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令和5年版 犯罪白書 第7編/第6章/第3節/1

1 非行少年特有の傾向・特徴への着目

本編第2章2項及び同編第4章第1節では、少年による刑法犯及び特別法犯の動向等について確認したところ、その傾向・特徴は、20歳以上の犯罪者を含む刑法犯や特別法犯全体の動向に見られる傾向・特徴とは異なる面もあることがうかがえた(第1編第1章第1節及び同編第2章第1節参照)。例えば、少年による刑法犯の検挙人員の推移については、戦後大きな三つの波が指摘されているところ、戦後最多は昭和58年であり、その頃、20歳以上の者による刑法犯の検挙人員を上回るほどであった(少年比52.0%。3-1-1-1図<2>参照)のに対し、20歳以上の者を含む刑法犯全体の検挙人員の推移については同様の波は見られず、25年が戦後最多であった(1-1-1-1図<1>参照)ほか、刑法犯の各罪名について少年比(令和4年)を見ると、総数では12.2%のところ、暴行は5.9%、恐喝は27.0%となっているなど、ばらつきが見られるなどの点が挙げられる(3-1-1-6表参照)。

また、特別調査の結果から、他機関等による世間一般の少年を対象とした調査結果を参考にしつつ、非行少年の特徴を明らかにしたところ、両調査の間には、対象者の年齢層のほか質問によっては項目の文言にも若干の相違があるなどの理由から、それぞれの結果を単純には比較できないことに留意を要するが、調査対象となった非行少年(少年院在院者及び保護観察処分少年)の食生活は乱れ気味であり、家族団らんの食事機会が少ない傾向が見られたほか、スマートフォン等を介したゲームやSNSに長時間親和しており、学校生活への不適応傾向等がうかがえた。

これらのことを踏まえると、非行少年は、20歳以上の犯罪者と比較しても、また、一般の少年と比較しても、特有の傾向・特徴があると考えられる。それぞれの非行少年が自らの非行事実に対し真摯に向き合う必要があることはもちろんであるが、非行少年への効果的な指導・支援を行う側が、その在り方を検討する前提として、非行少年特有の傾向・特徴があることに着目し、それらを的確に認識・理解することが重要であると考えられる。