再犯防止推進法は,国だけでなく,地方公共団体にも再犯の防止等に関する施策を策定・実施する主体としての責務があるとし,国と地方公共団体が相互に連携を図らなければならないことを明確にしているが,同法制定以前から,特に社会内において,保護観察所や,保護司等の民間協力者と地方公共団体が連携協力した各種の取組が行われてきた。この項では,就労支援,保護司活動への支援,その他更生支援における地方公共団体の取組について紹介する。
地方公共団体では,犯罪や非行をした者の社会における職業の確保のため,保護観察対象者を雇用した経験のある協力雇用主等に対する優遇措置として,建設工事等の競争入札参加資格審査の段階や総合評価落札方式での落札者決定の段階において,評価・加点を行う措置(社会貢献活動や地域貢献活動として加点するもの。)を導入するものが増えている(なお,法務省においても,平成27年度から,法務省発注工事の一部において,同様の措置を導入している。)。
また,平成22年に,大阪府内の地方公共団体において,保護観察対象者を臨時雇用員として採用する取組が始まり,同様の動きが他の地方公共団体にも広がっている(なお,法務省等の国の機関においても,25年5月から,保護観察対象者を非常勤職員として雇用する取組が始まり,現在までに複数名を採用している。)。
7-2-2-9図は,協力雇用主支援等の各制度の導入が確認された地方公共団体数の推移(最近5年間)を取組別に見たものである。いずれの取組においても,平成28年の地方公共団体数を24年と比較すると,大きく増加している。
また,国の運営する自立更生促進センター(第2編第5章第2節2項(6)及び第3編第2章第5節2項(5)参照)において行われる農業の職業訓練を始めとする更生支援に,地方公共団体や地域の住民が協力している例もある。
保護司(第2編第5章第5節1項及び本節1項(1)参照)の活動に対しても,地方公共団体による様々な支援が行われている。保護司の職務の一つである犯罪予防活動(第2編第5章第5節5項参照)として行われる「社会を明るくする運動」(本節3項(1)参照)は,その地域に根ざす更生保護ボランティアと地方公共団体とが連携して行う取組の代表的なものであり,都道府県及び市区町村における同運動の推進委員会では,多くの地方公共団体の首長が推進委員長を務めている。さらに,平成26年及び27年には,法務省と総務省の連名で,都道府県知事及び市区町村長宛てに保護司活動等に対する支援に関する協力依頼がなされており,例えば,犯罪予防活動に限らず地域における保護司活動の拠点となる更生保護サポートセンター(本節1項(1)ア(イ)参照)についても,地方公共団体がその設置場所の確保・維持運営に協力している例が多く見られる。
7-2-2-10図は,全国の更生保護サポートセンターの設置場所及び借料の有無を見たものである。地方公共団体等が運営する公的施設に設置された更生保護サポートセンターが約8割を占め,そのうちの約7割が借料なしとなっており,設置場所の確保・維持運営に関し,地方公共団体が大きな役割を果たしている。
また,保護司候補者の確保においても,全国の約4分の1の保護司会で,地方公共団体から保護司候補者の情報提供や推薦を受けており(7-2-2-2図<3>参照),地方公共団体の役割が大きい。
地方公共団体では,医療・保健・福祉等の分野を中心に,国と地方との適切な役割分担の下,薬物依存や高齢・障害等の特定の課題を抱えた刑務所出所者等に対する継続的な地域支援体制の整備に向けて,保護観察所等と連携した取組を進めている(本編第3章第1節1項及び2項参照)。
また,地域に密着した取組の一つとして,社会貢献活動(第2編第5章第2節2項(5)参照)においては,地方公共団体からの活動場所の提供等のほか,同活動の実施等に際しての地方公共団体職員の参加等,多様な形での連携がなされている。
さらに,近年,地方公共団体が,再犯防止に関する地域の関係機関・団体等の連絡会議を主催したり,シンポジウムを開催したりする取組も始まっている(本編第3章第1節2項参照)。
再犯防止推進法の施行を受け,法務省では,都道府県及び政令指定都市に対して,再犯防止担当窓口の設定を依頼し,国の再犯防止推進計画の策定状況等について幅広い情報共有を行うなど,地方公共団体との連携の強化を進めている。