特別調査の結果、周囲の環境や自分に関する意識では、家庭生活、友人関係及び自分の生き方に対する満足度は、いずれも初入者が再入者を上回り、「不満」の構成比は、いずれも再入者が初入者を上回っている。また、悩みを打ち明けられる人について「誰もいない」の該当率は、再入者が初入者を上回っている。
自らの再犯・再非行の原因を見ると、初入者は、「処分を軽く考えていたこと」の該当率が高く、再入者は、「自分が非行や犯罪をする原因が分かっていたが、対処できなかったこと」のほか、「困ったときの相談相手や援助してくれる人が周りにいなかったこと」及び「非行や犯罪をする仲間との関係が続いたこと」の該当率が高い。心のブレーキについては、初入者は、再入者と比べて、「父母のこと」、「子のこと」、「兄弟姉妹を含めた家族のこと」の構成比が再入者より高い一方、「社会からの信用を失うこと」の構成比が低い。これからの生活で大切なものについては、初入者は、再入者と比べて、「被害者のために何かお詫びをする」の該当率が顕著に高く、「家族と仲良くやっていく」、「知識を身につけ心を豊かにする」、「保護観察官・保護司とよく相談する」及び「親の言うことを聞く」の該当率も高い。
初入者は、処分を軽く考えていたことが犯罪・非行のリスクとなったとうかがえる一方、家庭生活を通じた家族の指導や保護観察官・保護司等の指導に従おうとする姿勢も見受けられる。そのため、初入者に対しては、他人からの助言・指導に応じようとする姿勢を支持し、保護観察官・保護司等の監督の下、家庭生活や社会生活を通じて、犯罪・非行が被害者だけでなく自らに対しても重大な結果をもたらすことを認識させることが重要と考えられる。その際、家族等による監督・指導を補完するものとして、更生保護女性会、BBS会等のボランティア、協力雇用主等(第2編第5章第6節参照)の活用が望まれるほか、被害者への慰謝の措置を促すことも重要である。
他方、再入者は、初入者と比べて、家庭生活、友人関係及び自分の生き方に対する満足度が低く、周囲に悩みを打ち明けられる人がおらず、再犯・再非行の原因として、対処スキルの不足、相談相手等の不存在及び不良交友関係の継続を挙げている者の割合が多いことから、支援機関につなげて不良交友からの離脱支援を含めた環境の調整を行うことが重要である。加えて、再入者は、被害者への慰謝の措置を講じる意識が低いという特徴も見受けられることから、刑事司法の各段階を通じて、被害者の視点を考慮した指導・支援を行うことも重要と考えられる。