侵入窃盗事犯者は,男子が圧倒的に多く(6-2-1-6図<1>P214,本節1項(1)P309参照),また若年者の割合が高く,万引き事犯者と比べても年齢層が低いことが特徴である(6-2-1-7図P215参照)。今回の特別調査においても,前科のない侵入窃盗事犯者の約6割が若年者であった(6-4-5-1-1図P309参照)。単独犯の多い万引き事犯者とは異なり,侵入窃盗事犯者では共犯者のいる者が約4割を占めており(本節1項(4)エP314参照),若年者の背景事情としても「不良交友」の比率が高かった(6-4-5-1-7図P313参照)。また,前科のない侵入窃盗事犯者は6割が無職者であり(6-4-5-1-3図P310参照),無職の理由としては,勤労意欲なしの者が多い(6-4-5-1-4図P310参照)。経済状況が不良な者も多い傾向がうかがわれる(本節1項(2)オP311参照)。住居不定の者の割合は,万引き事犯者よりも高く(本節1項(2)イP309参照),犯行に至った動機・背景事情としては,各年齢層を通じて「生活困窮」を動機とする比率が高い(6-4-5-1-7図P313参照)。これらのことから,万引き事犯者における生活困窮型とも言うべき者が多いことがうかがえる。他方で,各年齢層を通じた背景事情として「ギャンブル耽溺」の比率も上位にある。
前科のない侵入窃盗事犯者は,前歴のない者が6割近くを占めており(6-4-5-1-5図P311参照),その割合は,前科のない万引き事犯者における割合(11.7%。6-4-4-1-9図CD-ROM参照)と比べて顕著に高いが,圧倒的多数が懲役に処せられている(6-4-5-1-9図P314参照)。万引き事犯者は,前科・前歴のない場合には,検挙されても微罪処分や起訴猶予処分となる者が相当数を占めるのに対し,侵入窃盗事犯者の場合には,前科・前歴がなくても,起訴され,懲役に処せられる者が大半である。
前科のない侵入窃盗事犯者に対しては,若年者が多いこともあり,適切な働き掛けにより再犯を防止し,改善更生を促すことは十分可能であると考えられる。ただ,その一方で,前科のない侵入窃盗事犯者は,住居不定の者や就労状況・経済状況が不良の者の割合が高いことからすると,それらの不良要素が解消されないままになると,常習的・職業的に犯行を敢行する事態に陥りやすいこともうかがわれる。窃盗再犯率との関連がうかがわれる動機・背景事情としては,「習慣飲酒・アルコール依存」,「酒代欲しさ」が挙げられ(本節2項(2)P316参照),住居不定の者の窃盗再犯率にも高い傾向が認められた(6-4-5-2-3図P316参照)ことから,そのような事態を防ぐためにも,初発の段階で,住居や就労の確保を行うなど,再犯防止のための環境調整を十分に行うことが重要である。そのためには,本人の犯罪親和的な価値観や考え方を改めさせるための指導・教育,住居の安定や職場への定着までを見据えた就労支援策,アルコールやギャンブル等の問題への対応,金銭管理方法の習得のための教育,不良交友からの離脱指導といった多面的な働き掛けを行っていく必要がある。