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1 刑事処分の状況
(1)刑事処分の概況

7-3-2-1図は,調査対象者が25歳に至るまでに受けた刑事処分のうち,主要刑事処分及び同処分に係る罪名の種類を男女別に見たものである。調査対象者644人のうち,主要刑事処分で実刑となった者は97人(15.1%)であり,執行猶予となった者は98人(15.2%),罰金となった者は53人(8.2%)であった。女子で刑事処分を受けたのは,執行猶予1人(覚せい剤取締法違反)及び罰金1人(窃盗)の合計2人であり,実刑を受けた者はいなかった。


7-3-2-1図 主要刑事処分の状況(男女別)
7-3-2-1図 主要刑事処分の状況(男女別)

なお,平成16年が最終出院年である少年院出院者全体の5年内の刑事施設入所率が9.2%である(7-2-5-4表)のに比して,今回の調査対象者のうち実刑となった者の比率が15.1%と高いのは,調査対象者が,本件出院時に18歳又は19歳である者に限られており,年少少年及び中間少年が含まれていないこと,また,追跡期間が出院後5年ではなく,25歳に達する日までであって,より長く,かつ,成人後の5年を包摂していることによると考えられる。

次に,調査対象者の全刑事処分の回数別構成比を見ると,7-3-2-2図のとおりである。刑事処分を受けた者のうち,37.5%が刑事処分を2回以上受けている。これらの者は,20歳代前半に短期間で犯罪を繰り返している者であり,その再犯傾向は強い。


7-3-2-2図 刑事処分の回数別構成比
7-3-2-2図 刑事処分の回数別構成比

(2)第1刑事処分

第1刑事処分に係る裁判の刑名・刑期別人員を罪名別(当該裁判が複数の罪名に基づくときは,法定刑の最も重いものによる。)に見ると,7-3-2-3表のとおりである。刑事処分を受けた248人のうち,第1刑事処分が懲役・禁錮であった者は173人であり,うち,実刑となった者が38人,執行猶予となった者が135人(うち,保護観察付執行猶予となった者が40人(29.6%)),罰金のみであった者は75人であった。刑期では,1年以上2年未満の者が最も多く,その罪名は窃盗,覚せい剤取締法違反等であった。また,5年を超える者は9人おり,その罪名は強盗致傷,傷害致死等であった。


7-3-2-3表 罪名別刑事処分の状況
7-3-2-3表 罪名別刑事処分の状況

第1刑事処分と主要刑事処分の罪名別の人員を比較すると,窃盗等においては,第1刑事処分の人員より主要刑事処分の人員が少なくなっており,第1刑事処分後に,更に法定刑のより重い罪を犯した者がいることが分かる。また,全刑事処分を見ると,調査対象者が犯した罪名で最も多いのは窃盗(123人)であり,次いで,傷害,暴行又は暴力行為等処罰法違反(計63人),道路交通法違反(54人),住居侵入(43人),自動車運転過失致死傷等(36人),覚せい剤取締法違反(30人)である(7-2-1-1-8図7-2-2-2表参照)。

(3)再刑事処分

7-3-2-4図は,第1刑事処分別に2回目以降の刑事処分(再刑事処分)の状況を見たものである。再刑事処分を受けた者の比率は,第1刑事処分が,罰金であった者では34.7%,保護観察の付されない執行猶予(以下「単純執行猶予」という。)であった者では38.9%,保護観察付執行猶予であった者では55.0%であり,社会内において改善更生を図る機会が与えられた者でも,再び刑事処分を受けている者が少なからずいることが分かる。再刑事処分により実刑となった者の比率を見ると,第1刑事処分が保護観察付執行猶予であった者で52.5%,単純執行猶予であった者で30.5%であるのに比し,罰金であった者では12.0%であり,第1刑事処分で実刑とならなかった者のうち,罰金の者において,その後,実刑までには至らずに推移した者の比率が高い。


7-3-2-4図 再刑事処分の状況(第1刑事処分別)
7-3-2-4図 再刑事処分の状況(第1刑事処分別)

なお,再刑事処分を受けた93人について,その罪名を見ると,罪名に同一のものがない者が45人(48.4%)である一方,同一の罪名を含む者は48人で,そのうち窃盗を繰り返していた者が29人(31.2%)であった。