令和4年1月1日現在、女性の受刑者の収容施設として指定されている刑事施設(医療刑務所及び拘置所を除く。以下(1)において「女性刑事施設」という。)は、栃木、笠松、和歌山、岩国及び麓の各刑務所、札幌、福島、豊橋及び西条の各刑務支所並びに加古川刑務所及び美祢社会復帰促進センターの各女性収容棟である。
4-7-2-3図は、刑事施設における女性被収容者の年末収容人員及び収容率(年末収容人員の収容定員に対する比率)の推移(最近20年間)を見たものである。女性被収容者の年末収容人員は、平成23年まで増加傾向にあったが、24年からは減少し続けている。収容率は、13年から18年までは100%を超えていたが、女性の収容定員が拡大されたこともあって、23年から令和元年まで低下し続けた。3年末現在において、女性の収容定員は6,491人(このうち既決の収容定員は4,828人、未決の収容定員は1,663人)であるところ、その収容率は60.3%(既決70.3%、未決31.2%)であった(なお、男女総数の収容率については、2-4-2-2図参照)。
4-7-2-4図は、女性入所受刑者の人員(罪名別)及び女性比の推移(最近20年間)を見たものである。女性入所受刑者の人員は、平成18年(2,333人)まで増加し続け、19年に若干減少した後はおおむね横ばいで推移した後、28年から減少傾向にあり、令和3年は1,666人(前年比104人(5.9%)減)であった。罪名別に見ると、窃盗の増加が著しく、3年(792人)は、平成14年(379人)の約2.1倍であり、24年以降は覚醒剤取締法違反を上回っている。女性比は、27年(9.9%)まで上昇し続け、28年から横ばいとなっていたが、令和2年(10.6%)に再び上昇し(前年比0.8pt上昇)、3年は10.3%と、前年に引き続き10%台であった(なお、入所受刑者の女性人口比については、2-4-2-3図参照)。
4-7-2-5図は、女性入所受刑者の年齢層別構成比の推移(最近20年間)を見たものである(入所受刑者の男女別の年齢層別構成比については、2-4-2-5図参照)。30歳未満の若年者層の構成比は、平成14年以降低下傾向にあり、30年以降は上昇し続けているものの、25年以降は他の年齢層と比べて構成比が最も低い。40歳代の年齢層の構成比は、14年から上昇傾向にあり、27年(30.4%)をピークに、28年から低下傾向にあり、24年から令和2年までは他の年齢層と比べて構成比が最も高かったが、3年は50~64歳の年齢層の方が高かった。同年齢層の構成比は、平成29年から上昇傾向にあり、令和3年は26.1%(前年比2.1pt上昇)であった。65歳以上の高齢者層の構成比は、平成14年以降上昇傾向にあり、令和3年(19.7%)は平成14年(4.3%)の約4.6倍であった(CD-ROM参照)。なお、令和3年における女性高齢者の罪名別構成比を見ると、窃盗が9割近くを占めている(4-8-2-3図参照)。
4-7-2-6図は、令和3年における出所受刑者(出所事由が満期釈放等又は仮釈放の者に限る。)の帰住先別構成比を男女別に見たものである。
女性受刑者については、その特性に応じた処遇の充実を図るため、地域の医療・福祉等の専門家と連携する「女子施設地域連携事業」が推進されているほか、女性受刑者特有の課題に係る処遇プログラムが策定・実施されるなどしている。
女子施設地域連携事業は、地方公共団体、看護協会、助産師会、社会福祉協議会等の協力の下、女性刑事施設が所在する地域の医療、福祉、介護等の専門職種とネットワークを作り、専門職種の助言・指導を得て、女性受刑者特有の問題に着目した処遇の充実等を図るものであり、令和4年1月1日現在、美祢社会復帰促進センターを除く女性刑事施設において事業が展開されている。
女性受刑者特有の課題に係る処遇プログラムとしては、一般改善指導の枠組みの中で、<1>窃盗防止指導、<2>自己理解促進指導(関係性重視プログラム)、<3>自立支援指導、<4>高齢者指導及び<5>家族関係講座の5種類のプログラムが実施されている。
また、薬物犯罪の女性受刑者に対する処遇の新たな取組として、札幌刑務所札幌刑務支所において、令和元年度から5か年の事業計画により、「女子依存症回復支援モデル」が試行されている。同事業では、同刑務支所に設置された「女子依存症回復支援センター」において、グループワーク等の集団処遇が実施されており、そのプログラムは、依存症に関する知識や依存症からの回復の原則、家族関係、子を持つ女性受刑者に対応した内容、女性特有の精神状態の変化や不定愁訴に関する事項等が盛り込まれ、出所後も継続実施できる構成となっている。
女子の少年院入院者は、女子のみを収容する少年院(9庁(分院4庁を含む。))又は男女を分隔する施設がある第3種少年院(2庁)のいずれかに収容される。
4-7-2-7図は、女子少年院入院者の人員(非行名別)及び女子比の推移(最近20年間)を見たものである。女子の少年院入院者の人員は、平成14年から減少傾向にあり、令和3年は119人(前年比18人(13.1%)減)であった。男子の少年院入院者の人員も減少傾向にあるものの、女子の減少の程度がより大きいことから、女子比は、平成18年以降、緩やかな低下傾向にあり、令和3年は8.6%(同0.2pt上昇)であった(男子の少年院入院者の人員については、3-2-4-1図参照)。非行名別に見ると、平成17年までは覚醒剤取締法違反の人員が他の非行名と比べて最も多かったが、その人員は15年以降減少傾向にあり、令和3年(18人)は平成14年(181人)の約1割であった(少年院入院者の非行名別構成比については、3-2-4-3図参照)。
なお、女子の少年院入院者は、男子と比べ、保護者等からの被虐待経験があるとする者の割合が高い(3-2-4-8図参照)。
女子の少年院入院者の処遇に関しては、平成28年度から、女子少年に共通する処遇ニーズに対応して全在院者を対象に実施する「基本プログラム」(自己開示・他者理解の態度を育て、自尊感情を高めるとともに、状況に適した対応が取れるようにすることを目的とした「アサーション・トレーニング」及びマインドフルネス瞑想を体験的に理解させることで衝動性の低減や統制力の向上等を目指す「マインドフルネス」)と、特に自己を害する程度の深刻な問題行動を有する在院者を対象に、個々の問題性に応じて実施する「特別プログラム」(自傷、摂食障害及び性問題行動に対するプログラム)が試行されている。