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令和元年版 犯罪白書 第3編/第1章/第3節/3

3 第一審
(1)終局裁判

3-1-3-2表は,平成元年・15年・30年の通常第一審における終局処理人員を裁判内容別に見るとともに,30年については,これを更に罪名別に見たものである。総数及び有期懲役・禁錮については,15年が最も多く,元年,30年の順に続くが,無罪については,元年,30年,15年の順,罰金等については,30年,15年,元年の順となっている。

3-1-3-2表 通常第一審における終局処理人員(罪名別,裁判内容別)
3-1-3-2表 通常第一審における終局処理人員(罪名別,裁判内容別)
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平成30年について,罪名別に総数を見ると,地方裁判所では窃盗が1万619人(21.8%)と最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反8,217人(16.8%),道交違反6,330人(13.0%),自動車運転死傷処罰法違反5,130人(10.5%)の順であった。簡易裁判所では窃盗が4,113人(84.3%)と最も多い。有期の懲役刑又は禁錮刑を言い渡された総数における全部執行猶予率は62.5%であった。30年に一部執行猶予付判決の言渡しを受けた人員は1,597人であり,罪名別では,覚せい剤取締法違反が1,456人(91.2%)と最も多く,次いで,大麻取締法違反38人(2.4%),窃盗36人(2.3%)の順であった。

なお,通常第一審における少年に対する科刑状況(罪名別,裁判内容別)については,3-2-6-2表参照。

(2)科刑状況
ア 死刑・無期懲役

通常第一審における死刑及び無期懲役の言渡人員について,平成元年以降の推移を罪名別に見ると,3-1-3-3表のとおりである。死刑の言渡しは,12年から19年までの間は10人以上となったが,その前後はおおむね10人以下で推移している。平成期において通常第一審で死刑の言渡しを受けた人員(211人)の罪名は,殺人(自殺関与・同意殺人・予備を含まない。)及び強盗致死(強盗殺人を含む。以下同じ。)がそれぞれ約半数を占めている。無期懲役の言渡しを受けた人員は,10年から増加傾向を示し,16年には125人に達したが,17年以降は減少傾向を示し,近年は20人前後で推移している。平成期において通常第一審で無期懲役の言渡しを受けた人員(1,568人)の罪名は,約3分の2が強盗致死傷及び強盗・強制性交等,約4分の1が殺人(自殺関与・同意殺人・予備を含まない。)であった。

3-1-3-3表 通常第一審における死刑・無期懲役言渡人員の推移(罪名別)
3-1-3-3表 通常第一審における死刑・無期懲役言渡人員の推移(罪名別)
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イ 有期懲役・禁錮

3-1-3-4図は,平成元年・15年・30年における有期の懲役・禁錮の科刑状況別構成比を地方裁判所・簡易裁判所別に見たものである(なお,平成16年法律第156号による刑法の改正(17年1月施行。第1編第1章第1節6項参照)により,有期刑の上限が15年から20年に,死刑や無期刑を減軽して有期刑とする場合の長期の上限が15年から30年に,有期刑を加重する場合の長期の上限が20年から30年にそれぞれ引き上げられた。)。地方裁判所では,元年には,1年未満の刑の者が占める割合が33.4%,2年未満の刑の者が占める割合が80.1%であったが,15年には,前者が19.3%,後者が62.1%,30年には,前者が22.7%,後者が65.2%となっている。簡易裁判所では,元年には,1年未満の刑の者が占める割合が31.3%,2年未満の刑の者が占める割合が95.3%であったが,15年には,前者が20.7%,後者が91.2%,30年には,前者が21.0%,後者が90.5%となっている。

3-1-3-4図 地方裁判所・簡易裁判所における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況別構成比
3-1-3-4図 地方裁判所・簡易裁判所における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況別構成比
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平成30年における通常第一審での有期の懲役・禁錮の科刑状況は,3-1-3-5表のとおりである(地方裁判所における罪名別の科刑状況については,CD-ROM資料3-4参照)。

なお,通常第一審における科刑状況に関し,危険運転致死傷,過失運転致死傷等及び道交違反については4-1-2-4表,覚せい剤取締法違反についてはCD-ROM資料4-3,財政経済犯罪についてはCD-ROM資料4-5,外国人である被告人に通訳・翻訳人の付いた事件についてはCD-ROM資料4-9をそれぞれ参照。

3-1-3-5表 通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況
3-1-3-5表 通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況
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ウ 罰金・科料

3-1-3-6図は,平成元年・15年・30年における第一審における罰金・科料の科刑状況別構成比を通常第一審・略式手続の別に見たものである(平成3年法律第31号による刑法の改正(3年5月施行。第1編第1章第1節1項参照)により,刑法に定める罰金の多額等が引き上げられ,平成3年法律第31号(同月施行。同編第2章第1節1項(1)参照)及び平成18年法律第36号(18年5月施行。同項(8)参照)による刑事訴訟法の各改正により略式命令の上限額が引き上げられたことなどに留意する必要がある。)。通常第一審では,元年には,10万円未満の罰金の者が占める割合が61.7%,30万円未満の罰金の者が占める割合が82.4%であったが,15年には,前者は21.1%,後者は61.3%となり,30年には,前者は4.5%,後者は51.6%となった。略式手続(罰金の上限額は,元年は20万円,15年は50万円,30年は100万円である。)では,元年は,5万円未満の罰金の者が過半数を占めていたが,15年には15.7%,30年には11.6%となった。15年には20万円以上30万円未満の罰金の者が23.0%いたが,30年には9.7%となり,これに代わり,30万円以上50万円未満の罰金の者が15年には7.4%だったのが,30年には23.8%となった。

3-1-3-6図 第一審における罰金・科料科刑状況別構成比
3-1-3-6図 第一審における罰金・科料科刑状況別構成比
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平成30年の第一審における罰金・科料の科刑状況は,3-1-3-7表のとおりである。

3-1-3-7表 第一審における罰金・科料科刑状況(罪名別)
3-1-3-7表 第一審における罰金・科料科刑状況(罪名別)
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(3)裁判員制度
ア 裁判員制度の概要

裁判員制度は,広く国民が刑事裁判の過程に参加し,裁判の内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになることによって,司法に対する国民の理解と支持が深まり,長期的に見て,司法がより強固な国民的基盤を得ることを目指し,裁判員法(第1編第2章第1節2項(2)参照)により創設され,平成21年5月21日から実施された制度である。

裁判員裁判(裁判員の参加する刑事裁判)の対象事件は,死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件及び法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を除く。))であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である。ただし,被告人の言動等により,裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあって,そのために裁判員等が畏怖し裁判員の職務の遂行ができないなどと認められる場合には,裁判所の決定によって対象事件から除外される。裁判員制度開始から平成30年までの終局処理人員において,同決定がなされた者は26人(30年は6人)であった。また,平成27年法律第37号による裁判員法の改正により(27年12月施行),審判に著しい長期間を要する事件等を対象事件から除外することが可能となったが,前記改正法施行後30年までの終局処理人員には,そのような決定がなされた者はいなかった(最高裁判所事務総局の資料による。)。なお,対象事件に該当しない事件であっても,対象事件と併合された事件は,裁判員裁判により審理される。

裁判員裁判の対象事件は,公判前整理手続に付さなければならず,裁判所は,争点を整理した上,証拠の採否や取調べ順序を決定し,具体的な審理計画を立て,これにより集中的・計画的な審理を行う(本項(5)参照)。

裁判員の選任手続は,以下のとおりである。まず,地方裁判所ごとに,毎年,選挙人名簿に登録された者の中から,くじで選任された裁判員候補者の名簿が作成される。そして,事件ごとに,裁判員候補者名簿に登載された者の中から,くじで裁判員候補者を選定し,選任手続のために裁判所に呼び出す。裁判所は,非公開の手続で,一定の欠格事由等に該当する者,一定の辞退事由(70歳以上であること,学生又は生徒であることなど)に該当して辞退を認められた者及び検察官又は被告人等から理由を示さない不選任請求をされた者等を除外した後,裁判員6人(例外的な場合は4人)をくじ等で選任する。審理の期間その他の事情を考慮して,必要な場合には,裁判員の員数に不足が生じることに備えて,補充裁判員が選任される。裁判員及び補充裁判員(以下この項において「裁判員等」という。)のほか,裁判員候補者として裁判所に出頭した者にも,一定の日当や交通費等が支払われる。

裁判員裁判の審理は,連日的な開廷により行われる。検察官,弁護人等は,裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう,分かりやすい審理の実現に努めなければならない。裁判長は,評議において,必要な法令に関する説明を丁寧に行い,評議を整理し,裁判員が発言する機会を十分に設けるように努めなければならない。裁判員裁判では,有罪・無罪等の判決等に係る事実の認定,法令の適用及び刑の量定について,裁判官3人及び裁判員6人の合議体(例外的に,公訴事実に争いがなく,事件の内容等に照らして適当であり,当事者にも異議がない事件については,裁判官1人及び裁判員4人の合議体を構成することができるが,裁判員制度開始から平成30年までの終局処理人員については,全ての事件で裁判官3人及び裁判員6人の合議体が構成された(最高裁判所事務総局の資料による。)。)で評議を行い,裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見により評決する。裁判員は,自ら関与する判断に必要な事項については,裁判長に告げて,被告人や証人等に対して質問をすることができる。他方,法令の解釈,訴訟手続に関する判断等については,裁判官のみによる評議により判断し,裁判員はそれに従うことになるが,裁判員の意見を聴くことが有用な場合もあり,裁判官は,裁判員にその評議の傍聴を許し,意見を聴くことができる。

同一の被告人に対する複数の事件が併合審理される場合には,裁判員の負担を軽減するため,併合事件の一部を区分し,区分した事件ごとに,併合事件全体を担当する裁判員とは別に裁判員を選任して審理を行い,各事件の有罪・無罪のみを判断する部分判決をし,この部分判決を踏まえ,併合事件全体について,これを担当する裁判員が,裁判官と共に,刑の量定の評決を行うなどして,終局の判決を言い渡すことができる。

裁判員等には,評議の経過,裁判官・裁判員の意見等,その他職務上知り得た秘密を漏らしてはならない義務があり,秘密を漏らした場合は,処罰の対象となる。裁判員等としての職務終了後も,同様である。裁判員等の保護のための措置として,職場での不利益な取扱いの禁止,裁判員等を特定するに足りる情報の非公開,裁判員等に対する接触の規制等が定められている。

イ 裁判員制度の実施状況

裁判員裁判対象事件の第一審における新規受理・終局処理(移送等を含む。以下この項において同じ。)人員について,制度が開始された平成21年以降の推移を罪名別に見ると,3-1-3-8表のとおりである。21年の終局処理人員を除き,毎年おおむね1,000人台で推移しているが,30年の新規受理人員(1,090人)は,最も多かった22年(1,797人)の約6割の水準である。制度開始から30年までの新規受理人員総数(1万3,715人)の罪名別では,強盗致傷の3,214人(23.4%)が最も多く,次いで,殺人(自殺関与及び同意殺人を除く。)の2,995人(21.8%),現住建造物等放火の1,355人(9.9%),傷害致死の1,181人(8.6%),覚せい剤取締法違反の1,078人(7.9%)の順であった。

裁判員制度開始から平成30年までの間,約6万6,000人の裁判員及び約2万3,000人の補充裁判員が選任され,裁判員裁判の審理等に関与した(最高裁判所事務総局の資料による。)。

3-1-3-8表 裁判員裁判対象事件 第一審における新規受理・終局処理人員の推移(罪名別)
3-1-3-8表 裁判員裁判対象事件 第一審における新規受理・終局処理人員の推移(罪名別)
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平成30年に第一審で判決を受けた裁判員裁判対象事件(裁判員裁判の対象事件及びこれと併合され,裁判員裁判により審理された事件。少年法55条による家裁移送決定があったものを含み,裁判員が参加する合議体で審理が行われずに公訴棄却判決があったもの及び裁判員法3条1項の除外決定があったものは含まない。以下この項において同じ。)における審理期間(新規受理から終局処理までの期間をいう。以下この項において同じ。)の平均は10.1月(22年は8.3月,26年は8.7月)であり,6月以内のものが26.0%(22年は34.0%,26年は37.7%)を占めた。また,開廷回数の平均は4.8回(22年は3.8回,26年は4.5回)であり,3回以下が24.9%(22年は49.2%,26年は35.9%),5回以下が77.2%(22年は92.8%,26年は82.9%)を占めた(過去の数値については,裁判員制度開始翌年であり通年実施された最初の年である22年,同年と30年の中間である26年の数値を見たものである。最高裁判所事務総局の資料による。)。

3-1-3-9表は,平成21年から30年までに第一審の判決(少年法55条による家裁移送決定を含む。)に至った裁判員裁判対象事件について,無罪の人員及び有罪人員の科刑状況等を見るとともに,30年については,これを更に罪名別に見たものである。

3-1-3-9表 裁判員裁判対象事件 第一審における判決人員(罪名別,裁判内容別)
3-1-3-9表 裁判員裁判対象事件 第一審における判決人員(罪名別,裁判内容別)
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3-1-3-10図は,裁判員裁判の対象となる主な罪名について,第一審における有罪人員の科刑状況を,裁判員裁判による審理の有無(裁判員裁判・裁判官裁判)別に見たものである(平成29年法律第72号による刑法改正(平成29年7月施行。第1編第1章第1節16項参照)により強姦致死傷が強制性交等致死傷に改められ,法定刑の下限が引き上げられるなどしたことを考慮し,裁判員裁判については,同改正後の事件が含まれ得ない28年までの累計とした。)。裁判官裁判は,裁判員裁判により審理されていない事件であり,裁判員法施行前に起訴され,同法施行後であったとすれば裁判員裁判の対象事件となったと想定される事件のうち,裁判員制度が開始された21年から26年(27年以降の終局人員はいない。)までに終局したものである。裁判官裁判と裁判員裁判とでは,比較する事件数に違いがあるほか,裁判時期も異なるため,科刑状況を厳密に比較できない点に留意する必要がある。殺人の裁判員裁判を見ると,3年以下の刑期の構成比が裁判官裁判よりも8.6pt高く,特に,保護観察付全部執行猶予の構成比が4.4pt高い。強盗致傷の裁判員裁判を見ると,3年以下の刑期の構成比のうち,単純執行猶予(保護観察の付かない全部執行猶予)と実刑の構成比については,裁判官裁判よりも低いが,保護観察付全部執行猶予の構成比については裁判官裁判よりも5.5pt高い。また,3年以下の刑期の構成比は,裁判官裁判よりも1.8pt高いが,5年以下の刑期の構成比は,裁判官裁判より5.6pt低い。傷害致死の裁判員裁判については,3年以下の刑期の構成比は,裁判官裁判よりも2.8pt高いが,5年以下の刑期の構成比では10.2pt,7年以下の刑期の構成比では11.6ptずつ裁判官裁判より低い。強姦致死傷の裁判員裁判については,裁判官裁判と比較して,5年以下の刑期の構成比では10.4pt,7年以下の刑期の構成比では13.7ptずつ低い。

3-1-3-10図 裁判員裁判・裁判官裁判別の科刑状況別構成比(罪名別)
3-1-3-10図 裁判員裁判・裁判官裁判別の科刑状況別構成比(罪名別)
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(4)即決裁判手続

平成16年法律第62号による刑事訴訟法改正(第1編第2章第1節1項(5)参照)により,平成18年10月から,死刑,無期懲役・禁錮又は短期1年以上の懲役・禁錮に当たる事件を除き,明白軽微な事件については,即決裁判手続によることができ,この手続では,懲役又は禁錮の言渡しをする場合は,刑の全部の執行猶予の言渡しをしなければならない。3-1-3-11図は,即決裁判手続に付された事件の人員について,地方裁判所・簡易裁判所の別に,制度が開始された18年以降の推移を見たものである。19年から21年までの間は,地方裁判所では20年(4,807人)を最多に4,000人台,簡易裁判所では19年(494人)を最多に400人台でそれぞれ推移したが,22年以降は減少し続け,29年に一旦増加したものの,30年には再び減少し,地方裁判所では315人(前年比51.8%減),簡易裁判所では32人(同53.6%減)であった。

3-1-3-11図 即決裁判手続に付された事件の人員の推移(裁判所別)
3-1-3-11図 即決裁判手続に付された事件の人員の推移(裁判所別)
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平成30年に即決裁判手続に付された事件の人員を罪名別に見ると,3-1-3-12表のとおりである。

3-1-3-12表 即決裁判手続に付された事件の人員(罪名別)
3-1-3-12表 即決裁判手続に付された事件の人員(罪名別)
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(5)公判前整理手続

平成16年法律第62号による刑事訴訟法改正(第1編第2章第1節1項(5)参照)により,平成17年11月から,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うため必要があるときは,第一回公判期日前に,事件の争点及び証拠を整理する公判前整理手続が行われることがある。裁判員法により,裁判員裁判の対象事件については,必ず公判前整理手続に付さなければならない。また,裁判所において,審理状況等を考慮して必要と認めるときは,第一回公判期日後に,公判前整理手続と同様の手続により事件の争点及び証拠を整理する期日間整理手続が行われることがある。

3-1-3-13図は,地方裁判所で終局処理がされた通常第一審事件のうち,公判前整理手続及び期日間整理手続に付された事件の人員について,制度が開始された平成17年以降の推移を見たものである。公判前整理手続に付された事件の人員は,21年(2,225人)をピークに減少し続けていたが,30年は1,255人と,前年より7.0%増加した。期日間整理手続に付された事件の人員は,21年(393人)をピークに減少傾向を示したが,28年以降は200人前後で推移しており,30年は209人(前年比15.5%増)であった。

平成30年に公判前整理手続に付された事件の地方裁判所における審理期間の平均は11.0月(20年は7.3月,25年は9.9月)であり,平均開廷回数は5.3回(20年は3.8回,25年は5.0回)であった(過去の数値については,30年から5年ごとに遡って数値を見たものである。司法統計年報による。)。

3-1-3-13図 公判前整理手続・期日間整理手続に付された事件の人員の推移(地方裁判所)
3-1-3-13図 公判前整理手続・期日間整理手続に付された事件の人員の推移(地方裁判所)
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公判前整理手続に付されずに公判を開いた後,罰条の変更等により裁判員裁判対象事件となったものを除き,平成30年に第一審で判決を受けた裁判員裁判対象事件における公判前整理手続の期間(公判前整理手続に付された日から同手続終了日まで)の平均は8.2月(22年は5.5月,26年は6.8月)であり,公判前整理手続期日の回数については,平均は5.3回(22年は4.4回,26年は5.3回)で,6回以上の割合は34.2%(22年は25.6%,26年は34.7%)であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。

(6)勾留と保釈

3-1-3-14図は,通常第一審における被告人の勾留率(移送等を含む終局処理人員に占める勾留総人員の比率)・保釈率(勾留総人員に占める保釈人員の比率)について,地方裁判所・簡易裁判所の別に,平成元年以降の推移を見たものである。勾留率については,地方裁判所では,2年に平成期で最も低い70.9%を記録した後,緩やかに上昇傾向を示し,13年から26年までは,17年(82.3%)をピークに80%前後で推移していたが,26年以降低下し続け,30年は74.2%(前年比1.0pt低下)であった。簡易裁判所では,元年から16年までの間は,10年(91.9%)をピークに85%以上の水準を維持して推移し,その後,21年までは85%前後で推移していたが,同年以降は低下傾向を示し,24年以降は地方裁判所の勾留率を毎年下回っている(30年は71.8%(同0.3pt上昇))。

保釈率については,平成期を通じ,地方裁判所の方が簡易裁判所よりも7~15pt高い水準で推移している。地方裁判所では,平成2年に27.2%を記録した後,3年から毎年低下し続けたが,15年(12.7%)を境に16年から毎年上昇し続けている。特に,26年から29年までは,平均して前年比2.3ptずつ上昇したが,30年は30.8%(前年比0.3pt上昇)であった。簡易裁判所では,4年まで13%以上を維持して推移し,5年からの低下傾向を経て,11年から21年までは5~6%台で推移し,22年に7%を超えた後も毎年上昇し続け,29年には平成期で最も高い15.9%を記録したが,30年は15.8%(同0.1pt低下)であった。

3-1-3-14図 通常第一審における被告人の勾留率・保釈率の推移(裁判所別)
3-1-3-14図 通常第一審における被告人の勾留率・保釈率の推移(裁判所別)
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平成30年の通常第一審における被告人の勾留状況を終局処理人員で見ると,3-1-3-15表のとおりである。

3-1-3-15表 通常第一審における被告人の勾留状況
3-1-3-15表 通常第一審における被告人の勾留状況
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