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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節/1 

第2章 犯罪者・非行少年の処遇を規律する法規の変遷

第1節 刑事訴訟法

1 終戦時の刑事訴訟手続

 第二次世界大戦終結前においては,我が国の刑事訴訟を規律する基本法として,いわゆる(旧)刑事訴訟法(大正11年法律第75号)(以下「旧刑訴法」という。)が施行されていた。また,違警罪即決例(明治18年太政官布告第31号),陪審法(大正12年法律第50号)等にも刑事訴訟手続に関する定めが置かれていた。
 戦後,日本国憲法の施行とともに廃止された主な制度として,予審制度,違警罪即決処分等がある。また,戦時中に停止された制度として陪審制度がある。
 旧刑訴法に定められていた予審制度は,公判前に,予審判事が,必要な事項を取り調べ,被告事件を公判に付するべきか否かを決める手続である。検察官は,地方裁判所に管轄のある事件について公訴を提起する場合は,直接に公判請求することも,予審を請求することもでき,予審は原則として検察官から請求を受けた事件について行われた。この予審制度は現行刑事訴訟法の施行とともに廃止された(本節2参照)
 違警罪即決例に規定されていた違警罪即決処分は,警察署長等が,その管轄地域内において犯された違警罪(拘留又は科料に当たる罪)を即決する処分であり,被告人は,即決処分に対しては,一定の期間内に正式裁判を請求することができ,その請求があったときは,区裁判所で正式裁判が行われた。この違警罪即決処分は,昭和22年5月に廃止された。(第1編第2章第2節3参照)
 陪審法に定められている陪審制度は,刑事事件の第一審の公判において,12人の陪審員が,証拠調べ等の結果に基づき,犯罪事実の有無を評議し,裁判長に意見を答申する制度である。陪審の対象となる事件は,特殊な事件を除き地方裁判所の管轄に属する,死刑又は無期の懲役若しくは禁錮の事件(法定陪審)と,被告人から請求のあった長期3年を超える有期の懲役若しくは禁錮に係る事件(請求陪審)で,いずれも被告人が公訴事実を認めていないものについて行われた。陪審法は昭和3年10月から全面施行されたものの,18年4月に陪審法ノ停止ニ関スル法律(昭和18年法律第88号)によって施行を停止されて,現在に至っている。
 さらに,昭和17年2月公布(同年3月施行)の戦時刑事特別法により,戦時における刑事手続に関し,弁護人の数の制限,判決書の簡素化等が定められた。また,18年10月の同法の一部改正(同年11月施行)により,旧刑訴法の下では罰金又は科料を科すことができるとされていた略式命令に関し,1年以下の懲役(窃盗罪等については3年以下の懲役)若しくは禁錮又は拘留をも科すことができる特例が定められたが,この特例は21年1月に廃止されている。