平成元年(1989年)にG7サミットの宣言を受けて設立された金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)は,平成2年(1990年)にマネー・ローンダリング対策に関する40の勧告(平成8年(1996年)及び平成15年(2003年)に改訂)を,平成13年(2001年)にテロ資金供与に関する8の特別勧告(平成16年(2004年)に改訂され,9の特別勧告となった。)をそれぞれ採択し,平成24年(2012年)には,従来の40の勧告及び9の特別勧告を統合・合理化する一方で,大量破壊兵器の拡散に関与する者の資産凍結の実施,法人・信託等に関する透明性の向上,マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の温床となるリスクが高い分野における対策の重点化等を求める勧告(第4次改訂勧告)を採択した。
我が国も,FATF参加国の一員として,犯罪収益移転防止法に基づき,金融機関等の特定事業者による顧客の身元等の確認や疑わしい取引の届出制度等の対策を実施し,国家公安委員会が疑わしい取引に関する情報を外国関係機関に提供するなどしているほか,金融庁が共同議長を務めるFATF関連部会で暗号資産に係る新たな規範の実施に向けた議論・検討において主導的な役割を果たすなどしており,マネー・ローンダリング対策及びテロ資金供与対策における国際的な連携に積極的に参加している。
国内においては,最近では,平成26年(2014年),いわゆるマネロン・テロ資金対策関連三法が成立し,<1>公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律(平成14年法律第67号。いわゆるテロ資金提供処罰法)の改正(平成26年法律第113号)により,公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者に対する資金以外の利益の提供に係る行為についての処罰規定等が整備され,<2>犯罪収益移転防止法の改正(平成26年法律第117号)により,疑わしい取引の届出に関する判断の方法,外国所在為替取引業者との契約締結の際の確認義務,犯罪収益移転危険度調査書の作成等に係る国家公安委員会の責務等が定められたほか,<3>国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年法律第124号。いわゆる国際テロリスト財産凍結法)が制定され,国際テロリストとして公告又は指定された者に係る国内取引が規制されることとなった。