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令和2年版 犯罪白書 第7編/第5章/第1節

第1節 検察

刑務所等の矯正施設から出所等する者に対して行う就労支援や住居等の確保といった支援が「出口支援」と呼ばれるのに対し,矯正施設における処遇を経ない被疑者・被告人(起訴猶予処分,全部執行猶予付判決が見込まれる者等)に対して行う社会復帰支援は「入口支援」と呼ばれる。検察においては,罪を犯した者の円滑な社会復帰や再犯防止の観点から,各地の実情に応じ,被疑者又は被告人のそれぞれの事情等を踏まえつつ,保護観察所,地方公共団体,関係する福祉機関等と連携しながら,釈放後の帰住先の確保や福祉サービスの受給につなげたり,事案によっては,被告人に対して保護観察付執行猶予の求刑を行ったりするなどしている。また,各地方検察庁では,規模や実情に応じ,「社会復帰支援室」や「刑事政策推進室」等の名称で刑事政策的取組を専門に行う部署を設け,社会福祉士を社会福祉アドバイザーとして採用して同部署に配置してその知見を活用するなどしているが,これらの部署では,具体的事件における対象者の処遇に関して,その事件を担当する検察官らへの助言を行いながら,福祉機関・保護観察所等と連携しつつ,釈放後の生活に関する対象者への助言や福祉事務所への同行支援をするなどの様々な入口支援を行っている。

これらは,薬物事犯者に対する特有の対応策ではないが,最近10年間について見ると,覚醒剤取締法,大麻取締法,麻薬取締法及び毒劇法の各違反の検察庁新規受理人員の総数は,道交違反を除く特別法犯の検察庁新規受理人員の25%前後を占めていること(前者についてはCD-ROM資料1-4を,後者については同2-1をそれぞれ参照),大麻取締法違反の起訴猶予率は30~35%前後,麻薬取締法違反の起訴猶予率は20~30%前後で推移していること(7-4-1-18図参照),地方裁判所における覚醒剤取締法違反の全部執行猶予率はおおむね40%前後で推移していること(7-4-1-22図参照)などを踏まえると,薬物事犯者の中には,こうした入口支援の対象となり得る者が相応に存在するものと思われる。