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平成29年版 犯罪白書 第7編/第2章/第2節/3

3 国民に対する広報・啓発活動

第1節では,平成25年に内閣府が実施した「再犯防止対策に関する特別世論調査」の結果について分析したが,再犯防止対策の必要性を認める者は,そうでない者と比べて犯罪や非行をした者の立ち直りへの協力意思のある者の割合が高いという結果が得られている。また,立ち直りへの協力意思がいまだ明確に定まっていないと思われる者が少なくないことも分かった。こうした状況から,国民に対し,適切な広報・啓発活動を行い,幅広く理解と協力を求めていくことが,犯罪や非行をした者が地域社会において立ち直るための再犯防止施策の推進や,更生を支援する地域の民間協力者の開拓につながるものと考えられる。

この項では,国民に対する広報・啓発活動のうち,社会を明るくする運動,矯正施設における参観及び矯正展を紹介する。

(1)社会を明るくする運動

社会を明るくする運動第2編第5章第5節5項参照)は,全ての国民が,犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め,それぞれの立場において力を合わせ,犯罪や非行のない安全で安心な地域社会を築くための全国的な運動である。法務省が主唱し,平成29年で第67回目を数える同運動は,昭和24年,民間の有志による,非行少年の立ち直り支援活動である「銀座フェアー」がその始まりであるが,平成26年12月に犯罪対策閣僚会議において決定された「宣言:犯罪に戻らない・戻さない」において,全ての省庁を同運動の中央推進委員会の構成員にするとともに,27年からは,毎年,同運動への国民の理解と協力を求める内閣総理大臣メッセージが発出されるなど,近年,政府全体の取組としてその重要性が高まっている。29年2月に発出された内閣総理大臣メッセージでは,再犯防止推進法の趣旨も踏まえ,国,地方公共団体,民間が一体となって,犯罪や非行をした者の立ち直りに向けた取組を推し進めることが重要であるとされている。

社会を明るくする運動は,中央推進委員会並びに都道府県及び市区町村等を単位とする推進委員会により推進されているが,「更生保護の日」である7月1日からの1か月間を強調月間として,全国各地で新聞やテレビ等による広報や街頭キャンペーン,講演会等を実施している。

第67回「社会を明るくする運動」広報用ポスター【提供:法務省保護局】
第67回「社会を明るくする運動」広報用ポスター
【提供:法務省保護局】

なお,再犯防止推進法においても,再犯の防止等についての国民の関心と理解を深めるため,7月を再犯防止啓発月間に定めるとともに,再犯防止啓発月間の趣旨にふさわしい事業を実施する努力義務を国及び地方公共団体に課しており,社会を明るくする運動は,この再犯防止啓発月間の趣旨も踏まえて展開することが期待されている。

7-2-2-11図は,「社会を明るくする運動」の実施行事回数と参加人員の推移(最近5年間)を見たものである。平成28年の実施行事回数は,前年(6万3,656回)より増加し,6万4,694回(前年比1.6%増)であった。参加人員は,26年から増加し続けており,28年は25年の約1.2倍の約283万人であった(法務省保護局の資料による。)。

7-2-2-11図 「社会を明るくする運動」の実施状況の推移
7-2-2-11図 「社会を明るくする運動」の実施状況の推移
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(2)矯正施設における参観

矯正施設では,矯正施設の運営に対する国民の理解と協力を得るため,被収容者のプライバシー等に十分配慮しつつ,矯正施設の参観の機会を積極的に提供している。矯正施設における参観には,矯正施設の側から参観の機会を提供し,参観希望者を募集して実施する募集参観と,個別に参観の申出があった場合に実施する一般参観がある。参観は,学術研究のため必要がある場合や,矯正施設に対する理解を深めるために有益である場合などで,矯正施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがないときに実施される。参観の際には,参観者に対し,職員による説明,資料の配布,ビデオの視聴等を通じた情報提供等が行われる。

7-2-2-12表は,刑事施設,少年院及び少年鑑別所における参観の実施状況の推移(最近5年間)を募集参観と一般参観の別に見たものである。平成28年における刑事施設,少年院及び少年鑑別所の募集参観と一般参観を合わせた参観の実施回数及び実施人員は,5,510回,16万1,415人であった。

7-2-2-12表 矯正施設における参観の実施状況の推移
7-2-2-12表 矯正施設における参観の実施状況の推移
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(3)矯正展

全国矯正展は,刑務作業の意義と重要性を広く国民に広報することを目的とし,「社会を明るくする運動」の中央行事の一環として,昭和34年から毎年開催されている。全国矯正展では,各種の刑務所作業製品等を展示・即売するほか,刑務作業の現状等を紹介している。また,各刑事施設も矯正展を実施しており,刑務作業製品等の展示・即売を行うほか,施設の敷地で実施する場合には,施設内の見学等も実施している。

7-2-2-13図は,矯正展の実施状況の推移(最近5年間)を全国矯正展と各刑事施設で実施される矯正展の別に見たものである。全国矯正展は,毎年1回実施されるものであるが,来場者数は増減を繰り返しており,平成28年度は前年度(1万7,858人)より減少し,1万6,934人(前年比5.2%減)であった。各刑事施設で実施される矯正展については,実施回数は,平成26年度から3年連続で減少しており,28年度は71回(前年比2.7%減)であった。来場者数は,増加傾向にあり,28年度は24年度(28万9,575人)の約1.2倍の33万9,829人であった。

7-2-2-13図 矯正展の実施状況の推移
7-2-2-13図 矯正展の実施状況の推移
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