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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第5章/第4節/3 

3 刑事司法機関と他の公的機関との連携

 無職であることが,犯罪促進要因となり得ることは,広く知られている。例えば,平成17年の新入受刑者のうち,入所度数が2度以上の者の場合,犯行時の職業を見ると,有職者が27.8%,無職者が70.6%となっている(矯正統計年報による。)。また,保護観察終了者のうち,取消し(保護処分取消し,仮釈放取消し及び刑執行猶予取消し),戻し収容,又は身柄拘束のまま保護観察が終了した者の比率を見ると,有職者の7.3%に比べて,無職者は39.6%と5倍を超えている(平成17年,法務省保護局の資料による。)。そこで,厚生労働省と法務省は,受刑者及び少年院在院者,保護観察対象者,更生緊急保護の対象者の就労を確保し,その改善更生を図るため,刑務所出所者等総合的就労支援対策を18年度から開始した。この制度は,就労支援を通じて再犯防止を図る,我が国初の本格的な省庁間連携による総合的な施策で,職業相談,職業紹介,求人・雇用情報の提供等に関して,公共職業安定所,刑事施設,少年院,保護観察所が連携して支援を実施するものである。刑事施設等においては,公共職業安定所職員がこれら施設に赴いて,職業講話や職業相談を行っているほか,職業安定所作成の就職ガイドブックの配布を行う等している。また,保護観察所においては,公共職業安定所と連携して,トライアル雇用制度を活用したり,この制度の下で就労を開始した者に関する身元保証制度を新設する等して,連携強化を図っている。
 また,刑事施設及び少年院に収容されている者で,高等学校卒業学歴を有しない者に,高等学校卒業程度認定試験を受験させることは,進学,就職の際の選択肢を増やすことにつながり,改善更生と円滑な社会復帰に資することから,平成19年度から法務省と文部科学省とが連携し,これらの施設内において,同試験を実施している(本章第2節2参照)。