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令和7年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/3/コラム1

コラム1 刑法犯以外も含めた犯罪の全体像を捉えるための試み

犯罪白書では、我が国の犯罪情勢につき、刑法犯、特別法犯、危険運転致死傷・過失運転致死傷等といった分類に従い、その分類ごとに動向を概観・分析しているところ、令和4年版からは、我が国における刑法犯以外も含めた犯罪の全体像を捉えるための試みを続けている。

図1は、法務総合研究所が資料を入手し得た数値に基づき、令和6年の司法警察職員(警察以外も含む。)による(ア)刑法犯、(イ)危険運転致死傷・過失運転致死傷等、(ウ)特別法犯(交通法令違反を除く。以下このコラムにおいて「特別法犯」という。)及び(エ)交通法令違反(道交違反(反則事件)を除く。以下このコラムにおいて「交通法令違反」という。)の検挙件数(一部については送致件数を検挙件数として計上している。)を横並びにし、その件数及び構成比を見ることで、我が国の検挙の状況を捉えようとするものである。6年の検挙件数の総数は、前年から約4,000件減少しており、各構成比を前年と比較すると、刑法犯の構成比が上昇している(CD-ROM参照)。

次に、図2は、我が国における犯罪の全体像をできる限り把握するため、検挙には至らなかった犯罪についても考慮すべく、(ア)刑法犯については警察による認知件数を、(イ)危険運転致死傷・過失運転致死傷等については人身事故件数を、(ウ)特別法犯及び(エ)交通法令違反については図1の検挙件数を、それぞれ用いて合算したものである。

図1
図1
図2
図2

図2は、厳密には概念が一致しない数値を合算した図であるから、飽くまで検挙に至らなかった犯罪の存在をイメージするものであることに留意しつつ、これを見ると、総数は、令和4年から3年連続増加し、6年は、前年から約9,500件増加しており、我が国における犯罪を全体的に捉えると、その脅威が増大しつつあることがうかがえる(CD-ROM参照)。その内訳を見ると、警察による刑法犯の認知件数は、前年よりも約3万4,000件増加しているのに対し、人身事故件数、特別法犯(交通法令違反を除く。)の検挙件数及び交通法令違反(道交違反(反則事件)を除く。)の検挙件数は、いずれも前年と比べて減少しており、警察による刑法犯の認知件数の増加が、図2における総数を押し上げている。もっとも、6年の警察による刑法犯の認知件数は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前である元年の約74万9,000件を超えるには至っていないことから(CD-ROM参照)、今後、このまま増加が続いて同件数を超えるのか否か、その動向には注視が必要である。

警察等の司法警察職員が把握した犯罪のほか、被害者が犯罪被害に遭いながらも警察等への届出等を行わなかった、いわゆる暗数の存在についても留意が必要であり、我が国における犯罪の脅威は、これらも総合して考える必要がある(法務総合研究所が実施した犯罪被害の実態(暗数)に関する特別調査については第7編第4章参照)。

さらに、個別の犯罪類型として、令和4年版犯罪白書以来、その動向に着目してきた児童虐待に係る事件、配偶者からの暴力事案等、サイバー犯罪、特殊詐欺、大麻取締法違反及び危険運転致死傷の検挙件数に加え、近年その動向が注目されている、ストーカー規制法違反、不同意性交等及び不同意わいせつの検挙件数についても見ることとする。

各犯罪類型の検挙件数について、その増加傾向等を捉えやすい平成23年以降の推移を見ると、図3のとおりである。

いずれの犯罪類型でも、検挙件数は増加傾向又は高止まりの状態が継続しているところ、とりわけ、<4>不同意性交等及び<5>不同意わいせつについては、いずれも刑法の一部を改正する法律(平成29年法律第72号)により対象が変更となった点及び刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和5年法律第66号)により構成要件が変更となった点に留意する必要があるものの、令和6年の検挙件数は前年と比べて急増しており、特に留意が必要である。

また、令和6年の各犯罪類型の件数を平成23年と比較すると、<1>児童虐待に係る事件は約6.3倍、<2>配偶者からの暴力事案等は約3.4倍、<3>ストーカー規制法違反は約6.5倍、<4>不同意性交等は約3.4倍、<5>不同意わいせつは約1.6倍、<6>サイバー犯罪は約2.3倍、<7>特殊詐欺は約2.6倍、<8>大麻取締法違反は約3.3倍、<9>危険運転致死傷は約2.5倍と、いずれも大幅に増加している(CD-ROM参照)。

このように、個別の犯罪類型に関する検挙件数の推移等から見ても、我が国の犯罪情勢については、引き続き予断を許さない状況にあると思われる。

図3
図3

注 図1(1)法務総合研究所が資料を入手し得た数値で作成した(詳細はCD-ROM参照)。(2)警察庁の統計、警察庁交通局の統計、厚生労働省医薬局の資料、厚生労働省労働基準局の資料、経済産業省商務情報政策局産業保安グループの資料、国土交通省海事局の資料、海上保安庁の資料及び水産庁資源管理部の資料による。(3)水産庁資源管理部の資料による検挙件数は、令和5年の数値である。(4)交通法令違反(道交違反(反則事件)を除く。)の検挙件数は、送致件数を計上している。(5)警察以外による検挙件数は、漁業監督官(吏員)によるものを除き、送致件数を計上している。

 図2(1)危険運転致死傷・過失運転致死傷等、特別法犯(交通法令違反を除く。)及び交通法令違反(道交違反(反則事件)を除く。)については、警察庁交通局の統計及び警察庁の統計に認知件数がないことから、刑法犯における警察による認知件数におおよそ匹敵すると考えられる人身事故件数及び検挙件数をそれぞれ参考として用いた。(2)「人身事故」は、道路交通法2条1項1号に規定する道路において、車両等及び列車の交通によって起こされた事故で、人の死亡又は負傷を伴うものをいう。(3)「刑法犯の認知件数」及び「人身事故件数」は、警察において把握したものに限る。(4)脚注図1(1)ないし(4)に同じ。

 図3(1)<1>ないし<3>は警察庁生活安全局の資料、<4>、<5>及び<9>は警察庁の統計、<6>は警察庁サイバー警察局の資料、<7>は警察庁刑事局の資料、<8>は厚生労働省医薬局の資料に、それぞれよる。(2)詳細については、<1>につき第4編第6章第1節、<2>につき同章第2節、<3>につき同章3節、<4>及び<5>につき第1編第1章第2節4項、<6>につき第4編第5章、<7>につき第1編第1章第2節3項、<8>につき第4編第2章第1節2項、<9>につき同編第1章第1節2項を、それぞれ参照。(3)<8>は、令和5年法律第84号による改正後の大麻草栽培規制法違反並びに大麻に係る麻薬取締法違反及び麻薬特例法違反の検挙件数を含む。