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第2節 非行少年・若年犯罪者の処遇の充実に向けた考察
1 規範意識のかん養・更生意欲の喚起と本人の資質の改善に向けた処遇の必要性

再非行や再犯を防止する上で,自らが犯した犯罪と真摯に向き合わせ,被害者等の痛みを理解させるとともに,社会のルールを守るという規範意識をかん養し,社会の一員としての自覚や責任感を持たせることや,困難を克服し立ち直ろうとする努力を認め,更生意欲を喚起しつつ生活の建て直しを図らせていくことは,少年・若年者の処遇の重要な課題である。

少年院出院者の特別調査では,少年院の処遇において規律違反を繰り返す者(7-3-3-1-4図)や,仮退院後の処遇において再非行等により保護処分取消しとなった者(7-3-3-1-10図)等,規範意識や更生意欲に問題があると思われる者では,その後,実刑等の刑事処分に付される者の比率が高かった。また,若年犯罪者等に対する意識調査では,少年及び処分歴が1回の者において処分の受け止め方が処分後の更生の態度に影響しており,若年犯罪者のうち,少年時の保護観察や,成人後の罰金及び執行猶予等の処分を受けた者の中に,当該処分を軽いと考え,その後の更生の態度に問題がある者が多く見られた(7-4-3-6図)。さらに,若年者のうち保護観察付執行猶予者については,再処分率が比較的高かった(7-2-5-7表)。

こうした者を再犯防止や改善更生に導くためには,処分決定時や処遇の導入時において,対象者に処分の重さや意義を十分理解させ,感銘力を一層強化する働き掛けが求められると同時に,保護観察制度を効果的に活用して,更生への意欲を維持させる必要がある。

他方,非行少年・若年犯罪者には,基本的生活習慣が未確立な者や生活態度に問題を有する者が多く,不健全・不安定な生活を送る中で,不良交友,不就労(無為徒食),薬物使用等の問題を発生・拡大させる者が多い。処遇においては,勤勉な生活態度,健全な金銭感覚,将来に向けた堅実な生活設計等,社会人として自立した生活を過ごすための基本を身に付けさせ,円滑な社会生活の基礎となる対人関係スキルを向上させるため,SST(生活技能訓練)等を活用した社会適応力を高める指導を一層重点的に行うことや,保護司等の更生保護関係者や民間団体等による継続的な指導・相談の体制を強化することが必要である。