女子の窃盗による検挙人員は,窃盗罪に罰金刑が導入される前年の平成17年をピークに減少傾向にあるが,検挙人員の女子比はおおむね横ばいである(6-2-1-1図P210参照)。25年の一般刑法犯の検挙人員に占める窃盗の割合では,女子(78.1%)は男子(46.2%)に比べて顕著に高く,とりわけ万引きの割合は女子(64.4%)は男子(24.1%)の約2.7倍である(1-1-1-8表P7参照)。
女子の窃盗による起訴人員は,増加傾向にあり,とりわけ窃盗罪に罰金刑が導入された平成18年から大きく増加し,20年以降はおおむね高止まりの状況にある(6-2-3-4図<2>P228参照)。窃盗の検挙人員の女子比はおおむね横ばいであるにもかかわらず,窃盗の起訴人員の女子比は,25年は6年と比べ約3.7倍に上昇している。また,起訴人員の女子比のみならず,罰金刑導入後の18年から19年にかけて,女子の窃盗の起訴率のほか,女子の窃盗の起訴人員中の有罰金前科者率も大きく上昇しているのに対し,女子の窃盗の起訴猶予率は大きく低下しており(6-2-3-2図<2>P227,6-2-3-5図<2>P229参照),女子の一般刑法犯の検挙人員に占める万引きの割合が極めて高く,その割合は男子と比べても顕著に高いことを併せ考慮すると,窃盗罪に罰金刑が導入されたことが女子の起訴人員の増加に大きく影響しているものと推察される。
また,女子の窃盗事犯者は,入所受刑者の人員(6-2-5-1図P232参照)や仮釈放者の保護観察開始人員(6-2-6-2図<2>P243参照)においても増加傾向にあり,女子の起訴人員の増加は,窃盗の入所受刑者における女子比の上昇(6-2-5-1図P232参照)や女子の入所受刑者に占める窃盗の割合の上昇(6-2-5-2図<2>P233参照)等にも一定の影響が及んでいるものと思われる。
窃盗による女子の検挙人員は,高年齢化が顕著であり,平成15年までは少年の割合が4割台から5割台と最も高かったが,その後,少年の割合が低下するとともに,50歳以上の者の割合が大きく上昇し,24年以降は50歳以上の者が過半数を占めている。とりわけ女子高齢者の検挙人員は,25年は6年に比べ約4.7倍に増加し,20年以降は,窃盗による女子の検挙人員の中で高齢者が最も高い割合を占めている(6-2-1-2図<2>P210参照)。また,25年の一般刑法犯の検挙人員に占める窃盗の割合も,女子高齢者(92.6%)は男子高齢者(63.6%)と比べて顕著に高く,とりわけ万引きの割合は女子高齢者では83.5%を占めている(4-5-1-3図P185参照)。女子の万引きの検挙人員における高齢者の割合は,25年は6年と比べ約4倍にまで上昇しており,19年以降は高齢者の割合が最も高い(6-2-1-7図<2>P215参照)。
窃盗の起訴人員においても,女子の高年齢化は顕著であり,平成25年の女子高齢者の起訴人員は6年に比べ約44倍となった(本節3項P251参照)。年齢層別の構成比では,15年までは若年者の割合が最も高かったが,その後,若年者の割合は低下するとともに,高齢者の割合が上昇し,22年以降は高齢者の割合が最も高く,25年は6年と比べ約9.5倍となった(6-2-3-4図<2>P228,本節3項P251参照)。また,窃盗の起訴猶予人員においても,女子の高年齢化は顕著であり,19年以降は高齢者の割合が最も高い(6-2-3-6図<2>P230参照)。
保護観察付執行猶予者の保護観察開始人員について見ると,平成25年は,窃盗の女子高齢者の人員が16年に比べ2倍に増加し,高齢者の割合も16年に比べ約2.3倍にまで上昇しており,25年では高齢者の割合(26.4%)が最も高く,男子における割合(7.4%)と比べても顕著に高い(6-2-6-4図<2>CD-ROM参照)。また,高齢者における女子の割合は,窃盗は窃盗以外の罪名と比べても大きく上昇しており,同年では,窃盗(46.4%)は窃盗以外(7.4%)の約6.3倍と極めて高く,全年齢層の窃盗における女子の割合(19.6%)と比べても2倍以上である(6-2-6-3図<2><4>P244参照)。
入所受刑者について見ると,女子は,初入者,再入者共に,男子に比べて高齢者の割合が高く,50歳以上の者が過半数を占めている(6-2-5-3図P234参照)。また,女子高齢者の初入者の人員が,平成25年は16年と比べ約5.5倍に増加し,高齢者の割合も,初入者の方が再入者よりも顕著に上昇しており,25年は,女子の初入者における高齢者の割合が最も高く,その割合は16年に比べ約4.6倍にまで上昇した(同図参照)。入所度数で見ると,男子の場合は年齢層が上がるにつれて初入者の割合が低くなる傾向にあるのに対し,女子は,男子のような傾向までは認められず,各年齢層を通じて初入者の割合が最も高く,女子高齢者でも初入者が約半数を占めている(6-2-5-4図P235,本節3項P251参照)。
仮釈放者の保護観察開始人員について見ると,女子は平成25年の高齢者の割合が16年に比べ約3倍に上昇しており,25年は27.4%と高齢者の割合が最も高く,男子における割合(8.5%)と比べても顕著に高い(6-2-6-4図<1>CD-ROM参照)。また,高齢者における女子の割合も25年は16年に比べ約2倍に上昇しており,25年は,窃盗(32.0%)が窃盗以外(10.5%)の約3倍と顕著に高く,全年齢層の窃盗における女子の割合(12.7%)と比べても2倍以上である(6-2-6-3図<1><3>CD-ROM参照)。
犯行時の婚姻状況では,女子の窃盗の入所受刑者は,初入者,再入者共に,男子に比べて配偶者のある者の割合が顕著に高く,再入者では配偶者のある者の割合が最近10年間では低下傾向にあるものの,平成25年は約3割と依然として高い割合を占めている(6-2-5-5図P236参照)。
犯行時の就労状況では,同年における女子の初入者は,各年齢層を通じて男子よりも有職の割合が低く,女子の再入者においても高齢者を除き同様の傾向にある(6-2-5-6図P236参照)。
再犯状況について見ると,平成25年の女子の窃盗の入所受刑者のうち,執行猶予歴を有する者の割合は95.5%で,保護観察付執行猶予歴を有する者の割合は26.0%であり,いずれも,男子の窃盗の入所受刑者における割合(81.6%,22.3%)よりも高く,また窃盗以外の罪名の女子の入所受刑者における割合(73.2%,17.0%)と比べても顕著に高い(6-2-5-7図P237参照)。女子高齢者は,執行猶予期間中の再犯により入所する窃盗の受刑者の人員が,25年は16年に比べ6倍に増加した(同図CD-ROM参照)。
窃盗による再入者に占める窃盗再入者の割合は,女子の方が男子よりも大きく上昇しており,最近10年間でも女子の方が一貫して高い(6-2-5-8図CD-ROM参照)。また,窃盗再入者の再犯期間は,女子は,男子と比べると長い傾向にあり,前刑出所日から1年以上経過後に再犯に及んでいる者が過半数を占めているものの,女子の窃盗再入者は,1年未満のうちに再犯に及んだ者の割合(平成25年は42.6%)が窃盗以外の再入者における割合(同25.7%)と比べて高い(6-2-5-9図P238参照)。