改正法により、少年院法が改正され、少年院の種類として新たに第5種を追加する(本章第1節1項参照)などの規定の整備が行われた(令和4年4月1日施行)ほか、同改正を踏まえて矯正教育に係る規程が見直され、第5種少年院における矯正教育課程や矯正教育の内容が新たに定められた(特定少年に係る少年院における処遇の詳細については、本項(1)及び(2)並びにコラム3をそれぞれ参照)。
少年院には、次の<1>から<5>までの種類があり、それぞれ、少年の年齢、犯罪的傾向の程度、心身の状況等に応じて、以下の者を収容している。なお、<5>は、前記少年院法の改正により、新たに設置された種類である。
<1> 第1種 保護処分の執行を受ける者(<5>の者を除く。<2>及び<3>において同じ。)であって、心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満のもの(<2>の者を除く。)
<2> 第2種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ、おおむね16歳以上23歳未満のもの
<3> 第3種 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のもの
<4> 第4種 少年院において刑の執行を受ける者
<5> 第5種 2年の保護観察に付されている特定少年であって、かつ、当該保護観察中に遵守すべき事項を遵守しなかったと認められる事由があり、その程度が重く、かつ、少年院において処遇を行わなければ本人の改善及び更生を図ることができないと認められ、少年院に収容する旨の決定を受けた者
少年院においては、在院者の特性に応じて体系的・組織的な矯正教育を実施するため、矯正教育課程が定められている。矯正教育課程は、在院者の年齢、心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度、在院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らして一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに、矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めたものである。
少年院の種類(第5種を除く。)ごとに指定された矯正教育課程は、3-2-4-9表のとおりであり、令和3年における少年院入院者の矯正教育課程別人員は、同表の人員欄のとおりである。なお、第5種少年院における矯正教育課程については、コラム3参照。
少年院における処遇の中核となるのは矯正教育であり、在院者には、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導及び特別活動指導の五つの分野にわたって指導が行われる。少年院の長は、個々の在院者の特性に応じて行うべき矯正教育の目標、内容、方法、期間等を定めた個人別矯正教育計画を作成し、矯正教育はこれに基づき実施される。
少年院における処遇の段階は、その者の改善更生の状況に応じた矯正教育その他の処遇を行うため、1級、2級及び3級に区分されており、在院者は、まず3級に編入され、その後、改善更生の状況等に応じて上位又は下位の段階に移行し、これに応じて、その在院者にふさわしい処遇が行われる。
前記の五つの分野における指導の主な内容は、以下のとおりである。
少年院においては、在院者に対し、善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる知識及び生活態度を習得させるために必要な生活指導を行う。生活指導は、<1>基本的生活訓練、<2>問題行動指導、<3>治療的指導、<4>被害者心情理解指導、<5>保護関係調整指導及び<6>進路指導について、全体講義、面接指導、作文指導、日記指導、グループワーク等の方法を用いて行われている。
また、在院者の抱える特定の事情の改善に資するために、令和3年度までは6種類の特定生活指導が実施されており、3年における各指導の受講終了人員は、<1>被害者の視点を取り入れた教育が48人、<2>薬物非行防止指導が303人、<3>性非行防止指導が126人、<4>暴力防止指導が333人、<5>家族関係指導が339人、<6>交友関係指導が695人であった(法務省矯正局の資料による。なお、4年度からは、成年に達した者を対象とした「成年社会参画指導」が加わり、7種類となっている。成年社会参画指導については、コラム3参照)。
このうち、薬物非行防止指導及び性非行防止指導については、重点指導施設が指定され、指導の充実が図られている。令和3年度は、薬物非行防止指導では11庁、性非行防止指導では2庁が重点指導施設に指定されており、これらの施設においては、他の少年院からも対象者を受け入れるなどして、グループワーク等による重点的かつ集中的な指導が実施されている。
さらに、女子少年については、女子少年に共通する処遇ニーズに対応して全在院者を対象に実施する処遇プログラムが行われている(詳細については、第4編第7章第2節2項(2)参照)。
少年院においては、在院者に対し、勤労意欲を高め、職業上有用な知識及び技能を習得させるために必要な職業指導を行っている(令和4年度から再編された職業指導の概要については、コラム3参照)。
令和3年における出院者(退院又は仮退院により少年院を出院した者に限る。以下この節において同じ。)のうち、在院中に指定された職業指導の種目において、溶接、土木・建築、情報処理等の資格・免許を取得した者は延べ人員で1,330人、それ以外の資格取得講座において、小型車両系建設機械運転、フォークリフト運転、危険物取扱者等の資格・免許を取得した者は延べ人員で1,763人であった(法務省矯正局の資料による。)。
少年院においては、義務教育未終了者及び社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる在院者に対しては、小学校又は中学校の学習指導要領に準拠した教科指導を行う。そのほか、高等学校への編入若しくは復学、大学等への進学又は就労等のために高度な学力を身に付けることが必要な者に対しては、その学力に応じた教科指導を行うことができる。令和3年における出院者のうち、中学校又は高等学校への復学が決定した者は、それぞれ22人、54人であり、在院中に中学校の修了証明書を授与された者は、58人であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。なお、法務省と文部科学省の連携により、少年院内において、高等学校卒業程度認定試験を実施しており、同年度の受験者数は443人、合格者数は、高卒認定試験合格者が169人、一部科目合格者が260人であった(文部科学省総合教育政策局の資料による。)。
善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる健全な心身を培わせるため必要な体育指導が行われている。体育指導においては、各種スポーツ種目等を通じて、日常生活に必要な体力や技能を高めることのみならず、遵法の精神や協調性を育むような指導に留意している。
特別活動指導においては、在院者の情操を豊かにし、自主、自律及び協同の精神を養うため、自主的活動、クラブ活動、情操的活動、行事及び社会貢献活動が行われている。このうち、社会貢献活動としては、社会に有用な活動を通じて規範意識、社会性の向上等を図ることを目的として、公共施設における清掃活動等が行われている。
少年院においては、在院者の保護者等に対し、在院者の処遇に関する情報の提供、少年院の職員による面接の実施、少年院で実施する教育活動への参加依頼等を通じて、在院者の処遇への理解と協力を得るよう努めている。令和3年に保護者等の参加を依頼した少年院の主な教育活動としては、保護者等と在院者が共同で活動し、相互理解を深めさせることなどを目的とした保護者参加型プログラムを延べ87回(保護者等の参加人員は延べ400人)、保護者等に在院者の処遇や円滑な社会復帰に向けた支援内容に関する理解を深めさせることを目的とした保護者会を延べ674回(同1,538人)、家族間のコミュニケーション等に関する講習会を延べ109回(同425人)実施した(法務省矯正局の資料による。)。
また、少年院においては、家族関係を調整する上で必要があると認められる場合のほか、在院者と保護者等との間で、将来の進路や出院後の生活、被害弁償等の重要な問題について話し合う必要があると認められるなどの場合、在院者を少年院の特に区分した場所に収容し、同所にその保護者等を宿泊させる方法により面会をさせることができる(宿泊面会)が、令和3年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響もあり、宿泊面会の実施がなかった(法務省矯正局の資料による。)。
少年院においては、家庭裁判所等の関係機関を始めとして、学校、病院、民間の篤志家等に対して協力を求め、その専門的な知識・技術を活用して在院者の改善更生を図っている。
民間の篤志家として、篤志面接委員、教誨師、更生保護女性会員、BBS会員等が支援活動を行っている。篤志面接委員は、在院者に対し、種々の悩みについての相談・助言、教養指導等を行っており、令和3年末現在、391人を少年院の篤志面接委員として委嘱している(法務省矯正局の資料による。)。教誨師は、在院者の希望に応じて宗教教誨を行っており、同年末現在、329人を少年院の教誨師として依頼している(法務省矯正局の資料による。第2編第4章第4節3項参照)。更生保護女性会員、BBS会員等は、定期的に少年院を訪問し、様々な形で少年院の処遇を支援している(同編第5章第6節4項(1)及び(2)参照)。
少年院は、出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者に対しては、その意向を尊重しつつ、保護観察所と連携して、適切な帰住先を確保すること、医療及び療養を受けることを助けること、修学又は就業を助けることなどの社会復帰支援を行っている。
法務省においては、厚生労働省と連携し、刑務所出所者等総合的就労支援対策の一環として、少年院在院者に対してハローワークの職員による職業相談等を実施しており(第2編第4章第3節4項参照)、また、障害を有し、かつ、適当な帰住先がない在院者に対して、出院後速やかに福祉サービスを受けることができるようにするための特別調整を実施している(同節5項及び同編第5章第2節2項参照)。
令和3年における出院者のうち、就労支援の対象者に選定されて支援を受けた者は444人(28.3%)、そのうち就職の内定を得た者は145人(出院者の9.3%、就労支援を受けた者の32.7%)であった(矯正統計年報による。出院者の進路については、本節4項(1)参照)。
さらに、少年院においては、高等学校等への復学等を希望している在院者又は中学校への復学等が見込まれる在院者に対し、出院後の円滑な復学等を図るために行う修学支援についても充実が図られている。全在院者に対し、「学ぶ」ことの意義、学校の種類、学校卒業後の進路等について情報提供することを目的とした修学支援ハンドブックが配布されているほか、転学又は入学が可能な学校や、利用可能な経済的支援等に係る情報収集と提供を民間の事業者に委託する修学支援情報提供等請負業務(通称「修学支援デスク」)が整備され、在院者がこれを利用して転入学に関する具体的な情報を得られる。令和3年度における修学支援デスクの利用状況は、進路希望依頼が235件、調査報告が700件であった(法務省矯正局の資料による。)。
なお、法務省は、令和3年8月から、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)による非行少年への学習支援事業を開始した。これは、法務省との間で成果連動型民間委託契約を締結した受託者(共同事業体)が、非行少年を対象として、少年院在院中から出院後まで継続して、最長1年間の学習支援を実施するというものである。