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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節/4 

4 その他の主要な制度に関する変遷等

(1) 刑の執行猶予制度
 第二次世界大戦終結時の刑法においては,前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者及び前に禁錮以上の刑に処せられた者で執行終了又は執行免除の日から7年以内(前科による欠格期間)に禁錮以上の刑に処せられたことのない者が,2年以下の懲役又は禁錮に処せられるとき,裁判確定の日から1年以上5年以下の期間内その刑の執行を猶予できることとされていた。
 昭和22年の刑法の一部改正(第1編第2章第1節2参照)においては,刑の執行を猶予できる範囲が拡大され,3年以下の懲役若しくは禁錮又は5,000円以下の罰金に対して執行猶予が認められることとなった。
 この執行猶予に付することのできる罰金限度額については,その後,昭和24年2月に施行された罰金等臨時措置法により5万円となり,47年7月に施行された同法の一部改正により20万円となり,さらに,平成3年5月に施行された罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律により50万円となっている。(第1編第2章第1節3参照)
 昭和28年の刑法の一部改正によって,前科による欠格期間は5年に短縮されるとともに,執行猶予中の者に対しても,1年以下の懲役又は禁錮を言い渡す場合に再度の執行猶予が認められることとなり,この場合,執行猶予期間中,保護観察に付することとなった。さらに,29年の刑法の一部改正によって,初度の執行猶予の場合でも保護観察に付することか可能となった。(第1編第2章第1節2参照)
(2) 略式手続
 前記(本節1参照)のとおり,旧刑訴法の下でも略式手続に関する規定が設けられ,戦時刑事特別法に略式手続の特例が定められたが,同法は昭和21年1月に廃止された。
 現行刑事訴訟法においては,簡易裁判所は略式命令で5,000円以下の罰金又は科料を科することができると定められた。その後,略式命令で科することのできる罰金限度額は,執行猶予に付することのできる罰金限度額(本項(1)参照)と同様に改められた。
(3) 交通事件簡易処理制度
 第二次世界大戦終結後,いわゆる交通事件が増大し,通常の刑事裁判手続では処理が遅延する上,同事件はその違反態様が定型化していることなどから,特別の手続で処理する方法が考案された。
 昭和29年2月には,東京において,警察・検察庁・裁判所の三者が即日のうちに,それぞれ送致・起訴・裁判の手続を行う,いわゆる在庁略式手続が採用され,その後,全国でも同様の手続が行われるようになった。
 昭和29年5月には交通事件即決裁判手続法(昭和29年法律第113号)が公布(同年11月施行)され,簡易裁判所は,交通に関する刑事事件について被告人に異議がない場合には,公判前の即決裁判で,5万円以下の罰金又は科料を科することができるようになった。
 なお,この即決裁判で科することのできる罰金限度額については,執行猶予に付することのできる罰金限度額(本項(1)参照)と同様に,昭和47年7月に20万円となり,平成3年5月に50万円となった。
 さらに,昭和38年には交通切符制度が,42年には交通反則通告制度が,それぞれ採用されている(第1編第2章第2節1参照)
(4) 刑事事件における第三者所有物の没収手続
 昭和38年7月,刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭和38年法律第138号)が公布(同年8月施行)された。
 同法においては,刑事事件における被告人以外の者(第三者)の所有物を没収するに当たり,所有者たる第三者を保護するため,刑事事件手続の中で事前の告知,弁解,防御及び事後救済を保証する制度として,没収されるおそれのある物を所有する第三者が,被告事件の手続へ参加する手続等が定められた。