少年・若年者にとって,就労の確保や継続は,生活の基盤を固めることにつながるだけでなく,職場の人間関係や仕事を通じて社会性を身に付けるためにも重要であり,再非行や再犯を抑止する要因となる。
少年院再入院者の半数以上,若年入所受刑者の6割以上は,犯行時に無職であり(7-2-3-7図),また,保護観察処分少年・少年院仮退院者のうち保護処分取消しで終了した者の比率や,若年保護観察付執行猶予者・仮釈放者のうち執行猶予や仮釈放の取消しで終了した者の比率は,無職であった者の方が,有職又は学生・生徒であった者に比べて顕著に高い(7-2-4-5図)。特別調査においても,本件少年院出院後の保護観察終了時に有職及び学生・生徒等であった者に比べ,無職であった者では,その後刑事処分に至った者の比率が顕著に高く,その半数近くに上る(7-3-3-1-7図)。意識調査においては,就学・就労の挫折や中断を非行や犯罪の原因と認識する者の比率が,特に若年犯罪者においてかなり高かった(7-4-3-2表,7-4-3-8図)。
若年者の失業率が他の年齢層よりも高い中で(7-1-6図),中学新卒者の就職率は近年悪化しており,就労先の確保や安定的就労生活の維持が困難な状況が認められる(7-1-4図,7-1-5図)。非行少年や若年犯罪者には,中学校や高校時代に学校生活からドロップアウトしている者も多く,特別調査の対象者でも,中学卒業と高校中退を合わせると8割程度に及ぶなど(7-3-1-3図<4>),学歴や就労資格・技能等の面で,社会復帰後に安定した就労先を確保するのは容易でないことがうかがわれる。その一方で,非行少年や若年犯罪者の意識調査を見ると,正業を確保し自立を果たしたいという意欲を有する者や,そのために資格や技能を取得したいという健全な考えを有する者が多数に及んでいる(7-4-2-7図)。可塑性が大きく,意欲も高いこの時期に,高等学校卒業程度認定試験や雇用情勢に見合った資格取得に取り組ませるなど,少年院等における教科教育,職業補導の充実強化や,刑務所出所者等総合的就労支援対策(本編第5章1項参照)を通じて,保護観察終了時には安定的な就労先が確保・維持できている状態にすることが,彼らの再犯を防ぎ,その立ち直りを促進する上で有効な対策であるといえる。また,若年保護観察付執行猶予者においては,他の保護観察対象者と比べて保護観察終了時の無職者比率が比較的高いことから,これらの者に対する就労支援をより強化する必要がある。
他方,特別調査の対象者において,本件少年院出院後の最初の刑事処分に係る犯行時に無職であった者のうち,出院後一度は就職したことのある者が74.7%おり,仕事を辞めた理由として,人間関係の不和や給料・待遇への不満等が多く(7-3-3-3-3図),意識調査においても,非行少年や若年犯罪者の中には,安易な就労観を持つ者や,職場の対人関係を煩わしいものと感じている者が比較的多かった(7-4-2-7図)。社会的な自立の過程にあって就労の安定性を欠く非行少年や若年犯罪者に対しては,就労先の確保だけでなく,その後も就労を継続させていくことが重要であり,職業技能の向上や雇用先の確保等の支援とともに,就労の基盤となる健全な職業観を養うための教育や対人関係能力・忍耐力等の社会的能力の育成を図る指導を強化し,併せて就労継続に向けたフォローアップのための働き掛け等を充実化していくことが望まれる。