前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成27年版 犯罪白書 第6編/第2章/第6節/2

2 矯正

この項では,強姦,強制わいせつの再入者の人員の推移のほか,再入者の前刑罪名(前回入所したときの罪名をいう。以下この項において同じ。),再犯期間等について概観する。なお,強姦,強制わいせつの再入者の特徴をより詳細に見るため,単年ではなく,複数年の累計人員により細目に分類した上で分析を行っているものもある。

(1)再入の受刑者
ア 人員

強姦,強制わいせつの入所受刑者人員のうち,初入者及び再入者の人員並びに再入者率(入所受刑者人員に占める再入者の人員の比率をいう。以下この項において同じ。)の推移(最近20年間)を見ると,6-2-6-3図のとおりである。強姦の再入者人員は,平成19年以降減少傾向にあり,26年の再入者率は14.9%(前年比4.8pt低下)であった。強制わいせつの再入者人員は,18年以降,100人を超えて,おおむね横ばいで推移しており,26年の再入者率は29.8%(前年比1.4pt低下)であった。強姦,強制わいせつ共に,入所受刑者総数の再入者率(59.3%。4-1-3-1図<1>参照)と比べると顕著に低い。

6-2-6-3図 強姦・強制わいせつ 入所受刑者人員(初入者・再入者別)・再入者率の推移
6-2-6-3図 強姦・強制わいせつ 入所受刑者人員(初入者・再入者別)・再入者率の推移
Excel形式のファイルはこちら
イ 前刑罪名

罪名別に,再入者の前刑罪名別構成比(平成7年〜26年の累計)を見ると,6-2-6-4図のとおりである。罪名ごとの再入者の前刑罪名別構成比について,最近20年間の推移を見ると,その傾向に大きな変化はなかった(CD-ROM参照)。強姦について,同一罪名再入者(再入罪名と前刑罪名が同一である者をいう。以下この項において同じ。)の割合は27.7%,同種罪名の強制わいせつが前刑罪名である者の割合は7.3%である。強姦について,前刑罪名として割合が高い異種罪名は,窃盗,覚せい剤取締法違反,傷害であった。強制わいせつについて,同一罪名再入者の割合は32.3%,同種罪名の強姦が前刑罪名である者の割合は13.2%である。強制わいせつについて,前刑罪名として割合が高い異種罪名は,窃盗,傷害,覚せい剤取締法違反であった。同一罪名再入者の割合について見ると,強姦,強制わいせつは,窃盗,覚せい剤取締法違反ほど高くないものの,殺人,強盗より高い。

6-2-6-4図 再入者の前刑罪名別構成比(罪名別)
6-2-6-4図 再入者の前刑罪名別構成比(罪名別)
Excel形式のファイルはこちら
ウ 再犯期間

平成22年から26年までの再入者のうち,前刑罪名が強姦,強制わいせつの者の再犯期間(前刑出所日から再入の受刑に係る罪を犯した日までの期間をいう。以下この項において同じ。)別構成比を見ると,6-2-6-5図のとおりである。同期間の再入者総数と比べて,前刑罪名が強姦,強制わいせつの再入者は,再犯期間が3か月未満の者の割合が低く,5年以上の者の割合が高い。また,前刑罪名が強姦,強制わいせつの者が,強姦,強制わいせつで再入所した場合と,強姦,強制わいせつ以外の罪名で再入所した場合との,それぞれの再犯期間を比べると,特徴的な違いはなかった。

6-2-6-5図 強姦・強制わいせつ 再入者の再犯期間別構成比
6-2-6-5図 強姦・強制わいせつ 再入者の再犯期間別構成比
Excel形式のファイルはこちら

平成22年から26年までの再入者のうち,前刑罪名が強姦,強制わいせつの者の再犯期間を前刑出所時の年齢層別に見ると,6-2-6-6図のとおりである。各総数で見ると,強制わいせつの者の方が,強姦の者と比べ,再犯期間が短い者の割合が高い。特に,再犯期間が2年未満の者の割合(56.7%)は,強姦より18.0pt高く,再入者総数に占める再犯期間が2年未満の者の割合(60.3%)とほぼ同程度であった。強姦では,年齢層が上がるにつれ,再犯期間の短い者の割合が高くなる傾向にある。強姦の29歳以下の者では,再犯期間が2年未満の者の割合は25.0%である一方で,5年以上の者の割合は約5割であった。

6-2-6-6図 強姦・強制わいせつ 再入者の再犯期間別構成比(前刑出所時の年齢層別)
6-2-6-6図 強姦・強制わいせつ 再入者の再犯期間別構成比(前刑出所時の年齢層別)
Excel形式のファイルはこちら

平成22年から26年までの再入者のうち,前刑罪名が強姦,強制わいせつの者の再犯期間を前刑出所時の帰住先別に見ると,6-2-6-7図のとおりである。再入者総数,強姦及び強制わいせつ共に,帰住先がその他である者は,帰住先が親族等である者と比べて,再犯期間が短い者の割合が高い。また,強制わいせつの者は,強姦の者と比べて,いずれの帰住先においても,再犯期間が短い者の割合が高い。

6-2-6-7図 強姦・強制わいせつ 再入者の再犯期間別構成比(前刑帰住先別)
6-2-6-7図 強姦・強制わいせつ 再入者の再犯期間別構成比(前刑帰住先別)
Excel形式のファイルはこちら
エ 保護処分歴

平成22年から26年までの強姦,強制わいせつの入所受刑者の保護処分歴別構成比を,初入者,再入者別に見るとともに,これを年齢層別に見ると,6-2-6-8図のとおりである。強姦,強制わいせつ共に,保護処分歴のある者の割合は,初入者,再入者のいずれも若い年齢層の者ほど高い傾向にある。強姦,強制わいせつの29歳以下の保護処分歴のある者の割合は,入所受刑者総数と比べると,初入者では低いが,再入者では同程度である(4-1-3-3図参照)。

6-2-6-8図 強姦・強制わいせつ 入所受刑者の保護処分歴別構成比(初入者・再入者別,年齢層別)
6-2-6-8図 強姦・強制わいせつ 入所受刑者の保護処分歴別構成比(初入者・再入者別,年齢層別)
Excel形式のファイルはこちら
(2)出所受刑者の再入所状況

平成17年及び22年の強姦,強制わいせつの出所受刑者について,出所年を含む5年間又は10年間における累積再入率(各年の年末までに再入所した者の累積人員の比率をいう。以下この項において同じ。)を出所事由別に見ると,6-2-6-9図のとおりである。強姦,強制わいせつ共に,出所受刑者総数と比べると,満期釈放者及び仮釈放者のいずれにおいても,5年以内累積再入率及び10年以内累積再入率は低い(4-1-3-4図参照)。また,10年以内に再入所した者に占める5年以内に再入所した者の比率を出所事由別に見ると,満期釈放者では,強姦は78.7%,強制わいせつは87.7%であり,仮釈放者では,強姦は74.5%,強制わいせつは77.8%であった。一方,出所受刑者総数では,満期釈放者で90.2%, 仮釈放者で82.5%であった(同図CD-ROM参照)。強姦は,出所受刑者総数と比べて,5年を超えて再入所する者の割合がやや高い。

平成17年及び22年の出所受刑者について,強姦,強制わいせつ共に,出所受刑者総数と比べると,満期釈放者及び仮釈放者のいずれも,2年以内に再入所する者の割合は低い(同図参照)。

6-2-6-9図 強姦・強制わいせつ 出所受刑者の出所事由別累積再入率
6-2-6-9図 強姦・強制わいせつ 出所受刑者の出所事由別累積再入率
Excel形式のファイルはこちら