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6 対象者の多重的・複合的な問題性を踏まえた処遇と関係機関の連携の必要性

少年・若年者の非行や犯罪には,本人の資質の問題とともに,家庭,学校,職場,地域社会といったレベルを異にする環境上の問題等,様々な問題が多重的・複合的に関わっている。

今回の特別調査の対象者について,刑事処分に至った直近の問題行動を見ると,不良交友を中心に,ギャンブルや借金等の問題が複合的に派生しているケースが少なくなく,薬物問題の背景にも不良交友問題が介在している(7-3-3-3-7図)など,それぞれの問題が多重的・複合的に絡んでおり,多面的な働き掛けが必要なことが示唆される。

これら多重的・複合的な問題の克服に当たっては,少年矯正の分野等で研究開発が進んでいるリスクアセスメントツール(所定の処遇領域・課題等ごとに問題性を分析し,再非行のおそれを構造的に評価し,処遇の方針を探求する手法)等も今後活用しつつ,各対象者の特性やニーズを踏まえ処遇の個別化を推進する中で,健全な生活を維持・発展させる上でベースとなる一般的な生活指導と,各人の非行や犯罪の特質を踏まえた特別な指導(各種問題群別指導,特別改善指導プログラム,薬物乱用防止教育,暴力防止プログラム等(本編第5章参照))の双方をバランス良く実施していくことが必要である。

少年・若年犯罪者の再非行・再犯防止のためには,少年時に非行少年の問題性を的確に把握し,早期にその解消を図ることが重要である。非行少年は,非行を重ねながら問題性を深めていき,成人後も再犯を繰り返していくことが多い。非行少年の処遇に関与する家庭裁判所を中心として,警察,検察庁,少年鑑別所,少年院,刑事施設,保護観察所,児童自立支援施設を含む児童福祉機関,医療機関,労働関係機関,民間諸団体等の関係各機関が,それぞれの専門的立場から処遇の各段階で緊密に連携しつつ,社会内の資源の活用も図りながら,一人一人の非行少年・若年犯罪者の更生に向けて相互補完的で切れ目のない働き掛けを行っていく必要があろう。