平成27年の入所受刑者のうち再入者の割合は,男性が約6割であるのに対し,女性では半数に満たないものの,女性再入者の人員及び女性入所受刑者に対する割合は近年増加傾向にある(5-1-3-1図<2>,5-1-3-3図参照)。
平成26年出所受刑者の2年以内再入率について男女別に見ると,男性は19.0%,女性は13.5%であり,女性と比べて男性の方が再入率が高い(5-1-3-16図<1>参照)。また,再犯期間について見ても,女性では,5年以内再入者(23年出所受刑者)のうち出所から1年未満で再犯に至った者が約4割であるのに対し,男性では半数を超え,6月未満で再犯に至った者も約3割を占めており,女性と比べて男性の方が再犯期間が短い(5-1-3-19図<1>参照)。
平成26年出所受刑者の2年以内再入率について年齢層別に見ると,29歳以下の者が13.5%であるのに対し,65歳以上の者は20.4%であり,高齢者層の再入率が高い(5-1-3-16図<3>参照)。また,再犯期間について見ても,年齢層が高い者ほど再犯期間が短く,65歳以上の高齢者層では,5年以内再入者(23年出所受刑者)のうち約4割が出所から6月未満で再犯に至っている(5-1-3-19図<3>参照)。
高齢者層の再入所状況からは,出所後の社会生活の立て直しが高齢者では特に困難であり,犯罪に舞い戻りやすい状況にあることがうかがわれる。高齢者層の再入率の高さは,年齢だけがその要因であるとはいえず,入所度数との関係(高齢者層で再入者の割合が高く,再入者は初入者と比べて出所後の再入率が高い(4-7-2-2図<1>,5-1-3-1図<1>,5-1-3-9図参照)。)や,罪名との関係(高齢者層の罪名は窃盗が約半数で,他の年齢層と比べてその比率が高く,窃盗は再入率が高い(4-7-2-3図,2-4-1-6図,5-1-3-14図参照)。)も考慮する必要があるが,入所受刑者中の高齢者の人員が増加している(4-7-2-2図<1>参照)ことから,高齢者の再犯防止対策に重点的に取り組む必要がある。
再入率を出所事由別に見ると,いずれの出所年の出所受刑者においても,一貫して,満期釈放者の方が仮釈放者に比べて再入率が顕著に高い(5-1-3-7図参照)。
しかし,初入者と再入者を分けて見ると,満期釈放であるか仮釈放であるかにかかわらず,初入者と比べて再入者の方が,再入率がほぼ一貫して高く(5-1-3-8図参照),入所度数が多いほど再入率は高くなっており,特に入所度数が1度の者(初入者)と2度の者の差が顕著である(5-1-3-9図参照)ことから,入所度数の少ない者,特に初入者に対する重点的な働き掛けが有効と考えられる。
このように,特徴別に再入率等を検討する際には,再入率に関係する複数の要因同士が相互に絡み合い,相互に影響を与えている可能性を踏まえる必要がある。
出所受刑者人員を罪名別に見ると,窃盗と覚せい剤取締法違反を合わせて全体の過半数を占めていること(2-4-1-10図参照)に加え,窃盗と覚せい剤取締法違反の再入率は他の主たる罪名と比べて顕著に高く,窃盗では,平成26年出所受刑者の2年以内再入率が23.3%,23年出所受刑者の5年以内再入率が45.7%,覚せい剤取締法違反では,同2年以内再入率が20.7%,同5年以内再入率が49.4%となっている(5-1-3-14図参照)。前刑時の罪名と再入時の罪名の関係を見ると,23年出所受刑者のうち5年以内再入者について,前刑時の罪名と同一の罪名で再入所している者の割合は約6割である(5-1-3-11図CD-ROM参照)が,覚せい剤取締法違反では約8割,窃盗では7割を超えるなど,他の罪名と比べて顕著に高い(5-1-3-12図参照)。また,前刑時の罪名を問わず,覚せい剤取締法違反又は窃盗により再入所する者が一定の割合を占めており,前刑時の罪名が,傷害・暴行,強姦・強制わいせつ,放火,強盗,殺人であった者では,同一罪名の反復による再入者よりも,覚せい剤取締法違反又は窃盗による再入者の占める割合が高い(同図参照)。再犯を減少させるためには,覚せい剤取締法違反及び窃盗の再犯に至った要因等を分析し,その解決に焦点を当てた取組を重点的に推進する必要があることが改めて浮き彫りになった。また,同一又は同種の犯罪を反復しているのか,多岐にわたる犯罪を重ねているのかによっても,再犯防止に向けた対策の在り方は異なるものと考えられ,直近の犯罪に限らず,対象者のこれまでの犯罪歴の詳細を踏まえた上で,その特徴に応じた再犯防止の働き掛けも必要である。
罪名別の再入率を見ると,2年以内再入率(平成26年出所受刑者)では窃盗が最も高いが,5年以内再入率(23年出所受刑者)では覚せい剤取締法違反が最も高く(5-1-3-14図参照),罪名によって再犯までの期間に特徴があることがうかがえる。そこで,再入所の時期について前刑罪名別に見ると,窃盗及び詐欺では,10年以内再入者(18年出所受刑者)のうち過半数の者が2年以内に再入所しているのに対し,覚せい剤取締法違反では,その割合は3割を超える程度である(5-1-3-10表参照)。再犯までの期間を見ても同様の傾向であり(5-1-3-19図<4>参照),詐欺では5年以内再入者(23年出所受刑者)のうち約4割が,窃盗では3割強が,出所から6月未満で再犯に至っており,他の罪名と比べて,出所から短期間で再犯に至った者の割合が高い。一方,覚せい剤取締法違反では,その割合は約2割であり,むしろ再犯期間が出所から1年以上の者が過半数を占めている。直接的な被害者がいない覚せい剤取締法違反では,一般に犯罪が発覚しにくく,発覚までに時間を要する点を考慮する必要はあるものの,これらの数値は,窃盗及び詐欺については,出所から間もない時期における重点的な介入が必要であること,覚せい剤取締法違反については,出所後間もない時期のみならず,より息の長い継続的な支援が求められることを示唆している。