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2 若年者の犯罪の現状と課題

若年者の一般刑法犯検挙人員の人口比は,少年よりも低いが,成人一般に比べると高く(7-2-1-1-1図<2>),一般刑法犯検挙人員の年齢層別構成比も相対的に高い割合を占めている(7-2-1-1-3図)。若年者の罪名別構成比を見ると,少年同様に窃盗が最も多い(7-2-1-1-8図)が,その手口は少年非行より悪質化・多様化する傾向が見られる(7-2-1-1-11図)とともに,窃盗以外の罪名の構成比も高くなり,犯罪傾向も多方向に拡大していく傾向が見られる(7-2-2-2表)。

また,20歳代に刑事処分を受けた者では,保護観察付執行猶予者の約47%,入所受刑者の約38%に何らかの保護処分歴があり(7-2-5-2図),これらの者では少年期の非行傾向が十分改善されずにその後の刑事処分に至っていることが推測される。

さらに,少年院出院者の刑事処分の状況を調べた今回の特別調査において,25歳に至るまでに調査対象者の38.5%が何らかの刑事処分を受けており(7-3-2-1図),少年時の非行と若年期の犯罪の関連を見たところ,特に窃盗,粗暴犯,性犯罪及び薬物犯罪において,同種犯罪に及ぶ比率が他の者より高く,犯罪傾向に一定の連続性がある。これに加え,少年時の非行名にかかわらず,刑事処分を受けた者のうち,窃盗に及んでいる者がほぼ半数を占め,手口等犯行の質的な面でも少年期より悪質化する傾向が認められた(7-3-3-2-3図7-3-3-2-1表7-3-2-7図)。窃盗は,万引きを中心に少年非行の大きな割合を占め,比較的早期に始まる非行であるが,年齢が高くなるにつれて,手口が悪質化する傾向が見られることから,少年非行の初期段階から適切な対応を執ることが重要である。また,同調査において粗暴犯の非行を行った少年のうち,少年院送致歴が2回以上ある者は,その7割が刑事処分を受け,約4割が実刑となるなど,量的にも質的にも問題性が大きいことから,この種の対象者の資質・環境面の問題性の解消に向けた指導や生活環境の調整の強化の必要性が高い。次に,同調査において薬物犯罪の非行を行った男子は,少年院出院後に犯罪に及ぶ者の比率が高く,しかも,薬物事犯だけでなく他の犯罪に及ぶ傾向が見られる(7-3-3-2-4図7-3-3-2-5図)ことや,若年者の薬物事犯の検挙人員が多いこと(7-2-1-2-2図)を踏まえ,薬物非行少年の指導等を充実化する必要性が示唆される。さらに,同調査の性犯罪類型の者については,他の犯罪類型における分析が当てはまらないことが多く,特有の問題があると考えられることから,性非行の問題を始め,各人に特徴的な問題性を適切に見極め,それにふさわしい処遇が必要である。