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令和4年版 犯罪白書 第7編/第3章/第2節/1

第2節 主要な犯罪の動向
1 刑法犯認知件数の推移
(1)認知件数総数の推移

刑法犯の認知件数は、平成15年から減少を続けているところ、令和元年までの5年間における年平均減少率(複数年にわたる減少率から、一年当たりの減少率を求めたもの)は9.2%であったが、2年は61万4,231件(前年比13万4,328件(17.9%)減)であり、3年は56万8,104件(同4万6,127件(7.5%)減)であった(1-1-2-2図<1>CD-ROM参照)。2年及び3年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、政府による緊急事態宣言が発出され、対象地域の都道府県においては、外出自粛を始めとした感染防止に必要な数々の協力要請がなされ、全国的に人の移動や社会経済活動が大きく抑制された。このような人の活動の変化は、刑法犯認知件数の動向にも少なくない影響をもたらしたと見ることができる。

より詳細な動向を見るため、ここでは、刑法犯の認知件数を月別で三つの視点から見ていくこととする。

まず、令和元年から3年までの刑法犯認知件数の推移について、月別に単純に比較して見たものが7-3-2-1図<1>である。前年同月比で最も大きく減少したのは、2年5月(前年同月比32.1%減)であり、次いで、2年7月(同26.3%減)、2年4月(同23.9%減)の順であった。

次に、刑法犯の認知件数の推移には季節変動及び近年の減少傾向が影響した可能性があることを考慮し、平成27年から令和元年までの同月の認知件数の平均値を100とした場合における、元年・2年・3年の各月の指数を比較して見たのが7-3-2-1図<2>である。元年は、77.4~85.8と8.4ptの差の範囲内で推移していたが、2年は、1月から3月は76前後であったのに対し、4月は63.1、5月は54.8、7月は61.8と月によってばらつきが見られ、その最大値と最小値の差が23.1ptであった。3年は、5月は56.4であったものの、その他の月は59.7から68.0の範囲にあった。

さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における人の活動の変化を見る参考指標として、主要なターミナル駅(東京駅、大阪駅、名古屋駅、博多駅及び札幌駅)付近の滞在人口(人出)の合計(以下「主要ターミナル駅滞在人口(人出)」という。以下この節において同じ。)の推移と、令和元年から3年までの各月の刑法犯認知件数を比較して見たのが、7-3-2-1図<3>である。主要ターミナル駅滞在人口(人出)は、緊急事態宣言が初めて発出された2年4月から5月にかけて、他の月と比べて顕著に減少しており、主要ターミナル駅滞在人口(人出)の減少・増加に伴い、刑法犯認知件数も減少・増加が見られた。

7-3-2-1図 刑法犯 認知件数の推移(月別)
7-3-2-1図 刑法犯 認知件数の推移(月別)
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(2)主な刑法犯認知件数の推移(罪名別)

窃盗を除く刑法犯について、主な罪名ごとに令和元年から3年までの認知件数の推移を見ると、7-3-2-2図のとおりである。刑法犯総数と同様、三つの視点でそれぞれ比較した。

月別に単純に比較して見ると、強制わいせつでは、令和2年4月(前年同月比36.6%減)、5月(同46.1%減)が顕著に減少し、強制性交等では、2年5月(同30.6%減)が顕著に減少した。緊急事態宣言が初めて発出された2年4月から5月について、平成27年から令和元年までの同月の認知件数の平均値を100とした場合における各月の指数を見ると、強制わいせつは2年4月(49.5)及び5月(43.3)が、強制性交等は2年5月(77.0)が、それぞれ顕著に少なかったが、殺人、強盗及び放火には、特異な変化は見られなかった。

7-3-2-2図 主な刑法犯 認知件数の推移(月別、罪名別)
7-3-2-2図 主な刑法犯 認知件数の推移(月別、罪名別)
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(3)窃盗の認知件数の推移

認知件数において刑法犯の7割近くを占める窃盗は、平成15年から減少し、令和元年までの5年間における年平均減少率は9.9%であったが、2年は41万7,291件(前年比11万5,274件(21.6%)減)であり、3年は38万1,769件(同3万5,522件(8.5%)減)であった(CD-ROM資料1-2参照)。

令和元年から3年までの月別の認知件数の推移をこれまでと同様の三つの視点で見ると、7-3-2-3図のとおりである。平成27年から令和元年までの同月の認知件数の平均値を100とした場合における各月の指数を見ると、2年5月は50.0であり、同じ年の他の月と比べて顕著に少なかった。また、窃盗の認知件数の推移について、主要ターミナル駅滞在人口(人出)との関係を見ると、主要ターミナル駅滞在人口(人出)の減少・増加に伴い、窃盗の認知件数も減少・増加が見られた。

7-3-2-3図 窃盗 認知件数の推移(月別)
7-3-2-3図 窃盗 認知件数の推移(月別)
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窃盗の認知件数の推移を態様別に見ると、侵入窃盗及び非侵入窃盗は、平成15年以降、乗り物盗は、平成14年以降、いずれも減少を続けている。侵入窃盗は、令和元年までの5年間における年平均減少率は9.2%であったのに対し、2年は前年比23.7%減、3年は同15.5%減であり、非侵入窃盗は、元年までの5年間における年平均減少率は8.6%であったのに対し、2年は前年比17.2%減、3年は同5.4%減であり、乗り物盗は、元年までの5年間における年平均減少率は11.9%であったのに対し、2年は前年比27.8%減、3年は同11.6%減であった。

手口別に見ると、侵入窃盗のうち、事務所荒し、空き巣、忍込み及び出店荒しは、いずれも令和2年は前年比23%以上の減少であった。非侵入窃盗のうち、すり、自動販売機ねらい、仮睡者ねらい、ひったくり及び置引きは、いずれも2年は前年比42%以上の大きな減少であった一方、万引きは、元年までの5年間における年平均減少率は5.0%であったのに対し、2年は前年比7.0%減、3年は同1.2%減であった。乗り物盗のうち、自転車盗及び自動車盗は、いずれも2年は前年比27%以上の減少であった。

平成27年から令和3年までの窃盗の手口別の月別認知件数の推移をこれまでと同様の三つの視点で見ると、7-3-2-4図のとおりである。侵入窃盗のうち、住宅対象の侵入窃盗は、2年の5月、7月、12月に前年同月比40%以上の減少であり、非侵入窃盗のうち、すりは、2年中は、3月以降、前年の同月と比べて大幅に減少しており、特に2年5月は前年同月比81.7%減であった(1-1-2-2図CD-ROM参照)。

なお、株式会社Agoopの資料に基づいて算出したところ、全国に緊急事態宣言が初めて発出された令和2年4月及び5月は、主要駅における滞在人口(人出)は多くの都道府県において減少した一方、住宅地では増加したところもあり、住宅対象の侵入窃盗の減少は、外出自粛等の要請によるいわゆる「ステイホーム」の影響もあると考えられる(7-2-4図参照)。

7-3-2-4図 窃盗 認知件数の推移(月別、手口別)
7-3-2-4図 窃盗 認知件数の推移(月別、手口別)
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(4)主な街頭犯罪認知件数(地域別)の推移

7-3-2-5図は、平成27年から令和3年までの主な街頭犯罪認知件数(路上強盗、部品ねらい、車上ねらい、自動販売機ねらい、オートバイ盗及び自転車盗をいう。)の月別の推移を特定警戒都道府県(「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定。同年4月16日変更)において、特に重点的に感染拡大の防止に向けた取組を進めていく必要があるとされた13都道府県)と特定警戒都道府県以外の県で比較したものである。主な街頭犯罪認知件数は、特定警戒都道府県及び特定警戒都道府県以外の県のいずれにおいても、平成27年以降毎年減少を続けており、令和元年までは各月とも毎年同様の傾向を示していたが、2年5月、7月、8月、9月及び10月には前年同月と比べて特に減少しており、それまでとは特に異なった傾向が見られた。一方、特定警戒都道府県と特定警戒都道府県以外の県では、明らかな相違が見られなかった。なお、全国に初めて緊急事態宣言が発出された2年4月及び5月の主要駅における滞在人口(人出)を前年同月と比べて見ると、特定警戒都道府県における滞在人口(人出)の合計は、顕著に減少しており、特定警戒都道府県以外における滞在人口(人出)の合計も、その減少幅は特定警戒都道府県よりはやや小さいものの、顕著に減少していた。

7-3-2-5図 主な街頭犯罪の認知件数の推移(月別、地域別)
7-3-2-5図 主な街頭犯罪の認知件数の推移(月別、地域別)
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(5)東京都における自転車盗の発生件数の推移

主な街頭犯罪のうち、特に件数が多く、週単位での比較が可能な東京都における自転車盗の発生件数の推移と東京駅における滞在人口(人出)の推移を比較して見ると、7-3-2-6図のとおりである。滞在人口(人出)の減少・増加に伴い、東京都における自転車盗の発生件数も減少・増加が見られた。

7-3-2-6図 東京都における自転車盗の発生件数の推移(週別)
7-3-2-6図 東京都における自転車盗の発生件数の推移(週別)
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