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令和元年版 犯罪白書 第7編/第1章/第2節/4
4 処遇の充実

平成当初,成人矯正処遇の基本となる法律は明治41年制定にかかる監獄法であり,行刑運営の改善は通達や訓令に基づき行われていたが,平成12年に既決の収容率が100%を超えるなどし,更には14年から15年にかけて名古屋刑務所の刑務官による一連の受刑者死傷事案が明らかになるなど,刑務所の運営が困難に直面するとともに国民の信頼が大きく揺らぐこととなった。法務省では,再発防止策の検討・策定を行うとともに,15年4月から,法務大臣が委嘱した有識者から成る行刑改革会議を開催し,同年12月,同会議から,「行刑改革会議提言~国民に理解され,支えられる刑務所へ~」を受けた。同提言は,受刑者の人間性を尊重し,真の改善更生と社会復帰を図る,刑務官の過重な負担を軽減する,国民に開かれた行刑を実現する,という三つの観点から,監獄法の全面改正を含む行刑運営全般の見直しや改善を求めるものであり,これを受け,17年5月,刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律が成立し,18年5月に施行された。さらに,同年6月の同法改正により,同法の題名が刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に改められ,19年6月に施行された。これら一連の法整備によって,被収容者等の権利義務関係や職員の権限等が明確化されるとともに,受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることが受刑者処遇の基本理念とされ,処遇の個別化の原則が採用されるとともに,受刑者処遇の中核として,作業,改善指導及び教科指導から成る矯正処遇という新しい概念が導入され,特別改善指導として各種プログラムが実施されるなどするようになった(第1編第2章第3節1項及び第3編第1章第4節1項(1)参照)。

また,少年矯正は,昭和23年制定にかかる少年院法に基づき行われてきたが,平成21年4月に広島少年院における不適正処遇事案が発覚するなどし,「少年矯正を考える有識者会議」における検討の結果を経て,26年6月,新たな少年院法及び少年鑑別所法が成立,いずれも27年6月に施行され,新たな少年院法は少年の特性に応じた処遇と再犯防止対策・少年非行対策の推進,少年の人権尊重と適切な処遇の実施及び社会に開かれた施設運営の推進を目的としており,少年鑑別所法では専門的知識・技術に基づいた鑑別の実施や在所者の健全育成に配慮した観護処遇の実施,地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助の実施等が明文化された(第1編第2章第3節2項第3編第2章第3節1項及び同章第4節1項参照)。

更生保護においても,平成当初は昭和24年制定にかかる犯罪者予防更生法と29年制定にかかる執行猶予者保護観察法を基本法として運用が行われていたが,平成16年11月及び17年2月,性犯罪前科を有する者による女児誘拐殺人事件及び仮釈放中の者による重大再犯事件が発生し,同年5月には,保護観察付執行猶予者による女性監禁事件が発生したことから,更生保護制度の実効性,特に再犯防止機能の現状に対し国民の厳しい目が向けられた。そのため,法務省は,同年7月,法務大臣の下に「更生保護のあり方を考える有識者会議」を設置した。18年3月には,執行猶予者保護観察法の一部を改正する法律が成立し,保護観察付執行猶予者に対する保護観察の強化が図られ,さらに,前記有識者会議が法務大臣に提出した「更生保護制度改革の提言-安全・安心の国づくり,地域づくりを目指して-」に基づき,19年6月,犯罪者予防更生法と執行猶予者保護観察法を整理・統合して一本化した更生保護法が成立した。同法では,更生保護の目的として再犯防止が明記されるとともに,遵守事項が整理・充実化されるなど保護観察の充実強化が図られた。また,犯罪被害者等が関与する制度の導入,生活環境の調整の充実,保護観察官と保護司の役割に関する規定の整備等が行われた(第1編第2章第4節1項及び第3編第1章第5節1項コラム9参照)。