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令和元年版 犯罪白書 第3編/第1章/第1節/コラム4

コラム4 司法制度改革

21世紀を迎えるに当たり,我が国では,社会の複雑・多様化,国際化等に加え,国内外の要請を受けて進めてきた規制緩和・規制改革などにより,「事前規制型」の社会から「事後監視・救済型」の社会に移行することが求められ,こうした社会の変化に伴い,司法の役割は一層重要なものになると認識されることとなった。そのため,司法の機能を充実強化し,国民が身近に利用することができ,社会の法的ニーズに的確に応えることができる司法制度を構築していくことが必要とされた。

このような見地から,平成11年7月,21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし,国民がより利用しやすい司法制度の実現,国民の司法制度への関与,法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議することを目的として,内閣に司法制度改革審議会が設置された。

2年間の審議の結果,平成13年6月,司法制度改革審議会意見書が取りまとめられた。同意見書は,「国民の期待に応える司法制度の構築(制度的基盤の整備)」,「司法制度を支える法曹の在り方の改革(人的基盤の拡充)」及び「国民的基盤の確立(国民の司法参加)」を三つの柱とし,国民の期待に応える司法制度の構築として,裁判の迅速化や国民の司法へのアクセス拡充のほか,刑事司法制度につき,刑事裁判の充実・迅速化,公的弁護制度の整備,検察審査会の機能強化等を,国民的基盤の確立として,刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入等を提言するものであった。

政府は,司法制度改革審議会意見を最大限尊重し,3年以内を目途に関連法案の成立を目指す旨の閣議決定を行い,平成13年11月に成立した司法制度改革推進法(平成13年法律第119号)に基づき,同年12月,内閣総理大臣を本部長,内閣官房長官及び法務大臣を副本部長などとする司法制度改革推進本部を設置した。14年3月には,同法に基づく司法制度改革推進計画を閣議決定し,16年12月までの間に24本の法律案が国会において可決・成立した。

例えば,「裁判の迅速化に関する法律」では,第一審の訴訟手続を2年以内のできるだけ短い期間内に終局させることを目標とすることとされ,「総合法律支援法」では,あまねく全国において法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を目指し,日本司法支援センター(法テラス)が相談窓口となって,法的紛争解決に役立つ情報提供業務,民事法律扶助業務,国選弁護人の確保業務,司法過疎対策業務や犯罪被害者支援業務を行うこととされた。

刑事司法制度に関しては,「刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号)」により,公判前整理手続,即決裁判手続,被疑者勾留段階における国選弁護人制度,検察審査会の一定の議決により公訴が提起される制度等が導入された。また,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(裁判員法)により,刑事裁判において一般の国民が裁判官とともに裁判内容の決定に関与する制度(裁判員制度)が導入されるなどした。その後の準備期間を経て,平成21年5月,同制度が施行されたことなどをもって,司法制度改革関連の法律は全て施行された。

令和元年5月,裁判員制度10周年を迎え,最高裁判所長官は,「制度の導入を受けて,公判審理が,法廷で的確に心証を採れる,活性化したものを目指して大きく変化するとともに,裁判員の方々の視点・感覚を反映し,より多角的で深みのある判断が示されるようになるなど,この10年間,戦後最大の刑事司法の改革がおおむね順調に歩み続けていることに大きな感慨を覚えます。」と述べている。

司法制度改革パンフレット
司法制度改革パンフレット