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令和2年版 犯罪白書 第7編/第5章/第3節/1

1 矯正施設入所中の生活環境の調整等
(1)地方更生保護委員会
ア 生活環境の調整への関わり
(ア)調査(アセスメント)

地方更生保護委員会は,薬物犯罪の受刑者等のうち保護観察付一部執行猶予者等を対象とし,刑事施設から提供を受けた当該受刑者についての情報(本章第2節3項及び本節2項(3)ア(ア)参照),保護観察所で生活環境の調整(本項(2)参照)が開始されている場合は保護観察所による生活環境の調整の状況,当該受刑者との面接結果等を踏まえ,生活環境の調整に関することのほか,薬物への依存度,医療又は援助の必要性等,薬物犯罪の受刑者特有の問題性に焦点を当てた調査(アセスメント)を行っている。同調査は,関係機関において当該調査による情報を共有し,生活環境の調整を問題性に応じて行うことができるようにすることで同調整の充実を図るとともに,出所後の保護観察処遇を始め薬物依存からの回復のための地域支援の充実を図ることを目的としている。なお,地方更生保護委員会は,執行すべき刑期が短期間である者等を除き,その他の薬物犯罪の受刑者等とも面接による調査を実施しており,その結果は保護観察所に共有されている。

(イ)保護観察所への指導・助言・連絡調整

地方更生保護委員会は,本項(1)ア(ア)の調査結果を踏まえるなどし,薬物犯罪の受刑者等の意向も踏まえ,円滑な社会復帰のために最も適当な生活環境が確保されるよう,広域的な見地から,保護観察所が行う生活環境の調整に関し,更に調整を行い又は新たに生活環境の調整を開始するよう指導及び助言をしたり,並行して複数の保護観察所が生活環境の調整を行っている場合には,当該保護観察所間の連絡調整を行うなどしている。

イ 住居特定審理

地方更生保護委員会は,保護観察付一部執行猶予者について,執行猶予期間に先立って仮釈放がない場合,実刑部分の執行から執行猶予期間の保護観察へ円滑に移行できるよう,生活環境の調整の結果を踏まえた住居特定審理第2編第5章第2節2項参照)をし,居住すべき住居を釈放前に特定している。

(2)保護観察所における生活環境の調整

保護観察所は,薬物犯罪の受刑者等について,矯正施設から受刑者等の身上調査書を受けたときや,地方更生保護委員会から新たな帰住予定地について生活環境の調整を開始すべき旨の指導及び助言(本項(1)ア(イ)参照)を受けたときなどに生活環境の調整第2編第5章第2節2項及び第3編第2章第5節1項参照)を開始する。地方更生保護委員会の調査(本項(1)ア(ア)参照)の結果や指導・助言・連絡調整(同(イ)参照)も踏まえ,必要に応じて関係機関等とケア会議や事前協議を行い,出所後の社会復帰上の課題と対応方針を検討するなどして計画の作成又は見直しを行うなどし,薬物犯罪の受刑者等の同意に基づき,薬物犯罪の受刑者等が地域で必要な治療や支援が受けられるよう準備をするなどしている。薬物犯罪の受刑者等のうち,高齢者又は障害を有する者で,かつ,適当な帰住先がない者については特別調整第2編第4章第3節5項及び第5章第2節2項並びに第3編第2章第4節3項(5)参照)を実施している。

また,薬物犯罪の受刑者等が円滑に社会生活へ移行するためにはその家族等への支援が必要であることを踏まえ,薬物事犯者の家族が薬物依存に関する正確な知識を持ち,薬物事犯者に対する適切なコミュニケーション技術を身に付けることや支援機関等の情報を得て家族自身が必要な支援を受けることができるよう,精神保健福祉センターや民間支援団体等と連携して引受人会・家族会を開催するなどし,家族等への働き掛けをしている。薬物事犯者に係る引受人会・家族会の開催回数及び参加人員の推移(資料を入手し得た平成25年度以降)は,7-5-3-2表のとおりである。

7-5-3-2表 薬物事犯者に係る引受人会・家族会の開催回数・参加人員の推移
7-5-3-2表 薬物事犯者に係る引受人会・家族会の開催回数・参加人員の推移
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