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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節/3 

3 刑事訴訟法の改正の概要

 現行の刑事訴訟法の主要な改正は,次のとおりである。
(1) 昭和23年から27年にかけての改正
 昭和23年12月には,裁判所法の一部を改正する等の法律(24年1月施行)によって,略式手続の一部を手直しする改正がなされている。
 昭和24年の一部改正(同年5月施行)においては,[1]家庭裁判所の設置に伴い,関係条文に「家庭裁判所」という字句を加えるなどするとともに,[2]身体の拘束を受けている被疑者については,特別の令状がなくても指紋の採取等をすることができることを明らかにするための規定の新設等が行われた。
 昭和27年には,破壊活動防止法(昭和27年法律第240号)の施行(同年7月)に伴う改正及び法務府設置法等の一部を改正する法律(昭和27年法律第268号)の施行(同年8月)に伴う改正がなされている。
(2) 昭和28年の改正
 昭和28年には,刑事訴訟法の施行以来4年を経過し,社会情勢の変化に伴って,当初は予想しなかったような問題点が次第に現れてきた。同年8月に公布(同年11月施行)された一部改正法においては,運用上現実に障害のある点を除去するなどのための改正が行われた。その主要な改正点は,[1]起訴後における勾留期間の更新の回数に制限のない罪及び権利保釈が認められない罪を,短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪にまで拡張したこと,[2]権利保釈が認められない場合として,被告人が被害者等に害を加え又は畏怖させる行為をすると疑うに足りる十分な理由がある場合を,また,保釈等が取り消される場合として,被告人が被害者等に害を加え若しくは加えようとし又は畏怖させる行為をした場合を,それぞれ追加したこと,[3]貧困の被告人に対し訴訟費用を免除することができるとしたこと,[4]捜査機関による供述拒否権の告知の規定の内容を改めたこと,[5]出頭を拒否する被告人に関して,一定の場合には,被告人の出頭なくして公判手続を行うことができるとしたこと,[6]簡易公判手続を新たに設けたこと,[7]控訴審における事実の取調べの範囲を拡大したこと,などである。
 さらに,昭和28年には,刑法の一部改正(同年12月施行。第1編第2章第1節2参照)によって再度の刑の執行猶予が認められたことに伴い,保護観察は刑の言渡しと同時に判決で言い渡すこととした刑事訴訟法の改正が行われている。
(3) 昭和29年の改正
 昭和29年には,日本の航空機が国外運航を開始したことに伴い,刑法の一部改正(同年7月施行。第1編第2章第1節2参照)によって国外にある日本の航空機内の犯罪についても処罰することができることとされたが,これに伴って,刑事訴訟法においては,国外にある日本の航空機内で犯した罪に関する土地管轄の規定が設けられた。また,同年7月の警察法(昭和29年法律第162号)の施行に伴う改正も行われた。
(4) 昭和33年の改正
 昭和33年の一部改正(同年5月施行)においては,[1]権利保釈が認められない場合及び保釈等が取り消される場合として,被告人が被害者等の親族に害を加えるおそれがあるなどの場合が追加され,また,[2]証人尋問の際,証人が被告人の面前において圧迫を受け充分な供述をすることができないと認められる場合に,被告人を退廷させる手続規定が設けられた。この刑事訴訟法の一部改正と同時に,刑法の一部改正もなされて証人威迫罪が新設され(第1編第2章第1節2参照),証人等の被害についての給付に関する法律(第1編第7章第3節参照)が制定されている。
(5) 昭和46年から63年にかけての改正
 昭和46年には,刑事訴訟費用等に関する必要事項を体系的に整備するとともに,その内容を明確化するための,刑事訴訟費用等に関する法律(昭和46年法律第41号)が公布・施行された。同法と同時に公布された同法等の施行法(同年7月施行)によって,刑事訴訟法においては,鑑定料等に関する改正が行われた。
 昭和51年には,刑事訴訟法の一部改正法(同年7月施行)によって,無罪の判決が確定した際の裁判に要した費用の補償に関する規定等を新設した。また,54年には,民事執行法(昭和54年法律第4号)の施行(55年10月)に伴う改正が,61年には,外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和61年法律第66号)の施行(62年4月)に伴う改正がそれぞれ行われた。63年には,裁判所の休日に関する法律(昭和63年法律第93号)の施行(64年1月1日)に伴う改正が行われた。
(6) 平成3年の改正
 平成3年には,罰金の額等の引上げのための刑法等の一部を改正する法律(同年5月施行。第1編第2章第1節2及び3参照)によって,刑事訴訟法の改正もなされ,[1]刑事訴訟法に定める罰金及び過料の多額を10万円に引き上げ,[2]勾留及び逮捕が制限される罪の基準となる罰金の額,公判期日における被告人の出頭義務及びその免除の基準となる罰金の額並びに略式命令が許される罰金の限度額等を原則としてそれぞれ2.5倍に改定し,[3]未決勾留日数に関する1日の法定通算の基準となる罰金額を4,000円に引き上げた。
(7) 平成4年及び7年の改正
 平成4年には,裁判所の休日に関する法律の改正法の施行(同年5月)に伴う改正が,7年には,刑法の一部改正法の施行(同年6月)に伴う改正が,それぞれ行われている。