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令和4年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/コラム03

コラム3 少年法等の改正後の少年院における処遇の実際について

少年院においては、令和4年4月から施行された改正法を踏まえ(本章第1節1項及び本節参照)、新たな枠組み・指導体制等を構築した上で、更なる矯正教育等の充実強化に着手している。少年院の処遇の実際について、以下の3点を紹介する。

第一は、特定少年本章第1節1項参照)に対する矯正教育の実施である。これは、法制審議会諮問第103号答申において、罪を犯した18歳及び19歳の者は、民法上等で「成年」として位置付けられる一方、可塑性を有する存在であり、18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取扱いをすべきであるとされたことを踏まえ、検討が開始されたものであり、令和3年1月以降、外部有識者を交えた検討会での議論等を経て、その方向性が取りまとめられた。そこで確認された方向性は、特定少年を「民法上等の成年であり、責任ある主体として積極的に社会参加すべき存在」として位置付け、新たな教育プログラムを策定・導入するというものであった。この教育プログラムの内容・方法等については、その後検討が重ねられ、最終的には、成年社会参画指導という特定生活指導(本節3項(2)ア参照)が新たに開発された。同指導の受講者全員に統一的に実施されるプログラムは、ワークブック「大人へのステップ」に基づいて実施され、指導時間数は12単元(1単元100分)となっている。各単元のテーマは、「大人になる」、「非行・犯罪について」、「契約について」、「訴訟について」、「結婚について」など多岐にわたっている。成年であることの自覚及び責任を喚起するとともに、社会参加に必要な知識を付与すること等を指導目標にしており、これまでの少年院における矯正教育の枠組みを拡充する指導内容・方法等となっている。

成年社会参画指導 ワークブック「大人へのステップ」【写真提供:法務省矯正局】
成年社会参画指導 ワークブック「大人へのステップ」
【写真提供:法務省矯正局】

第二は、第5種少年院の運用の開始である。第5種少年院には、以下の表のとおり、二つの矯正教育課程が設置されている。

表 二つの矯正教育課程

第5種少年院在院者に対しては、保護観察復帰プログラムが新たに開発され、少年院と保護観察所が連携して実施することとされている。これは、当該在院者が「ありたい自分」に向かう一連のプロセスの一部として保護観察を位置付け、少年院職員や保護観察官等と対話を深めながら、更生することへの動機付けを高めることを指導目的としており、動機づけ面接の行動変容の理論に基づく教材とミーティングを効果的に組み合わせた指導内容となっている。同教材に基づく指導時間数は10単元(1単元:個別指導の場合50分、集団指導の場合100分)であり、各単元は、「今の自分」、「私の大切なもの」、「ありたい自分」、「強みと資源」、「私のロードマップ」などをテーマとしており、保護観察官や保護司の参加が推奨される単元も含まれている。ミーティングは、退院後の更生に向けて必要な事項等の話し合いをするため、当該在院者のほか、少年院職員、保護観察官又は保護司、家族やその他の支援者を参加者として、複数回実施することとされている。少年院と保護観察所の密接な連携を前提とした初めての試みであり、その効果が注目される。

第三は、職業指導種目の再編である。前記の外部有識者を交えた検討会は、主として18歳及び19歳の者に対する矯正教育の在り方について議論されたものであるが、課題の一つとして「時代のニーズに対応した職業指導種目の設置」が挙げられたことを踏まえ、今回の再編につながったものである(概要については、以下の図を参照)。

図 職業指導

これまで、職業指導は、<1>「職業能力開発指導」、<2>「自立援助的職業指導」及び<3>「職業生活設計指導」の三つの指導に分かれていたが、<2>が発展的に<1>及び<3>それぞれに再編され、再編後は、<1>及び<3>の二つの指導に大別されることになった。

それぞれの指導において、職業指導種目も再編され、例えば、新設された種目であるICT技術科は、プログラミング教育などICTに係る知識の習得等がねらいとされ、従来の電気工事科、溶接科、土木建築科等が統合された総合建設科は、複数の資格取得に向けた知識・技術の習得等がねらいとされている。このほか、従来の農園芸科、木工科、手芸科、陶芸科等が統合された製品企画科は、製品企画から制作、展示、販売までを体験することがねらいとされているなど、より実践・社会的視点を考慮した発展的再編になった。

このように、改正法の施行を機に、少年院では、新たな枠組み・指導体制等について検討が重ねられ、特定少年を含む在院者に対する矯正教育の充実強化が図られている。ところで、少年院は、大正12年(1923年)1月に初めて、東京に多摩少年院が、大阪に浪速少年院が開設され、令和5年(2023年)に100周年を迎える。この間、少年院は、処遇に関する知見・ノウハウを着実に蓄積し、少年院送致となった非行少年の処遇に係る専門機関としての役割を果たしてきたものであるが、今般、特定少年に対する処遇、保護観察中に遵守すべき事項を遵守しなかった特定少年を保護観察に復帰させることを目的とした新たなプログラムの開発・実施、若年受刑者処遇における矯正教育の手法やノウハウの活用(コラム2参照)など、その役割・機能を更に拡充しつつある。改正法施行後の少年院における処遇の実際は、時代のニーズに応えた更なる充実強化にほかならず、次の100年に向けての新たな知見・ノウハウの蓄積が期待される。