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令和2年版 犯罪白書 第7編/第4章/第1節/5

5 更生保護
(1)仮釈放

7-4-1-32図は,覚醒剤取締法違反について,出所受刑者(仮釈放者,一部執行猶予の実刑部分刑期終了又は満期釈放により刑事施設を出所した者に限る。)の人員及び仮釈放率の推移(最近20年間)を見たものである。出所受刑者の人員は,平成14年に約7,300人に達した後,増減を繰り返していたが,26年から減少し続け,令和元年は5,367人(前年比10.3%減)であった。元年において,一部執行猶予者で仮釈放となった者は1,108人(同23.0%増)であり,一部執行猶予の実刑部分の刑期終了により出所した者は259人(同45.5%増)であった。

仮釈放率については,平成20年まで低下傾向にあった後,21年から上昇傾向が続き,令和元年は平成12年以降最も高い65.9%(前年比0.1pt上昇)であり,出所受刑者全体の仮釈放率(2-5-2-1図参照)と比べると7.5pt高かった。

7-4-1-32図 覚醒剤取締法違反 出所受刑者人員・仮釈放率の推移
7-4-1-32図 覚醒剤取締法違反 出所受刑者人員・仮釈放率の推移
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(2)保護観察
ア 保護観察開始人員の推移

7-4-1-33図は,覚醒剤取締法違反について,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者の保護観察開始人員並びに全部執行猶予者の保護観察率の推移(最近20年間)を見たものである。同法違反による保護観察開始人員は平成22年以降増加傾向にあり,令和元年は5,127人(前年比0.2%増)であった。

保護観察開始人員について見ると,仮釈放者(全部実刑者)は,平成23年から3年連続で増加した後,26年以降はほぼ横ばいで推移していたが,29年から減少し,令和元年は2,435人(前年比18.6%減)であった。一方,仮釈放者(一部執行猶予者)は,平成29年以降増加しており,令和元年は1,114人(同22.8%増)であった。保護観察付一部執行猶予者は,刑の一部執行猶予制度が開始された翌年の平成29年は208人であったが,その後増加し続け,令和元年は1,310人(同52.0%増)であった。保護観察付全部執行猶予者は,平成18年以降はほぼ横ばいで推移していたが,28年から4年連続で減少し,令和元年は268人(同24.1%減)であった。全部執行猶予者の保護観察率は,平成初期は20%前後であったが,平成6年以降緩やかな低下傾向が見られ,18年には8.6%にまで低下し,19年に上昇に転じた後はおおむね10~12%台で推移し,令和元年は10.2%(同1.0pt低下)であった。一方,一部執行猶予者の保護観察率は平成28年が100.0%,その後は99.9%であったが,令和元年は100.0%であった(CD-ROM参照)。

7-4-1-33図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員・全部執行猶予者の保護観察率の推移
7-4-1-33図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員・全部執行猶予者の保護観察率の推移
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イ 年齢

7-4-1-34図は,覚醒剤取締法違反について,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者の令和元年における保護観察開始人員の年齢層別構成比を男女別に見たものである。

20歳代の仮釈放者(全部実刑者)は男性の構成比がわずかに高いものの,その他の保護観察においては女性は男性と比べて20歳代及び30歳代の構成比が高く,65歳以上の高齢者の構成比が低い。なお,覚醒剤取締法違反の保護観察開始人員と保護観察開始人員総数(2-5-3-2図参照)とを比較すると,仮釈放者(全部実刑者)では,同法違反の方が総数よりも20歳代の構成比が低く,40歳代及び50~64歳の構成比が高い。

男性は,いずれの保護観察においても,40歳代の構成比が最も高く,仮釈放者(全部実刑者)では,50歳以上の構成比が高い。一方,女性は,仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付一部執行猶予者では,男性と同様,40歳代の構成比が最も高いが,仮釈放者(一部執行猶予者)では,30歳代の構成比が最も高い。保護観察付全部執行猶予者では,20歳代の構成比及び30歳代の構成比が最も高く,この両者で約65%を占めている。

7-4-1-34図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員の年齢層別構成比(男女別)
7-4-1-34図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員の年齢層別構成比(男女別)
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ウ 居住状況

7-4-1-35図は,覚醒剤取締法違反について,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者の令和元年における保護観察開始人員の居住状況別構成比を男女別に見たものである(満期釈放等の居住状況別構成比については,7-4-1-31図参照)。

仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)では,男女共に更生保護施設に居住する者の構成比が最も高く,保護観察付全部執行猶予者では,男女共に単身で居住する者の構成比が最も高い。保護観察付一部執行猶予者では,男性は更生保護施設に居住する者の構成比が最も高く,女性は母と同居する者の構成比が最も高い。

また,いずれの保護観察においても,男性は女性と比べて親族と同居する者の構成比が低く,仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付一部執行猶予者では,更生保護施設に居住する者の構成比が高い。女性は,その他の親族と同居する者の構成比が男性と比較して高い。

7-4-1-35図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員の居住状況別構成比(男女別)
7-4-1-35図 覚醒剤取締法違反 保護観察開始人員の居住状況別構成比(男女別)
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エ 薬物等使用歴

7-4-1-36図は,令和元年における仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者の保護観察開始人員の使用歴のある薬物等(保護観察開始時までに使用していたと認められる薬物等をいい,複数の薬物等を使用していたときは,最も使用頻度の高い薬物等をいう。)の種類別構成比を男女別に見たものである。仮釈放者(一部執行猶予者)及び保護観察付一部執行猶予者全体では90%以上の者に覚醒剤の使用歴が認められるのに対し,仮釈放者(全部実刑者)及び保護観察付全部執行猶予者では薬物等の使用歴が認められない者が多数を占めている。ただし,仮釈放者(全部実刑者)では男性で28.7%,女性で38.2%,保護観察付全部執行猶予者では男性で13.2%,女性で24.1%の者に覚醒剤の使用歴が認められるほか,仮釈放者(一部執行猶予者)及び保護観察付一部執行猶予者と比べて覚醒剤以外の薬物等の使用歴が認められる者の構成比が高い。男女別に見ると,覚醒剤の使用歴が認められる者の構成比は女性の方が高いが,麻薬・あへん・大麻の使用歴が認められる者の構成比は男性の方が高くなっている。また,薬物等の使用歴が認められない者の構成比は女性の方が低かった。

7-4-1-36図 保護観察開始人員の使用歴のある薬物等の種類別構成比(男女別)
7-4-1-36図 保護観察開始人員の使用歴のある薬物等の種類別構成比(男女別)
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オ 保護観察終了人員の状況等

7-4-1-37図は,覚醒剤取締法違反について,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者),保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者の令和元年における保護観察終了人員の終了事由別構成比を見たものである。

保護観察終了人員総数(2-5-3-8図参照)と比べると,仮釈放者(全部実刑者及び一部執行猶予者)では,ほぼ同様の傾向を示しているが,保護観察付全部執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者では,覚醒剤取締法違反の方が総数よりも刑の執行猶予の言渡しの取消しで終了した者の割合が高くなっている。なお,保護観察付全部執行猶予者は,仮釈放者と比べて処分の取消しで保護観察が終了した者の割合が高いが,これは両者における保護観察期間の長短の影響が考えられる。

7-4-1-37図 覚醒剤取締法違反 保護観察終了人員の終了事由別構成比
7-4-1-37図 覚醒剤取締法違反 保護観察終了人員の終了事由別構成比
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