令和元年に薬物犯罪により起訴された者のうち,有前科者(前に罰金以上の有罪の確定裁判を受けた者に限る。以下この項において同じ。)の人員及び有前科者率(起訴人員に占める有前科者の人員の比率をいう。以下この項において同じ。)は,5-2-2-1表のとおりである。
最近5年間の有前科者率は,大麻取締法違反は32.6~38.0%,麻薬取締法違反は28.5~38.8%,覚醒剤取締法違反は74.8~75.4%,毒劇法違反は75.9~80.1%でそれぞれ推移している(5-2-2-1表CD-ROM参照)。
令和元年について見ると,覚醒剤取締法及び毒劇法の各違反の有前科者率は,起訴人員総数の有前科者率(44.4%)より高く,特に,覚醒剤取締法違反は,実刑の前科を有する者(懲役又は禁錮の実刑に処せられたことがある者に限る。)又は一部執行猶予の前科を有する者の比率(合計68.0%)が高い。また,大麻取締法及び麻薬取締法の各違反の有前科者率は,起訴人員総数の有前科者率より低く,全部執行猶予の前科を有する者の比率が高い(5-2-2-1表CD-ROM参照)。
また,令和元年に薬物犯罪で起訴された者のうち,犯行時に全部執行猶予中,一部執行猶予中,仮釈放中又は保釈中であった者の人員は,5-2-2-2表のとおりである。
最近5年間について見ると,大麻取締法及び麻薬取締法の各違反は,犯行時に全部執行猶予中であった者が増加傾向にあり,大麻取締法違反は,保護観察付全部執行猶予中であった者も増加傾向にある。覚醒剤取締法違反は,犯行時に全部執行猶予中であった者が一貫して減少しているのに対し,一部執行猶予中であった者が増加している。保釈中の犯行により起訴された者の人員の推移を見ると,覚醒剤取締法違反が一貫して増加しており,令和元年は120人(前年比17人増)であった(5-2-2-2表CD-ROM参照)。
7-4-3-3表は,覚醒剤取締法違反により全部執行猶予を言い渡された者について,保護観察の有無別の人員及び取消事由別の取消人員等の推移(最近10年間)を見たものである。全部執行猶予を取り消された者は,平成22年以降減少傾向にあり,令和元年は706人(全部執行猶予取消人員総数の19.1%)であった。このうち,取消事由が再犯である者は,保護観察付全部執行猶予中の者が98人(前年比15人(13.3%)減),その他の者(単純執行猶予中の者のほか,仮解除中の者等を含む。以下(2)において同じ。)が583人(同78人(11.8%)減)であった。
覚醒剤取締法違反により全部執行猶予を言い渡された者について,取消人員の言渡人員に対する比率(以下この項において「執行猶予取消率」という。なお,取消人員は,当該年に全部執行猶予を取り消された者であり,当該年よりも前に全部執行猶予の言渡しを受けた者も含まれる。このため,厳密には取消人員の言渡人員に対する比率は,実際の全部執行猶予の取消しの比率を意味しないが,そのおおよその傾向を見ることができる。)は横ばい状態にあるが,令和元年は27.6%と全罪名の執行猶予取消率(11.9%。5-2-2-3表参照)と比較すると顕著に高く,同年の取消事由のうち再犯によるものは96.5%であった。再犯を事由とする執行猶予取消率を保護観察の有無別に見ると,保護観察付全部執行猶予中の者が37.4%,その他の者が25.3%で,いずれも全罪名の執行猶予取消率(前者は24.1%,後者は10.2%。5-2-2-3表参照)よりも高かった。
7-4-3-4表は,覚醒剤取締法違反により一部執行猶予を言い渡された者について,保護観察の有無別の人員及び取消事由別の取消人員等の推移(刑の一部執行猶予制度が開始された平成28年以降)を見たものである。
覚醒剤取締法違反による執行猶予期間中に再犯により執行猶予を取り消された者(刑法26条の2第1号又は27条の5第1号に該当する場合を含む。)の再犯期間(全部執行猶予は執行猶予の言渡しの日から更に罪を犯した日までの期間をいい,一部執行猶予は刑の一部執行猶予期間に入った日から更に罪を犯した日までの期間をいう。ただし,刑の一部執行猶予の言渡しの日から刑の一部の執行猶予期間に入るまでの犯行は,刑の一部執行猶予期間に入った日に罪を犯したものとする。)を見ると,再犯期間が3月以内の者は,全部執行猶予中の者については,保護観察中の者が10.0%,その他の者が14.4%であり,一部執行猶予中の者(保護観察が付された者に限る。)については,22.6%であった。再犯期間が1年以内の者は,全部執行猶予中の者については,保護観察中の者が47.0%,その他の者が55.6%であり,一部執行猶予中の者(保護観察が付された者に限る。)については,68.9%であった(検察統計年報による。)。