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令和元年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/1

第4節 少年院
1 概説

少年院は,主として,家庭裁判所が少年院送致の決定をした少年を収容し,矯正教育,社会復帰支援等を行う施設である。少年院における処遇は,従来,昭和23年7月に制定された少年院法(昭和23年法律第169号。以下この節において「旧少年院法」という。)に基づいて行われてきたが,平成26年6月に新たな少年院法(平成26年法律第58号)が制定され,27年6月に施行された(第1編第2章第3節2項参照)。同法制定のきっかけの一つとなったのが,21年4月に発覚した広島少年院における不適正処遇事案であり,この事案を受けて設置された「少年矯正を考える有識者会議」において,少年院及び少年鑑別所の適正な運営の在り方等について検討が行われた結果,22年12月に法務大臣に提出された「少年矯正を考える有識者会議提言」の中で,旧少年院法の速やかな全面改正が提言された。加えて,24年7月の「再犯防止に向けた総合対策」,25年12月の「「世界一安全な日本」創造戦略」等も踏まえ,再犯・再非行防止対策を推進するためにも,少年院及び少年鑑別所の機能を十分に発揮できるような法的基盤の整備を図ることとされ,新たな少年院法及び少年鑑別所法の制定に至った(再犯防止対策については,第5編第1章参照)。

それまで,少年の健全な育成を期すという少年矯正の理念等を背景として展開されてきた少年院における実務については,法律上の規定が十分に整備されておらず,その多くが下位法令や通達に基づいて運用されていたが,新たな少年院法においては,必要な事項全般にわたって明文規定が置かれるとともに,新しい制度等も整備され,少年院における処遇の充実・発展に大きく寄与するものとなった。具体的には,旧少年院法下で行われていた実務を踏まえつつも,<1>再非行防止に向けた取組の充実を図るため,矯正教育の基本制度,社会復帰支援等が法定化されたほか,<2>適切な処遇を実施するため,在院者の権利義務関係や職員の権限の明確化,法務大臣に対する救済の申出等の不服申立制度の規定の整備等がなされ,加えて,<3>各少年院に外部の委員による少年院視察委員会が設置されるなど,社会に開かれた施設運営が図られることとなった。

なお,少年院は,平成元年12月末現在,全国に54庁が設置されていたが,31年4月1日現在では,51庁(分院6庁を含む。)となっている(さらに,令和元年5月末日現在,施設の廃止により49庁(分院6庁を含む。)となった。)。