少年院には,次の<1>から<4>までの種類があり,それぞれ,入院時の少年の年齢,犯罪的傾向の程度及び心身の状況等に応じて,以下の者を収容している。
<1> 第1種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満のもの(<2>に定める者を除く。)
<2> 第2種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだ,おおむね16歳以上23歳未満のもの
<3> 第3種 保護処分の執行を受ける者であって,心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のもの
<4> 第4種 少年院において刑の執行を受ける者
少年院においては,在院者の特性に応じて体系的・組織的な矯正教育を実施するため,矯正教育課程が定められている。矯正教育課程は,在院者の年齢,心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度,在院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らして一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに,矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めたものである。
少年院の種類ごとに指定された矯正教育課程は,3-2-4-9表のとおりであり,平成29年における少年院入院者の矯正教育課程別人員は,同表の人員欄のとおりである。
少年院における処遇の中核となるのは矯正教育であり,在院者には,生活指導,職業指導,教科指導,体育指導及び特別活動指導の五つの分野にわたって以下の指導が行われる。
少年院では,在院者に対し,善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる知識及び生活態度を習得させるために必要な生活指導を行う。
また,在院者の抱える特定の事情の改善に資するために,6種類の特定生活指導が実施されているが,平成29年における各指導の受講終了人員は,<1>被害者の視点を取り入れた教育が171人,<2>薬物非行防止指導が208人,<3>性非行防止指導が228人,<4>暴力防止指導が580人,<5>家族関係指導が708人,<6>交友関係指導が1,144人であった(法務省矯正局の資料による。)。
このうち,薬物非行防止指導及び性非行防止指導については,重点指導施設を指定し,指導の充実を図っている。平成29年度は,薬物非行防止指導では11庁,性非行防止指導では2庁が重点指導施設に指定されており,これらの施設では,他の少年院からも対象者を受け入れるなどして,グループワークによる重点的かつ集中的な指導が実施されている。
少年院では,在院者に対し,勤労意欲を高め,職業上有用な知識及び技能を習得させるために必要な職業指導を行っており,その実施種目として,電気工事科,自動車整備科,給排水設備科,情報処理科,介護福祉科,溶接科,土木・建築科,クリーニング科,農園芸科,伝統工芸科,手芸科,陶芸科,木工科等がある。
平成29年における出院者(退院又は仮退院により少年院を出院した者に限る。以下この節において同じ。)のうち,在院中に指定された職業指導の種目において,溶接,情報処理,土木・建築等の資格・免許を取得した者は延べ人員で1,967人,それ以外の資格取得講座において,小型車両系建設機械運転,フォークリフト運転,危険物取扱者等の資格・免許を取得した者は延べ人員で2,544人である(法務省矯正局の資料による。)。
義務教育未終了等の在院者に対しては,小学校又は中学校の学習指導要領に準拠した教科指導を行う。そのほか,高等学校への編入,復学等のために高度な学力を身に付けることが必要な者に対しては,その学力に応じた教科指導を行うことができる。平成29年における出院者のうち,中学校又は高等学校への復学が決定した者は,それぞれ52人,107人であり,在院中に中学校の修了証明書を授与された者は,134人であった(法務省大臣官房司法法制部の資料による。)。なお,19年度から,法務省と文部科学省の連携により,少年院内において,高等学校卒業程度認定試験を実施しており,29年度の受験者数は588人,合格者数は,高卒認定合格者が191人,一部科目合格者が374人であった(文部科学省総合教育政策局の資料による。)。
体育指導においては,各種スポーツ種目等を通じて,日常生活に必要な体力や技能を高めることのみならず,遵法の精神や協調性を育むような指導に留意している。
特別活動指導においては,在院者の情操を豊かにし,自主,自律及び協同の精神を養うため,自主的活動,クラブ活動,情操的活動,行事,社会貢献活動等が行われている。
少年院では,在院者の保護者等に対し,在院者の処遇に関する情報の提供,少年院の職員による面接の実施,少年院で実施する教育活動への参加依頼等を通じて,在院者の処遇への理解と協力を得るよう努めている。平成29年に保護者等の参加を依頼した少年院の主な教育活動としては,保護者等と在院者が共同で活動し,相互理解を深めさせることなどを目的とした保護者参加型プログラムを延べ327回(保護者等の参加人員は延べ3,276人),保護者等に在院者の処遇と円滑な社会復帰に向けた支援内容の理解を深めさせることを目的とした保護者会を延べ1,044回(保護者等の参加人員は延べ4,902人),家族間のコミュニケーション等に関する講習会を延べ312回(保護者等の参加人員は延べ2,149人)実施した(法務省矯正局の資料による。)。
また,少年院では,家族関係を調整する上で必要があると認められる場合のほか,在院者と保護者等との間で,将来の進路や出院後の生活,被害弁償等の重要な問題について話し合う必要があると認められるなどの場合,在院者を少年院の特に区分した場所に収容し,同所にその保護者等を宿泊させる方法により面会をさせることができる(宿泊面会)が,平成29年に実施された宿泊面会は延べ92回であった(法務省矯正局の資料による。)。
少年院では,家庭裁判所等の関係機関を始めとして,学校,病院,民間の篤志家等に対して協力を求め,その専門的な知識・技術を活用して在院者の改善更生を図っている。
民間の篤志家として,篤志面接委員,教誨師,更生保護女性会員,BBS会員等が支援活動を行っている。篤志面接委員は,在院者に対し,精神的悩みについての相談・助言,教養指導等を行っており,平成29年末現在,511人を少年院の篤志面接委員として委嘱している(法務省矯正局の資料による。)。教誨師は,在院者の希望に応じて宗教教誨を行っており,平成29年末現在,359人を少年院の教誨師として依頼している(法務省矯正局の資料による。)。更生保護女性会員,BBS会員等は,定期的に少年院を訪問し,様々な形で少年院の処遇を支援している(第2編第4章第3節3項及び第5章第5節4項参照)。
少年院は,出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者に対しては,その意向を尊重しつつ,保護観察所と連携して,適切な帰住先を確保すること,医療及び療養を受けることを助けること,修学又は就業を助けることなどの社会復帰支援を行っている。
法務省では,厚生労働省と連携し,刑務所出所者等総合的就労支援対策の一環として,少年院在院者に対して,ハローワークの職員による職業相談等を実施しており(第2編第4章第2節4項参照),また,障害を有し,かつ,適当な帰住先がない在院者に対して,出院後速やかに福祉サービスを受けることができるようにするための特別調整を実施している(第2編第4章第2節5項及び第5章第1節2項並びに第7編第5章第1節1項参照)ところ,平成28年度からは,学ぶことの意義,学校の種類,学校卒業後の進路等について情報を提供することで,修学に対する在院者の動機付けを高めさせることを目的とした修学情報ハンドブックを全在院者に配布したほか,在院者の復学等の希望に合致する学校情報の収集を民間企業に委託し,当該在院者に提供する体制(通称「修学支援デスク」)を整備した。