図のとおりである(少年による特殊詐欺の検挙人員及び人口比の推移については,8-3-1-26図参照)。総数では,平成16年(1,106人)に大きく増加し,18年に1,224人に達し,翌年から28年(748人)まで減少傾向にあったが,30年(1,087人)に再び増加したのを経て,その後は減少している。令和2年における少年による刑法犯の検挙人員(触法少年による補導人員を含む。)総数に占める詐欺の割合は,3.1%であった(3-1-1-6表参照)。触法少年は,平成20年(52人)を最多に減少傾向にあり,令和2年は29人であった。同年における年少少年の検挙人員は,最も多かった平成20年(203人)の約3分の1である66人であり,中間少年の検挙人員は,最も多かった18年(511人)の約2分の1である240人であった。これに対し,年長少年は,16年(470人)に大きく増加して以降,30年(581人)を最多に300人台から500人台の間で推移しており,令和2年は328人(前年比25.3%減)であった。
年齢層別に少年による詐欺の人口比を見ると,一貫して,触法少年が最も低く,年少少年がこれに続く。中間少年及び年長少年の人口比は,平成16年以降,触法少年及び年少少年の人口比よりも顕著に高い。26年以降は,一貫して,年長少年の人口比が中間少年の人口比を上回っている。
詐欺の検挙人員について,犯行時の職業別構成比の推移(最近20年間)を見ると,8-3-1-7図のとおりである。被雇用者・勤め人の構成比は,上昇傾向にあり,令和2年(3,013人)は36.2%(平成13年比7.1pt上昇)であった。年金等生活者(無職者のうち,年金,雇用保険,利子,配当,家賃等の収入による生活者をいう。)の構成比も,上昇傾向にあり,令和2年(434人)は5.2%(同3.2pt上昇)であった。学生・生徒等の構成比は,平成16年(8.4%)に大きく上昇し,18年(1,067人)の8.6%を最高に,翌年から低下傾向を示し,28年(479人)には4%台となったが,30年以降は5%台から6%台の間で推移し,令和2年(461人)は5.5%(同2.2pt上昇)であった。一方,失業者の構成比は,平成15年(728人)の7.1%を最高に,翌年から低下傾向にあり,令和2年(182人)は2.2%(同4.5pt低下)であった。また,ホームレスの構成比も,平成14年(594人)の6.2%を最高に,翌年から低下傾向にあり,令和2年(220人)は2.6%(同3.5pt低下)であった。
詐欺について,暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。以下(エ)において同じ。)の検挙人員及び検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率の推移(最近10年間)を見ると,8-3-1-8図のとおりである(特殊詐欺の暴力団構成員等検挙人員等の推移については,8-3-1-27図参照)。暴力団構成員等による詐欺の検挙人員は,平成26年(2,337人)を最多に,翌年から減少し続けている。暴力団構成員等の比率は,26年(22.3%)を最高に,翌年から低下し続け,令和2年は15.0%であるが,同年の刑法犯の検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率(4.1%。4-3-2-3表参照)よりも顕著に高い。同年の暴力団構成員等による詐欺の検挙人員を地位別に見ると,首領及び幹部の合計は12.2%,組員は18.2%,準構成員は69.7%であった。
外国人による詐欺の検挙人員及び検挙人員総数に占める外国人の比率の推移(最近20年間)を見ると,8-3-1-9図のとおりである(特殊詐欺の外国人検挙人員等の推移については,8-3-1-28図参照)。外国人による詐欺の検挙人員は,平成13年以降,増加傾向を示したが,19年に425人に達した後は,おおむね400人台で推移しており,令和2年は463人(前年比5.3%減)であった。2年の外国人による詐欺の検挙人員を国籍別に見ると,中国(195人,42.1%)が最も多く,次いで,韓国・朝鮮(81人,17.5%),ベトナム(50人,10.8%),ブラジル(16人,3.5%)の順であった(警察庁の統計による。)。同年の詐欺検挙人員総数に占める外国人の比率は,5.6%であり,同年における刑法犯の検挙人員総数に占める外国人の比率(5.2%)とほぼ同程度であった(警察庁の統計による。)。
令和2年における詐欺の認知件数について,犯罪供用物等別構成比(犯罪供用物の種類が2以上ある場合には,主たるものによる。)を見ると,8-3-1-10図のとおりである。
8-3-1-11図は,令和2年における詐欺の検挙事件(触法少年の補導件数を含まない。また,捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。以下(イ)において同じ。)及び刑法犯検挙事件総数について,共犯率(共犯による事件数(共犯人数不明(共犯事件であるものの,共犯者の人数が明らかでないものをいう。以下(イ)において同じ。)のものを含む。)の占める比率をいう。)及び共犯者数別構成比を見るとともに,これを成人又は少年のみによる事件,成人・少年共犯事件別に見たものである。共犯率は,刑法犯検挙事件総数では13.4%であるところ,詐欺については,総数(38.7%),成人のみによる事件(成人の単独犯又は成人のみの共犯による事件。37.0%)及び少年のみによる事件(少年の単独犯又は少年のみの共犯による事件。52.2%)のいずれも刑法犯検挙事件総数の共犯率を大きく上回った。また,共犯による事件のうち4人以上の組によるものが占める比率について,刑法犯検挙事件総数・詐欺の別に見ると,成人のみの共犯による事件では,それぞれ1.1%,6.0%,少年のみの共犯による事件では,それぞれ2.8%,6.0%,成人・少年共犯事件では,それぞれ19.5%,22.0%であり,いずれも詐欺が刑法犯検挙事件総数を上回った(3-1-1-7図CD-ROM参照)。また,詐欺は,刑法犯検挙事件総数と比較して,共犯による事件のうち共犯人数不明のものの構成比が高かった。
詐欺の検挙人員のうち微罪処分(第2編第2章第1節参照)により処理された人員及び微罪処分率(検挙人員に占める微罪処分により処理された人員の比率をいう。)の推移(最近20年間)は,8-3-1-12図のとおりである。微罪処分により処理された人員は,平成18年(3,045人)を最高に,翌年から減少し続け,令和2年は758人(前年比14.9%減)であった。
微罪処分率は,平成13年から19年(24.6%)まで上昇傾向にあったが,翌年から低下傾向にあり,令和2年は9.1%(前年比1.0pt低下)であった。
文書偽造等(文書偽造,有価証券偽造及び支払用カード偽造をいう。以下アにおいて同じ。)及び通貨偽造の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(最近20年間)を見ると,8-3-1-13図のとおりである。文書偽造等の認知件数は,平成20年までは4,000件台から6,000件台の間で推移していたが,21年以降は減少傾向にあり,近年はおおむね2,000件前後で推移し,令和2年は1,821件(前年比6.6%減)であった。通貨偽造の認知件数は,平成14年から大きく増加し,16年には7,675件に達したが,その後,大きく減少し,25年以降は1,000件を下回って推移し,令和2年は217件(同33.8%減)であった。検挙率については,文書偽造等はおおむね80%以上の高い水準で推移しているのに対し,通貨偽造は60%を下回る水準で推移している。
組織的犯罪処罰法(本編第2章第1節1項(2)参照)違反のうち組織的な詐欺について,検察庁新規受理人員の推移を見ると,8-3-1-14表のとおりである。
特定商取引法(本編第2章第1節2項(1)参照),犯罪収益移転防止法(同節3項(1)参照)及び携帯電話不正利用防止法(同項(2)参照)の各違反について,検察庁新規受理人員の推移(最近20年間)を見ると,8-3-1-15図のとおりである。犯罪収益移転防止法違反は,増加傾向が顕著であり,平成23年に1,000人を超え,29年以降は2,000人を超えて推移しており,令和2年は2,502人(前年比4.3%増)であった。
特殊詐欺とは,例えば,被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ,指定した預貯金口座へ振り込ませるなどの方法により,不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(恐喝及び窃盗を含む。)の総称をいう(特殊詐欺の類型については,8-3-1-16表参照)。特殊詐欺は,親族等を装って被害者に電話をかけて,身近な人が困難な状況に陥っており,金銭が至急必要であるかのように信じ込ませる手口のオレオレ詐欺によるものが平成15年夏頃から目立ち始め,16年には早くも認知件数が約2万5,700件,被害総額(本章第3節2項(2)参照)が約284億円に達した。その後も,特殊詐欺は,社会情勢の変化等に応じて手口の巧妙化・多様化が進み,今日まで依然として深刻な情勢にある。
特殊詐欺は,主犯・指示役を中心として,電話を繰り返しかけて被害者をだます「架け子」,自宅等に現金等を受け取りに行く「受け子」,被害者からだまし取った金銭をATM(CDを含む。以下この編において同じ。)から引き出す「出し子」,犯行に悪用されることを承知しながら,犯行拠点をあっせんしたり,架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等を調達したりする「犯行準備役」等からなる犯行グループにより,役割分担の上,組織的に敢行されている。
特殊詐欺の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(統計の存在する平成16年以降)を見ると,8-3-1-17図のとおりである。特殊詐欺の各類型について集計を始めた時期が異なる点等には留意する必要があるが,認知件数は,16年に2万5,667件に達した後,翌年から19年まで減少し,20年(2万481件)に一旦増加したものの,21年に大きく減少して1万件を下回り,22年には6,888件まで減少した。その後,23年から29年(1万8,212件)まで増加し続けたのを経て,30年からは減少し続けており,令和2年は1万3,550件(前年比19.6%減)であった。検挙件数は,平成16年から21年(5,669件)まで増加し,23年(2,556件)に大きく減少したが,24年からは増加傾向にあり,令和2年は7,424件(同8.9%増)であり,平成16年以降最多となった。
特殊詐欺について,平成30年以降における月別の認知件数の推移を見ると,8-3-1-18図のとおりである。いずれの年も,3月の認知件数が多く,1月の認知件数が最も少ない。前月の認知件数からの増減を見ると,30年及び令和元年については,2月から3月にかけて増加し,4月から5月にかけて減少した後,6月から7月にかけて増加ないし横ばいとなり,8月に一旦減少するも,9月から10月にかけて増加した後,11月及び12月は横ばいとなる動きを見せていたが,2年については,2月から3月にかけて増加した後,4月以降,おおむね横ばい状態で推移した後,12月に増加するという動きを示している。
特殊詐欺の認知件数及び検挙件数の推移(統計の存在する平成16年以降)を類型(8-3-1-16表参照)別に見ると,8-3-1-19図のとおりである。令和2年における類型別の認知件数は,オレオレ詐欺(6,407件。同年においては「預貯金詐欺」を含む。特に断らない限り,以下この項において同じ。)が最も多く,次いで,キャッシュカード詐欺盗(2,850件),架空料金請求詐欺(2,010件),還付金詐欺(1,804件),融資保証金詐欺(295件), ギャンブル詐欺(98件),金融商品詐欺(58件),交際あっせん詐欺(22件)の順であり,その他の特殊詐欺が6件であった。
特殊詐欺の各類型について集計を始めた時期が異なる点等には留意する必要があるが,各年における各類型の認知件数が特殊詐欺全体の認知件数に占める割合を見ると,オレオレ詐欺は,融資保証金詐欺が最も高い割合を占めた平成17年及び18年を除いて最も高く,19年以降,35%台から64%台の間で推移し,令和2年は47.3%であった。平成30年から集計されているキャッシュカード詐欺盗の各年の認知件数が特殊詐欺全体の認知件数に占める割合は,令和元年(22.4%),2年(21.0%)において,オレオレ詐欺に次いで高かった。他方,平成17年に46.0%と最も高い割合を占めた融資保証金詐欺は,22年(5.3%。前年比15.1pt低下)に大きく低下して以降,低下傾向にあり,令和2年は2.2%であった。また,金融商品詐欺も,平成24年の22.8%を最高に,25年(15.6%)から低下傾向にあり,令和2年は0.4%であった。同年の検挙率を類型別に見ると,キャッシュカード詐欺盗(90.9%),融資保証金詐欺(67.1%),その他の特殊詐欺(66.7%),金融商品詐欺(63.8%),交際あっせん詐欺(63.6%)及びオレオレ詐欺(56.3%)が,特殊詐欺全体(54.8%)を上回った(CD-ROM参照)。
特殊詐欺のうちオレオレ詐欺について,形態(文言)別の認知件数の推移(最近10年間)を見ると,8-3-1-20図のとおりである。平成23年は,借金等の返済名目が,24年及び25年は,妊娠中絶費用等名目が,26年以降は,横領事件等示談金名目が,「その他の名目」を除いてそれぞれ最も多く,27年以降は,例年,横領事件等示談金名目,借金等の返済名目,妊娠中絶費用等名目の順に多い。令和2年における「その他の名目」(6,109件)の中では,預貯金詐欺が4,135件,損失保証金等名目が1,377件であった(CD-ROM参照)。
特殊詐欺のうち架空料金請求詐欺について,形態(文言)別の認知件数の推移(最近10年間)を見ると,8-3-1-21図のとおりである。「その他の名目」を除くと,有料サイト利用料金等名目が一貫して最も多く,同名目が架空料金請求詐欺全体の認知件数に占める割合は,24%台から60%台の間で推移しており,令和2年は52.0%であった。
特殊詐欺のうち還付金詐欺について,形態(文言)別の認知件数の推移(資料を入手し得た平成24年以降)を見ると,8-3-1-22図のとおりである。医療費名目は,29年を除いて,他の名目よりも多い。健康保険・社会保険等名目は,24年から28年にかけて増加し,29年には医療費名目を上回ったが,翌年には大きく減少した。令和2年における医療費名目及び健康保険・社会保険等名目の合計が還付金詐欺全体の認知件数に占める割合は,91.6%であった。
特殊詐欺の検挙人員の推移(統計の存在する平成16年以降)を見ると,8-3-1-23図のとおりである。詐欺全体の検挙人員が22年以降減少傾向にあるのに対し(8-3-1-4図参照),特殊詐欺の検挙人員は,24年に1,000人を,27年に2,000人をそれぞれ上回ると,令和元年には2,861人に達し,2年は2,621人(前年比8.4%減)であった。なお,平成26年以降の特殊詐欺4類型(オレオレ詐欺,架空料金請求詐欺,融資保証金詐欺及び還付金詐欺をいう。以下この項において同じ。)の検挙人員を見ると,30年に2,609人に達した後,減少し,令和2年は1,848人(同21.0%減)であった。特殊詐欺4類型の女性検挙人員を見ると,平成26年(48人)から令和2年(172人)まで増加傾向にあり,特殊詐欺4類型の検挙人員に占める女性検挙人員の比率も,平成26年(3.2%)以降上昇傾向にあり,令和2年は9.3%であった(CD-ROM参照)。
令和2年の各都道府県における特殊詐欺の検挙人員について,人口比(各都道府県における人口10万人当たりの人員)を地方別・人口規模別に見ると,8-3-1-24図のとおりである。人口比は,人口が多い都道府県で高い傾向があり,これを高等検察庁の管轄に対応する地方別で見ると,関東地方(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県,群馬県,静岡県,山梨県,長野県及び新潟県)が3.1,近畿地方(大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,滋賀県及び和歌山県)が2.1,中国地方が1.6,中部地方(愛知県,三重県,岐阜県,福井県,石川県及び富山県)が1.2,北海道・東北地方が1.1,四国地方が0.9,九州・沖縄地方が0.8であった。もっとも,都道府県別の検挙人員及び人口比は,検挙した都道府県の管轄区域によるものであり,検挙された者や被害者が必ずしも検挙した都道府県の居住者とは限らない点に留意が必要である。
特殊詐欺4類型の検挙人員について,犯行時の年齢層別構成比の推移(資料を入手し得た平成26年以降)を見ると,8-3-1-25図のとおりである(男女別については,CD-ROM参照)。検挙人員における30歳未満の若年者層の構成比は,詐欺全体では30%台で推移しているのに対し(8-3-1-5図CD-ROM参照),特殊詐欺4類型では62%台から73%台の間で推移しており,令和2年は72.1%であった(前年比1.2pt低下)。
少年(触法少年を除く。)による特殊詐欺4類型の検挙人員及び人口比(各年齢層の少年10万人当たりの検挙人員)の推移(資料を入手し得た平成26年以降)を犯行時の年齢層別に見ると,8-3-1-26図のとおりである。特殊詐欺4類型の検挙人員は,いずれの年齢層も30年(年少少年40人(26年比25人増),中間少年273人(同156人増),年長少年468人(同274人増))まで増加傾向にあったが,令和元年から減少し,2年は,順に12人,124人,209人であった。少年による特殊詐欺の人口比も,同様の傾向であり,平成30年に年少少年(1.8),中間少年(11.7),年長少年(19.1)に達した後,いずれの年齢層も低下した。
特殊詐欺について,暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者をいう。以下(ウ)において同じ。)の検挙人員及び検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率の推移(資料を入手し得た平成24年以降)を見ると,8-3-1-27図のとおりである。暴力団構成員等の検挙人員は,27年(826人)を最多に,翌年から減少傾向にある。検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率は,26年の35.2%を最高に,翌年から低下し続け,令和2年は15.3%(前年比2.9pt低下)であった。
特殊詐欺について,外国人の検挙人員及び検挙人員総数に占める外国人の比率の推移(資料を入手し得た平成24年以降)を見ると,8-3-1-28図のとおりである。刑法犯の外国人検挙人員は,同年以降,1万人前後で推移しているのに対し(4-9-2-1図CD-ROM参照),特殊詐欺については,29年までは20人台から60人台の間で推移していたが,30年に122人(前年比96.8%増)と急増した後も増加し続け,令和2年は136人(同0.7%増)と最多を更新した。2年の外国人検挙人員を国籍別に見ると,中国(97人,71.3%)が最も多く,次いで,韓国(10人,7.4%),ベトナム(7人,5.1%),タイ及びブラジル(それぞれ6人,4.4%)の順であった(警察庁刑事局の資料による。)。外国人の比率は,上昇傾向にあり,同年は5.2%(同0.5pt上昇。平成24年の3.2倍)と最高を記録した。
詐欺は,一定の要件の下,犯罪捜査のための通信傍受の対象となる(本編第2章第3節1項参照)。詐欺について,通信傍受実施事件数及び傍受令状発付件数の推移(平成28年以降)を見ると,8-3-1-29表のとおりである。