この項では,出所受刑者(仮釈放又は満期釈放により刑事施設を出所した者に限る。以下同じ。)の再入所状況について概観する。ここで,出所受刑者の再入率とは,各年の出所受刑者人員のうち,出所後の犯罪により,受刑のため刑事施設に再入所した者の人員の比率をいう(以下同じ。)。また,2年以内再入率とは,各年の出所受刑者人員のうち,出所年を1年目として,2年目,すなわち翌年の年末までに再入所した者の人員の比率をいう。5年以内,10年以内及び20年以内の各再入率も,同様に,各年の出所受刑者人員のうち,出所年を1年目として,それぞれ5年目,10年目及び20年目の各年の年末までに再入所した者(以下,5年目及び10年目の年末までに再入所した者をそれぞれ「5年以内再入者」及び「10年以内再入者」という。)の人員の比率をいう。なお,同一の出所受刑者について,出所後,複数回の刑事施設への再入所がある場合には,その最初の再入所を計上している。
5-1-3-7図は,平成8年,18年及び23年の出所受刑者について,5年以内,10年以内又は20年以内の再入率を出所事由別(仮釈放又は満期釈放の別をいう。以下同じ。)に見たものである。いずれの出所年の出所受刑者においても,満期釈放者は,仮釈放者よりも再入率が相当高い。再入率は,出所年を含む5年以内で急激に上昇するが,その後の曲線の傾きは緩やかになり,10年を越えるとほぼ横ばいになっている(同図<3>参照)。
5-1-3-8図は,平成18年及び23年の出所受刑者について,5年以内又は10年以内の再入率を出所事由別に見るとともに,これを初入者・再入者別に見たものである。満期釈放か仮釈放かにかかわらず,初入者と比べて再入者の方が,再入率がほぼ一貫して高い。また,10年以内再入率について見ると,初入者では,満期釈放と仮釈放の者の差が16.6ptであるのに対し,再入者では,その差は8.5ptであり,初入者においてその差が顕著に大きい。
5-1-3-9図は,平成18年及び23年の出所受刑者について,5年以内又は10年以内の再入率を入所度数別に見たものである。入所度数が多いほど再入率は高く,特に入所度数が1度の者(初入者)と2度の者の差は顕著である。
5-1-3-10表は,平成18年の出所受刑者について,同年から27年の年末までに再入所した者(10年以内再入者)のうち,2年以内又は5年以内に再入所した者の占める割合を総数と前刑罪名別に見たものである。総数では,10年以内再入者のうち,4割以上の者が2年以内に,8割以上の者が5年以内に再入所している。前刑罪名別に見ると,窃盗及び詐欺では,過半数の者が2年以内に再入所しているのに対し,覚せい剤取締法違反では,2年以内に再入所した者の割合は33.8%であった。
5-1-3-11図は,平成23年の出所受刑者の5年以内再入率を総数と罪名別で模式的に示したものである。5年以内再入率は,総数では約4割であり,罪名別では,覚せい剤取締法違反で約5割と最も高かった。同一罪名再入者(前回入所したときと同一罪名で再入所した者をいう。以下同じ。)の割合についても,覚せい剤取締法違反が最も高く,次いで,窃盗,詐欺,傷害・暴行の順であった。
5-1-3-12図は,平成23年の出所受刑者のうち,同年から27年の年末までに再入所した者(5年以内再入者)について,前刑罪名別に再入罪名の構成比を見たものである。5年以内再入者に占める同一罪名再入者の割合は,覚せい剤取締法違反において最も高く,覚せい剤取締法違反,窃盗共に7割を超えている。その他の前刑罪名においても,同一罪名再入者のほか,覚せい剤取締法違反及び窃盗により再入所する者が一定の割合を占めている。
5-1-3-13図は,平成23年の出所受刑者について,出所事由別の5年以内再入率を罪名別に見たものである。覚せい剤取締法違反及び窃盗は,他の罪名と比べ,満期釈放者・仮釈放者共に,5年以内再入率が高い。また,詐欺の満期釈放者は,覚せい剤取締法違反及び窃盗の満期釈放者に次いで,5年以内再入率が高い。
5-1-3-14図<1>は,平成26年の出所受刑者の人員と2年以内再入率の分布を罪名別に見たものである。窃盗は,出所受刑者人員が8,342人と他の罪名と比べて最も多く,2年以内再入率も23.3%と,他の罪名と比べて最も高い。覚せい剤取締法違反は,出所受刑者人員が6,456人と窃盗に次いで多く,2年以内再入率も20.7%と窃盗に次いで高い。その他の罪名では,詐欺と傷害・暴行で,いずれも出所受刑者人員が1,000人を超えており,2年以内再入率が10%を超えている。
5-1-3-14図<2>は,平成23年の出所受刑者の人員と5年以内再入率の分布を罪名別に見たものである。窃盗は,出所受刑者人員が9,682人と他の罪名と比べて最も多いが,5年以内再入率は45.7%と,覚せい剤取締法違反に次いで高い。覚せい剤取締法違反は,出所受刑者人員が6,422人と窃盗に次いで多いが,5年以内再入率は49.4%と窃盗を超えて最も高い。覚せい剤取締法違反,窃盗に次いで5年以内再入率が高いのは,傷害・暴行の36.1%,詐欺の29.8%であり,出所受刑者人員もそれぞれ1,667人,2,299人と多い。また,出所受刑者人員は1,000人に満たないものの,強姦・強制わいせつの5年以内再入率も24.1%となっている。
罪名別の出所受刑者人員と2年以内再入率,5年以内再入率の関係を見ると,窃盗と覚せい剤取締法違反が出所受刑者人員の大半を占め,その再入率の高さが際立っている(CD-ROM参照)。また,窃盗では,2年以内再入率が他の罪名と比べて最も高く,出所後短期間での再入所が目立つ。一方,覚せい剤取締法違反では,2年以内再入率は窃盗よりも低いものの,5年以内再入率は窃盗を超えて最も高くなっており,窃盗と比べて長期間経過してから再入所する者が多い。