家族間の信頼や良好な関わりは,非行や犯罪の再発を防止する上で極めて重要な役割を果たしており,また,親は,更生の支援者として,監督者として,少年非行や若年者犯罪を抑止する大きな力を持っている。
意識調査の結果によれば,非行少年及び若年犯罪者の約7割が,犯罪を思いとどまる心のブレーキとして家族を挙げている一方で,近年の離婚率の増加傾向とともにひとり親世帯が増加しており(7-1-2図),少年院入院者の保護者状況を見ると,実父母の構成比が減少し,実母のみの構成比が最も高くなっている(7-2-3-9図)。しかし,特別調査の結果によれば,本件少年院仮退院時の引受人が両親であるか否かといった保護状況の外形的な特徴(7-3-3-1-5図)よりも,少年院在院中の親族との面会状況(7-3-3-1-6図)や監督者たる保護者等との生活の継続(7-3-3-3-14図)の方が,その後の刑事処分の状況に影響している傾向が認められ,再非行・再犯の抑止には,家族との関わりの質が重要であることがうかがわれた。
これらのことから,非行少年・若年犯罪者の処遇においては,少年と保護者等との関係改善や保護者等の監護力を増進させるための働き掛け(本編第5章2項参照),出院・出所に至るまでのきめ細かな生活環境調整等が重要であるが,当初は親と同居していても,その後同居を解消する例が多い。また,家族の問題等のために監護に当たるべき適切な親族等のよりどころを欠いていたり,保護者等の監護力が低下している場合もあり,家族だけで更生を支えるのは限界がある。しかし,実際には保護者を除く更生の支援者は少なく(7-3-3-3-15図),家族を補完する支援者として,保護司,協力雇用主,更生保護女性会,BBS等の更生保護ボランティア等による支援の輪の拡大・充実を図ることが重要といえる。