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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第5章/第3節/2 

2 保護観察の充実強化のための主な施策

(1)重点的に保護観察を行うべき者に対する効果的な処遇の実施
 保護観察においては,従来から,長期刑仮釈放者,凶悪重大な事件を起こした少年等については,重点的にこれを行うべき者として,保護司との協働態勢の中で保護観察官の直接的関与を強める等,保護観察処遇の強化に努めてきた。さらに,平成19年度からは,これらの者のうち,生活状態又は精神状態が著しく不安定になっている長期刑仮釈放者,人格,環境等に複雑な問題を有する凶悪重大事犯少年,強盗,傷害,暴行等の暴力的犯罪を繰り返している者等,他者に危害を加えるおそれが高く,その処遇上最も配慮を要する者について,保護観察官が集中的・継続的な指導監督・補導援護を実施することにより,その再犯防止を図っている。また,同年度からは,仮釈放者及び保護観察付執行猶予者のうち,暴力的性向があり,かつ,薬物依存傾向や問題飲酒など暴力行為を助長すると思われる問題性を有する者を「特定暴力対象者」と認定し,保護観察官の関与を強化した綿密かつ専門的な指導を実施している。

(2)性犯罪者処遇プログラム等の受講の義務化
 保護観察においては,平成18年度から,類型別処遇制度(第2編第5章第2節2(2)参照)の「性犯罪等」類型に認定された仮釈放者及び保護観察付執行猶予者に対し,特別遵守事項として性犯罪者処遇プログラムの受講を定めた。
 さらに,今般制定された更生保護法は,保護観察対象者に対する特別遵守事項の類型の一つとして,保護観察対象者において,法務大臣が定めた性犯罪者処遇プログラムを始めとする専門的処遇プログラムを受講することを新たに定め,これに違反した場合には,少年院戻し収容,執行猶予取消し,仮釈放取消し,少年院送致の処分をされることがあることを明記した。

(3)面接等の義務化による生活実態把握の強化
 更生保護法において,すべての保護観察対象者が遵守すべき一般遵守事項として,保護観察官又は保護司に対する面接及び生活の実態を示す事実の申告が義務付けられた。これにより,保護観察所が,保護観察対象者の所在及び生活の実態をより的確に把握し,実効性の高い指導監督及び補導援護を実施することが可能となった。

(4)しょく罪指導プログラムの実施
 従来から,保護観察においては,一定の保護観察対象者に対して個別にしょく罪指導を行い,その再犯防止を図ってきたところであるが,平成17年4月施行の犯罪被害者等基本法,同年12月策定の犯罪被害者等基本計画を踏まえ,19年3月からはしょく罪指導プログラムを実施している。
 同プログラムは,被害者のある重大な犯罪を犯した保護観察対象者に対し,所定の課題を実行させることにより,犯した罪の重さを認識させ,悔悟の情を深めさせることを通じ,再び罪を犯さない決意を固めさせるとともに,被害者等に対し,その意向に配慮しながら誠実に対応するよう促すことを目的としている。

(5)保護観察付執行猶予者に対する保護観察の強化
 平成18年3月に執行猶予者保護観察法の一部が改正され,同年9月19日の施行日以降に保護観察付執行猶予の判決の言渡しを受けた者について,保護観察所長は,言渡しをした裁判所の意見を聴き,これに基づいて本人の特性に応じた特別遵守事項を設定し,それを遵守するよう指導監督することにより,一層効果的に本人の改善更生を図るとともに,転居及び7日以上の旅行の許否を保護観察所長の判断にかからしめることにより,保護観察付執行猶予者が所在不明になることを防止している。
 なお,更生保護法の施行により,執行猶予者保護観察法は廃止されることになるが,更生保護法には,上記と同様の規定が設けられている。

(6)その他の施策
 そのほか,所在不明対象者に対する対応の強化(本章第4節2(3)参照),刑務所出所者等総合的就労支援対策(本章第4節3参照),自立更生促進センター構想の推進(第2編第5章第6節2(5)参照)の各施策が実施されている。