配偶者暴力防止法は、被害者からの申立てを受けて裁判所が加害者に対して発した、被害者の身辺へのつきまといをすることなどを禁止する保護命令に違反する行為(保護命令違反行為)等に対して罰則を設けている。令和5年法律第30号による改正では、保護命令制度が拡充されるとともに、保護命令違反行為に対する法定刑の引上げが行われた。具体的には、<1>接近禁止命令等の申立てをすることができる被害者として、配偶者からの身体に対する暴力や生命又は身体に対する加害の告知による脅迫を受けた者に加え、自由、名誉又は財産に対する加害の告知による脅迫を受けた者を追加するとともに、<2>接近禁止命令及び電話等禁止命令による対象行為の禁止期間を6か月間から1年間に伸長し、<3>電話等禁止命令の対象行為に、緊急時以外の連続した文書の送付・SNS等の送信、緊急時以外の深夜早朝のSNS等の送信、性的羞恥心を害する電磁的記録の送信、位置情報の無承諾取得等を追加し、<4>被害者と同居する未成年の子への電話等禁止命令を可能とするなど、所要の規定が整備された(一部を除き令和6年4月施行)。
なお、令和5年法律第66号による刑法の一部改正では、配偶者間において不同意性交等罪などが成立することが明確化された(令和5年7月施行。同改正の詳細については、第2編第1章1項(3)参照)。
配偶者からの暴力事案等の検挙件数の推移(平成22年以降)は、4-6-2-1図のとおりである。配偶者暴力防止法に係る保護命令違反の検挙件数は、27年以降減少傾向にあったが、令和6年は増加し、69件(前年比20件増)であった。その一方、刑法等の他法令による検挙件数の総数は、平成23年以降増加しており、近年は高止まりの状態にある。令和6年は8,421件(同215件減)であり、平成22年の約3.6倍であった。罪名別では、特に、暴行及び傷害の検挙件数が大きく増加している。また、令和6年における不同意性交等の検挙件数は、24件(同12件増)であった(警察庁生活安全局の資料による。)。
なお、令和6年における配偶者からの暴力事案等に関する相談等件数(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた被害者の相談等を受理した件数をいう。)は、9万4,937件(前年比7.1%増)と配偶者暴力防止法の施行後最多であり、被害者の性別の内訳を見ると、女性が6万6,723件(70.3%)、男性が2万8,214件(29.7%)であった。被害者と加害者の関係別に見ると、婚姻関係が6万9,496件(73.2%)と最も多く、次いで、婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいて、生活の本拠を共にする交際をする関係1万9,148件(20.2%)、内縁関係(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合をいう。)6,293件(6.6%)の順であった(いずれも、元々その関係にあったものを含む。警察庁生活安全局の資料による。)。配偶者からの暴力事案等に関する相談等件数の推移については、7-2-1-3図<1>、7-2-1-6図<1>及び7-2-1-9図<1>参照。