厚生労働省元局長無罪事件等の一連の事態を受け,平成22年10月,法務大臣の下に「検察の在り方検討会議」が設けられ,同年12月には,最高検察庁が同事件の検証結果を公表した。23年3月,同会議の提言が取りまとめられ,その中で,同様の事態を二度と引き起こさないようにするためには現在の刑事司法制度が抱える問題点に正面から取り組む必要があるとの認識から,取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し,新たな刑事司法制度を構築するための検討を行う必要があるとされた。これを受け,同年5月,法務大臣から法制審議会に対し,時代に即した新たな刑事司法制度を構築するための法整備の在り方についての諮問が発せられ,同審議会の下に設置された部会における検討等を経て,26年9月,同審議会の答申がなされた。これを踏まえ,28年5月,刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立した。
同法は,刑事手続における証拠の収集方法の適正化・多様化及び公判審理の充実化を図るため,取調べの録音・録画制度の導入,証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度並びに刑事免責制度の導入,通信傍受の合理化・効率化,裁量保釈の判断に当たっての考慮事情の明確化,弁護人による援助の充実化,証拠開示制度の拡充,犯罪被害者等及び証人を保護するための措置の導入,証拠隠滅等の罪等の法定刑の引上げ等,自白事件の簡易迅速な処理のための措置の導入を内容としている(第1編第2章第1節1項(13)及び第3編第1章第2節4項コラム5参照)。