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平成26年版 犯罪白書 第6編/第5章

第5章 おわりに

本編では,統計資料や特別調査等の結果に基づき,最近の窃盗事犯の動向,処遇の各段階において取り組まれている各種施策を概観したほか,平成23年6月1日から同月30日までの1か月間に窃盗の罪で有罪判決を受けた者を調査対象として実態調査を行った上で,18年に導入された罰金刑の適用状況や比較的犯罪傾向の進んでいないと考えられる前科のない万引き事犯者と前科のない侵入窃盗事犯者に,それぞれ焦点を当てて,それらの実態を明らかにするとともに,再犯につながりやすい要因等を導き出す試みを行った。

また,前章において,侵入窃盗事犯者は,万引き事犯者とは異なり,若年層が多く,共犯者のいる者の割合が高い上,窃盗に至る動機・背景事情としては「友人・知人の誘い」や「不良交友」の比率が高いこと,住居不定の者や勤労意欲のない無職者の割合が高いこと,経済状況が不良の者の割合が高いことから,初発の段階で,住居や就労の確保に向けての適切な働き掛けが重要であることなどを考察した(本編第4章第5節3項P317参照)。

本章では,前章までで明らかとなった窃盗事犯の動向,罰金処分者,前科のない万引き事犯者及び前科のない侵入窃盗事犯者の実態と再犯につながりやすい要因等を踏まえた上で,主に万引き事犯者を中心に,今後の再犯防止対策を検討する上で留意すべきと思われる点について考察する。ここで考察した内容は,万引き以外の手口を含む窃盗事犯者全般についても当てはまることが多いと思われるが,万引き以外の手口による窃盗事犯者に対する再犯防止対策を十全なものとするためには,今後,他の手口の窃盗事犯者についても,今回の特別調査と同様の調査・分析を行い,再犯の要因等を明らかにしていくことが有効であると思われる。