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令和2年版 犯罪白書 第7編/第3章/第7節

第7節 麻薬特例法

麻薬特例法は,麻薬新条約の批准に備えるとともに,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図ることなどを目的とする法律で,平成3年10月に成立した(平成4年7月施行)。

麻薬新条約は,昭和63年,薬物犯罪の経済的側面に焦点を合わせ,そこから生じる不法収益のはく奪を図るとともに,世界的規模で行われている薬物犯罪取締りの国際的協力を図るものとして作成された(我が国は平成元年に署名。4年9月発効)。また,これと併行し,元年のアルシュ・サミットにおいても麻薬問題の解決にマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策が必要としてOECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に金融活動作業部会(FATF。第2編第6章第1節2項参照)が設置され,2年,麻薬新条約でも合意されたマネー・ローンダリングの処罰,不法収益の没収保全制度とともに,同条約には含まれない金融機関等の疑わしい取引の当局への報告義務について勧告がなされた。

このような背景を踏まえ,麻薬特例法においては,業として行う不法輸入等の罪,マネー・ローンダリング(薬物犯罪収益等の仮装・隠匿・収受)の罪,規制薬物としての物品の輸入等の罪及び薬物犯罪収益等の仮装・隠匿・収受等のあおり・唆しの罪を新設する規定,国際的なコントロールド・デリバリー(監視付き移転)を可能とする規定,薬物犯罪収益等の必要的没収・追徴やその保全手続,その没収・追徴のための国際共助手続の規定等が設けられている。

麻薬特例法の重要な改正としては,平成26年法律第74号による改正により,クルーズ船の外国人旅客に係る出入国手続の円滑化を目的として新たな特例上陸(船舶観光上陸)許可制度が新設されたことに伴い,同許可制度を利用して入国しようとする外国人についても,コントロールド・デリバリー捜査の対象とし得るようにしたこと(平成27年1月施行)などがある。