昭和23年7月に公布された現行の少年法(昭和23年法律第168号)は,第二次世界大戦後の憲法改正に基づいて従来の諸法制が抜本的に改革され,非行少年の処遇制度及び刑事手続についても見直しが行われる中,旧少年法(大正11年法律第42号)が全面的に改正されたものである。その後,昭和20年代に部分的な改正が繰り返され,少年に関する処遇制度及び刑事手続が確立した。
平成期に入ると,少年による凶悪重大事件が相次いで発生するなどしたため,少年事件の処分及び審判手続の適正化並びに被害者等の保護の必要性等が認識されるようになり,法改正の気運が高まった。こうしたことを背景に,平成12年に約半世紀ぶりの大規模な改正が行われるに至り,それ以降も,少年非行を取り巻く変化に対応するための改正が重ねられている。
以下,平成期における少年法の改正に係る要点を概観する。
平成12年11月,少年法等の一部を改正する法律(平成12年法律第142号)が成立し,13年4月に施行された。同法による改正は,<1>少年事件の処分等の在り方の見直し,<2>少年審判の事実認定手続の適正化,<3>被害者等への配慮の充実の三点を柱としている。
このうち,少年事件の処分等の在り方の見直しについては,刑事処分可能年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げ,少年院において懲役又は禁錮の刑の執行ができることとされたほか,罪を犯すとき16歳以上の少年に係る故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪の事件については,原則として検察官に送致する決定をしなければならないこととされた(いわゆる原則逆送制度)。また,家庭裁判所による保護者に対する訓戒・指導等の措置等についても定められた。
少年審判の事実認定手続の適正化については,裁定合議制度の導入,検察官及び弁護士である付添人(国選付添人)が関与する審理の導入,観護措置期間の延長,抗告受理申立制度の導入,保護処分終了後における救済手続の整備がなされた。
被害者等への配慮の充実に係る内容については,本章第5節4項及び第6編第2章第1節6項参照。
平成16年5月,司法制度改革の一環として,被疑者国選弁護制度の導入等を内容とする刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成16年法律第62号)が成立し,同法のうち少年法の改正に係る部分は18年10月に施行された。この改正により,少年の被疑者に国選弁護人が付された場合に関する規定が新設された(刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の改正については,本章第1節1項(5)参照)。
平成19年5月,当時の少年非行の状況に鑑み,これに適切に対処するため,少年法等の一部を改正する法律(平成19年法律第68号)が成立し,同年11月に施行された。同法により,<1>触法少年に係る事件の調査手続が整備され,<2>14歳未満(おおむね12歳以上)の少年についても,家庭裁判所が特に必要と認める場合には少年院送致が可能となり,<3>保護観察の保護処分を受けた者に対する指導を一層効果的にするため,保護観察の保護処分を受けた者が遵守事項を守らなかった場合の措置が設けられるなどするとともに,<4>一定の重大事件について,少年の身柄を少年鑑別所に収容する観護措置がとられている場合に,家庭裁判所が職権で少年に弁護士である国選付添人を付することができる制度が導入された(日本司法支援センター(通称「法テラス」)における国選付添事件の受理件数の推移については,3-1-1-2表参照)。
平成20年6月,犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号)等を踏まえ,少年審判における被害者等の権利利益の一層の保護を図るため,少年法の一部を改正する法律(平成20年法律第71号)が成立し,被害者等の申出による意見の聴取の対象者の拡大に関する部分は同年7月に,被害者等による少年審判傍聴制度の導入等,その余の部分は同年12月に施行された(詳細については,本章第5節13項参照)。
平成26年4月,少年審判手続のより一層の適正化及び少年に対する刑事事件における科刑の適正化を図るため,少年法の一部を改正する法律(平成26年法律第23号)が成立した。同法により,不定期刑を科することとなる事件の範囲の拡大,不定期刑の長期と短期の上限の引上げ,犯行時18歳未満であったことにより無期刑をもって処断すべきところを有期刑を科する場合における刑の上限の引上げ等がなされた(同年5月施行)。
また,検察官が少年審判に関与することができる事件及び少年に弁護士である国選付添人を付することができる事件の範囲が,それぞれ,死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件にまで拡大された(平成26年6月施行)。