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令和3年版 犯罪白書 第8編/第2章/第1節/1

第2章 詐欺に関連する法令
第1節 詐欺に関連する処罰法規
1 刑法・組織的犯罪処罰法
(1)刑法

詐欺については,まず,刑法(明治40年法律第45号)は,246条1項で「人を欺いて財物を交付させ」る行為(狭義の詐欺罪)を,同条2項で「前項の方法により,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させ」る行為(詐欺利得罪)をそれぞれ処罰の対象としている。また,248条では,「未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて,その財物を交付させ,又は財産上不法の利益を得,若しくは他人にこれを得させ」る行為を準詐欺罪として処罰の対象としている。加えて,昭和62年法律第52号による改正では,コンピュータの普及に伴い,電子情報処理組織をめぐる種々の不正行為が次第に増加しつつあったことから,この種の不正行為に対処するための規定が刑法に新設され,その一環として,「人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り,又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させ」る行為(246条の2)が電子計算機使用詐欺罪として新たに処罰の対象とされた(昭和62年6月施行)。これらの罪については,250条により,それぞれ未遂行為も処罰の対象とされている。このほか,刑法は,詐欺の手段として用いられることがある文書や有価証券等の偽造・行使,虚偽公文書作成・行使等の行為も処罰の対象としている。

(2)組織的犯罪処罰法

組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成11年法律第136号。以下この章において「組織的犯罪処罰法」という。)は,組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害し,犯罪による収益がこの種の犯罪を助長するとともに,これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えることに鑑み,組織的に行われた殺人等の行為に対する処罰を強化するなどの目的で平成11年8月に制定された(12年2月施行)。同法により,刑法に定められた一定の犯罪が,<1>団体の活動として,その罪に当たる行為を実行するための組織により行われた場合,<2>団体に不正権益を得させるなどの目的で実行された場合について,いずれもその法定刑を加重する規定が設けられた(<1>については,狭義の詐欺罪及び詐欺利得罪も対象とされている。)。さらに,これらの刑法犯及びその他の特定の犯罪に係る犯罪収益等を仮装・隠匿・収受する行為及び不法収益等を用いた法人等の事業経営の支配を目的とする役員変更等の行為といったマネー・ローンダリング行為を処罰する規定が設けられたほか,犯罪収益等の没収・追徴及びそのための保全手続に関する規定等が定められた。

平成29年法律第67号による改正では,犯罪の国際化及び組織化の状況に鑑み,並びに国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約第2編第6章第1節1項参照)の締結に伴い,必要となる罰則の新設等所要の法整備を行うため,一定の重大犯罪(対象犯罪)に当たる行為で,テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として,当該行為を実行するための組織により行われるもの,又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益の獲得等の目的で行われるものの遂行を二人以上で計画する行為であって,その計画に基づき当該犯罪を実行するための準備行為が行われたものを処罰する規定(テロ等準備罪)等が新設されており,組織的な詐欺,電子計算機使用詐欺等もこのテロ等準備罪の対象犯罪とされた(平成29年7月施行)。