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令和7年版 犯罪白書 第7編/第3章/第2節/1

第2節 矯正
1 矯正における被害者等通知制度の実施状況

被害者等通知制度第6編第2章第1節5項及び6項並びに本章第1節1項参照)は、平成11年の制度開始後、段階的に通知の対象や内容等を拡大してきた。犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)に基づいて17年12月に策定された犯罪被害者等基本計画を受けて、19年12月から、有罪裁判確定後の加害者及び保護処分を受けた加害者の処遇状況等に関する事項についても、被害者等(通知対象者の範囲については、この項の(1)及び(2)をそれぞれ参照)から希望があった場合には、原則として通知を行うこととなり、刑事施設や少年院が検察庁や保護観察所等と連携して同制度を実施するよう拡充された(なお、再被害防止の観点から転居等の措置を講じる必要があるために受刑者の釈放予定時期及び帰住予定地等について通知する場合や、死刑を執行した事実を通知する場合については、第6編第2章第1節5項参照)。

矯正における被害者等通知制度は、加害者が刑事施設に収容された場合には、加害者を収容する刑事施設(以下この節において「収容刑事施設」という。)の長から連絡を受けた検察官が、加害者が少年院に収容された場合には、加害者を収容する少年院(以下この節において「収容少年院」という。)の長が、それぞれ被害者等に対して通知を行っている。

以下、加害者が刑事施設又は少年院に収容された場合の被害者等通知制度の実施状況について、それぞれ述べる。

(1)加害者が刑事施設に収容された場合

通知の対象者は、<1>被害者、<2>被害者の親族又はこれに準ずる者、<3>前記<1>又は<2>の弁護士である代理人である(以下(1)において「被害者等」という。)。

加害者の確定裁判が拘禁刑であり、その刑の全部について執行猶予の言渡しがない場合(刑の全部の執行猶予の言渡しが取り消された場合を含む。)、検察官が被害者等に対して通知する事項は、<ア>刑の執行終了予定時期、<イ>収容刑事施設における処遇状況に関する事項(収容刑事施設の名称、作業名、改善指導名、褒賞や懲罰の状況等)、<ウ>仮釈放又は刑の執行終了による釈放に関する事項等(釈放された年月日及びその事由等)及び<エ>刑の全部又は一部執行猶予の言渡しの取消しに関する事項である。収容刑事施設の長は、前記<エ>を除く事項について、検察官に連絡し、これを受けた検察官は、被害者等から通知希望の申出書を受理した後、適宜の時期に最初の通知を行い、以後、おおむね6か月ごと及び加害者が釈放された際等に通知を行っている。

なお、加害者の確定裁判が拘留の場合の通知事項は、収容刑事施設から釈放(仮出場又は刑の執行終了)された年月日及びその事由等である。

収容刑事施設における被害者等通知制度の実施状況(通知件数)の推移を通知事項別に見ると、7-3-2-1図<1>のとおりである。平成19年12月の同制度拡充後、各通知事項の通知件数は増加傾向を示し、29年には通知件数の総数が3万9,094件で最多となった。このうち、刑の執行終了予定時期については、同年(1万6,905件)をピークにその後は1万5,000件台から1万6,000件台で推移し、令和6年は1万6,059件(前年比102件(0.6%)増)であった。また、収容刑事施設における処遇状況に関する事項については、平成29年(1万8,972件)をピークにその後は1万7,000件台から1万8,000件台で推移し、令和6年は1万8,184件(同167件(0.9%)増)であった。受刑者の釈放に関する事項については、平成28年(2,950件)をピークにその後は2,600件台から2,900件台で推移し、令和6年は2,646件(同100件(3.6%)減)であった。なお、刑の執行終了予定時期及び受刑者の釈放に関する事項については、検察庁における被害者等通知制度(本章第1節1項参照)による目撃者等に対する通知を含むことに留意が必要である。

(2)加害者が少年院に収容された場合

通知の対象者は、<1>被害者、<2>被害者の法定代理人、<3>被害者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹(以下(2)において「配偶者等」という。)、<4>前記<1>ないし<3>の者から委託を受けた弁護士(以下(2)において「弁護士」という。)である(以下(2)において「被害者等」という。なお、少年事件における被害者等通知制度については、第6編第2章第1節6項参照)。

加害者が少年院送致の場合又は特定保護観察処分少年が少年院に収容された場合(特定少年に対する保護処分については、第3編第2章第1節3項(3)参照)、収容少年院の長が被害者等に対して通知する事項は、<ア>収容少年院の名称等の事項(名称、入院年月日等)、<イ>収容少年院における教育状況等に関する事項(教育予定期間、処遇の段階、矯正教育の目標、賞や懲戒の状況等)及び<ウ>出院に関する事項等(出院年月日、出院事由等)である。収容少年院の長は、被害者等から通知希望の申出書を受理した後、適宜の時期に最初の通知(以下(2)において「初回通知」という。)を行い、以後、おおむね6か月ごと及び加害者が出院した際等に通知を行っている。

収容少年院における被害者等通知制度の実施状況(通知件数)の推移(同制度拡充後の平成19年12月以降)を通知時期別に見ると、7-3-2-1図<2>のとおりである。初回通知及び6か月ごとの通知(通知の時期が地方更生保護委員会に対する仮退院(特定保護観察処分少年の場合は退院。以下この項において同じ。)の申出より前の場合)で通知する事項は、前記<ア>及び<イ>であり、仮退院申出時の通知(仮退院の申出後に初回通知及び6か月ごとの通知を行う場合を含む。)は、地方更生保護委員会に対して仮退院の申出をした旨及びその年月日等を、前記<ア>及び<イ>と併せて通知している。出院後の通知は、前記<ア>及び<イ>の一部並びに前記<ウ>を通知している。

平成19年12月の同制度拡充後、通知件数の総数は増加傾向を示し、28年(348件)に最多となった。その後は減少傾向にあったが、令和6年は203件(前年比11件(5.7%)増)であった。このうち、初回通知については、平成24年に97件で最多であり、その他の年は30件台から80件台で推移している。6か月ごとの通知については、27年から29年までは80件台であったが、その後は40件台から60件台で推移している。仮退院申出時の通知については、24年に94件で最多であり、その後は40件台から80件台で推移している。また、出院後の通知については、25年(111件)に100件を超えたのを除き、おおむね50件台から90件台で推移している。

7-3-2-1図 矯正における被害者等通知制度の実施状況の推移
7-3-2-1図 矯正における被害者等通知制度の実施状況の推移
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令和6年における被害者等通知制度の実施状況について、申出件数を申出書提出者別に見ると、被害者が25件、被害者の法定代理人が27件、配偶者等が6件、弁護士が20件であった(法務省矯正局の資料による。)。

令和6年における被害者等通知制度の実施状況について、被害者等からの申出件数を申出に係る加害者の非行名別に見ると、その構成比は、7-3-2-2図のとおりである。傷害・暴行が全体の3割強を占めて最も高く、次いで、強盗(14.5%)、不同意性交等(9.2%)の順であった。

7-3-2-2図 矯正における被害者等通知制度の実施状況の非行名別構成比(少年院)
7-3-2-2図 矯正における被害者等通知制度の実施状況の非行名別構成比(少年院)
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