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令和4年版 犯罪白書 第8編/第5章/第3節/4

4 まとめ

本編では、社会情勢等の変化、犯罪者・非行少年の動向、生活意識と価値観に関する特別調査の結果等を踏まえた分析・検討を進め、その傾向・特徴を踏まえた処遇の在り方についても考察を加えた。

我が国では、刑法犯認知件数や少年による刑法犯検挙人員は、近年、大幅に減少し、2年以内再入率も着実に低下してきている。一方、満期釈放等による出所受刑者の再入率が仮釈放による出所受刑者よりも相当高い状態で推移しているなど、再犯・再非行防止対策の更なる充実強化が求められている。そのような中で、令和4年6月に成立した刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)により、懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑が創設され、同刑に処せられた者の改善更生を図るため、必要な指導を行うことができるとされた(第2編第1章1項(1)参照)。本特集では、犯罪者・非行少年は、年齢の違い、犯罪・非行類型の違い及び犯罪・非行の進度の違いによって異なる動向が見られること、特別調査の結果、それらの違いによって生活意識や価値観にも違いがあることが明らかとなり、特性を踏まえた指導及び支援の必要性、重要性が裏付けられたと考える。

近時、我が国は、少子高齢化、共働き世帯数やひとり親世帯数の増加等の家族関係の変化、SNS等の通信手段の普及・利用の促進など、国民生活の変化が進んでいることに伴い、犯罪・非行のリスクアセスメントや、再犯・再非行防止のための指導・支援の在り方も、少なからぬ影響を受けているものと考えられる。そのため、再犯・再非行防止対策の更なる充実強化を図るためには、犯罪者・非行少年を取り巻く環境の変化を踏まえながら、犯罪・非行に至る原因、経緯、処遇の必要性について、最新の統計や犯罪・非行の動向等を分析するとともに、生活意識や価値観といった主観面を含めた多角的な検討を行うことにより、様々な特性ごとの特徴を把握することが不可欠と考えられる。今回の特集が、新たに創設された拘禁刑においても、犯罪者・非行少年の個々の特性を踏まえたきめ細やかな犯罪・非行のリスクアセスメント(Gツール(第2編第4章第3節1項(1)参照)、MJCA(第3編第2章第3節3項(1)参照)、CFP(第2編第5章第3節2項(1)参照)等)や指導・支援(特別改善指導(同編第4章第3節3項(2)参照)、専門的処遇プログラム(同編第5章第3節2項(3)及び第3編第2章第5節3項(3)参照)、類型別処遇(第2編第5章第3節2項(2)及び第3編第2章第5節3項(1)参照)等)をはじめ、犯罪者・非行少年の個々の特性を踏まえたより一層効果的な処遇を実現するための一助となることを期待するものである。

今後も、法務総合研究所においては、犯罪者・非行少年の特性に応じた効果的な処遇の実施に資するため、本人の生活意識や価値観という主観面を含めた実証的調査・研究を継続的に積み重ねていくこととしている。