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令和元年版 犯罪白書 第3編/第1章/第3節/1

第3節 裁判
1 概説

刑事事件の第一審は,原則として,地方裁判所(罰金以下の刑に当たる罪及び内乱に関する罪を除き,第一審の裁判権を有する。)又は簡易裁判所(罰金以下の刑に当たる罪,選択刑として罰金が定められている罪及び常習賭博罪等の一定の罪について,第一審の裁判権を有する。)で行われる。なお,平成17年法律第35号による独占禁止法の改正(平成18年1月施行。第1編第1章第2節4項(2)イ参照)前は,私的独占等の一定の独占禁止法違反の罪に係る刑事事件については,東京高等裁判所が第一審の裁判権を有していたが,その改正後は,同事件については,地方裁判所が第一審の裁判権を有する。また,平成20年法律第71号による少年法及び裁判所法(昭和22年法律第59号)の各改正(平成20年12月施行)前は,少年の福祉を害する成人の刑事事件(児童福祉法違反等の少年法が定めていた一定の罪)については,家庭裁判所が第一審の裁判権を有していたが,その改正後は,同事件については,地方裁判所又は簡易裁判所が第一審の裁判権を有する。

通常第一審の裁判は,公判廷で審理を行う公判手続により行われ,有罪と認定されたときは,死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留又は科料の刑が言い渡される。なお,簡易裁判所は,原則として禁錮以上の刑を科することはできないが,窃盗等の一定の罪については,3年以下の懲役を科することができる。3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金を言い渡された者については,情状により,一定期間,刑の全部又は一部の執行が猶予されることがあり(罰金刑については全部執行猶予のみ。刑の一部執行猶予制度については,第1編第1章第1節12項参照),事案によっては,その期間中,保護観察に付されることがある。簡易裁判所においては,略式手続による裁判を行うこともでき,その場合,書面審理に基づいて100万円以下(平成3年法律第31号による刑事訴訟法改正(平成3年5月施行。同編第2章第1節1項(1)参照)までは20万円以下,平成18年法律第36号による刑事訴訟法改正(18年5月施行。同項(8)参照)までは50万円以下)の罰金又は科料の裁判を行う。略式命令を受けた者は正式裁判を請求することができ,その場合,公判手続による裁判に移行する。

第一審判決に対しては,高等裁判所に控訴をすることができ,控訴審判決に対しては,最高裁判所に上告をすることができる。

平成期においては,司法制度改革(本章第1節2項コラム4参照)の一環として,刑事裁判手続に関し,裁判員制度(本節3項(3)参照),即決裁判手続(同項(4)参照)及び公判前整理手続(同項(5)参照)がそれぞれ導入された。