保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対する処遇は、基本的に、特定暴力対象者に対する処遇、専門的処遇プログラム及び中間処遇制度を除き、仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者に対する処遇と同様である(第2編第5章第3節2項参照)。
保護観察処分少年(短期保護観察及び交通短期保護観察の対象者を除く。その他、令和4年4月以降は、保護処分時に特定少年であり、6月の保護観察に付された者を除く。以下(1)において同じ。)及び少年院仮退院者に対しても、類型別処遇(第2編第5章第3節2項(2)参照)が実施されている。令和3年末現在における保護観察処分少年及び少年院仮退院者の類型の認定状況を見ると、3-2-5-6表のとおりである。
殺人等の凶悪重大な事件を起こして保護観察に付された少年(保護観察処分少年及び少年院仮退院者)は、生活環境の調整及び保護観察の実施において特段の配慮を要するため、重点的な処遇期間(保護観察開始後1年間)を定め、保護観察官の関与を深めるとともに、しょく罪指導プログラム(第2編第5章第3節2項(4)参照)を実施するなど、被害者への対応に関する助言指導も行っている。
保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しては、その者の非行事実等に照らして必要と認められる場合、その特性等に十分配慮した上で、専門的処遇プログラムを受けることを生活行動指針として定め、当該プログラムが実施されることがある(第2編第5章第3節2項(3)参照)。令和4年4月以降は、各専門的処遇プログラムの対象者のうち、18歳以上で、当該プログラムを受けることを特別遵守事項として定める必要性が認められるものについては、原則として、当該プログラムを受けることを特別遵守事項として定めている。
保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しても、社会性の向上、自己有用感の涵(かん)養、規範意識の強化等を図るため、社会貢献活動が実施されており、平成27年6月からは、特別遵守事項として定めて義務付けられている。令和3年度は322回(前年比57回減)実施され、延べ人員として、225人(同128人減)の保護観察処分少年、26人(同17人減)の少年院仮退院者が参加した(法務省保護局の資料による。社会貢献活動の内容等については、第2編第5章第3節2項(10)参照)。
保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しても、法務省と厚生労働省が連携して実施している刑務所出所者等総合的就労支援対策に基づく計画的な就労支援及び更生保護就労支援事業による寄り添い型の就労支援が行われている(第2編第5章第3節2項(9)参照)。令和4年4月以降は、保護処分時に特定少年であって、就労に係る遵守事項が設定された者のうち、就労意欲に乏しいものや、当面就労の見込みがないものなどに対しては、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育むことを目的とするジョブキャリア学習を実施している。また、沼田町就業支援センターでは、将来の就農に意欲を持つ保護観察処分少年、少年院仮退院者及び若年仮釈放者を宿泊させて、実習農場等において職業訓練を実施している(同項(11)参照)。
保護観察所は、学校等の関係機関と連携した修学支援に取り組んでおり、令和3年度から、一部の保護観察所において、修学の継続のために支援が必要と認められる保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対し、個々の対象者の抱える課題等に応じて、学習支援、学校等の関係機関とのケース会議、キャリア教育講演会等の実施などを組み合わせた支援を実施する修学支援パッケージを試行的に行っている。
保護観察所においては、少年の保護観察対象者の保護者に対し、少年の生活実態等を把握して適切にその監護に当たるべきことや、少年の改善更生を妨げていると認められる保護者の行状を改めるべきことについて指導又は助言を行うほか、少年の非行に関連する問題の解消に資する知識等の提供を目的とする講習会や、保護者同士が子育てに関する経験、不安や悩みを話し合う保護者会を開催するなどしている。令和3年度においては、講習会・保護者会等が20回(前年比3回減)実施され、67人(前年比24人減)が参加した(法務省保護局の資料による。)。
令和4年4月以降、保護処分時に特定少年であり、6月の保護観察に付された者については、比較的軽微な罪を犯し、その問題性が比較的小さく、遵守事項違反の場合の収容の仕組みがなくても改善更生を図ることができると想定されることから、不良措置(本節4項(2)参照)を執ることができない枠組みで処遇を行っており、毎月1回、保護観察官に対し自己の生活状況について報告させるとともに、個々の課題に応じて、期間中に1回から数回、交通講習や社会貢献活動等の必要な講習等を受けさせる処遇(更生指導)を行っている。ただし、生活環境の改善・調整など補導援護の措置を特に継続して行う必要があると認められ、家庭裁判所からその旨の処遇勧告がなされた場合などには、必要に応じて担当保護司を指名し、毎月1回以上、保護観察官又は保護司を訪問させて生活状況を報告させ、状況に応じて必要な補導援護の措置を行っている。