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令和3年版 犯罪白書 第8編/第2章/第1節/3

3 特殊詐欺対策関連の特別法

特殊詐欺(本編第3章第1節1項(3)参照)は,平成15年夏頃から,いわゆるオレオレ詐欺によるものが目立つようになった。架空・他人名義の預貯金口座や携帯電話を利用した特殊詐欺が多発していたことから,その対策のため以下の立法がなされた。

(1)犯罪収益移転防止法等

インターネット等を通じて売買された他人名義の預貯金口座を不正に利用した振り込め詐欺(本編第3章第1節1項(3)コラム9参照)等の犯罪行為が多発していたことを踏まえ,平成16年法律第164号により,金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律(平成14年法律第32号)が改正され,法律の題名が金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律に改められるとともに,預貯金口座等の不正な利用を防止するため,預貯金通帳等の有償譲受け等に関する罰則が新設された(平成16年12月施行)。

金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律は,犯罪収益の移転防止を図り,併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保し,もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに,経済活動の健全な発展に寄与することを目的に,平成19年3月に制定された犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下(1)において「犯罪収益移転防止法」という。)により廃止され,預貯金通帳等の有償譲受け等の罰則は同法に引き継がれた(20年3月全面施行)。さらに,平成23年法律第31号による犯罪収益移転防止法の改正により,顧客等が隠蔽の目的で本人特定事項を偽った場合や預貯金通帳等の有償譲受け等に対する罰則が強化された(23年5月施行)。

(2)携帯電話不正利用防止法

携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号。いわゆる携帯電話不正利用防止法)は,振り込め詐欺(本編第3章第1節1項(3)コラム9参照)等の犯罪において,契約者を特定できない携帯電話が利用されることが多かったことを踏まえ,振り込め詐欺対策として,平成17年4月に制定されたものであり,匿名性の高い携帯電話を入手することを困難とし,携帯電話の不正な利用を防止するため,携帯電話に係る役務提供契約時における携帯音声通信事業者の本人確認義務に関する規定や,携帯電話の不正な譲渡等に関する罰則を設けたものである(18年4月全面施行)。また,平成20年法律第76号による改正により,SIMカード(契約者特定記録媒体)単体の譲渡等についても規制対象としたほか,携帯電話等の有償貸与業者が貸与契約を締結する際の本人確認等の手続を厳格に定めるとともに,携帯電話等の不正な貸与等についても新たに処罰の対象とした(20年12月施行)。