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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第6章/3 

3 まとめ

 以上,本特集においては,主として,犯歴や統計資料の分析や特別調査の実施により,再犯者対策の重要性や近時の再犯の傾向を示すとともに,再犯者について,罪名,年齢,量刑,属性,初犯と2犯目との関係等の様々な視点から,その実態を分析し,これに対する効果的な対策の在り方についての視点を示すべく考察を行ってきた。これをまとめれば,再犯者といっても,その実態は,罪名や年齢等の各種類型により,あるいは個々の特性によって様々であり,したがって,これに対する有効な対策も,これらの特質に応じて,重点的・集中的に行わなければならないということである。
 そして,そのためには,まず,犯罪者を確実に検挙することを前提に,犯罪事実,事件の動機,背景事情等を可能な限り解明することはもとより,犯罪者の特質,再犯の可能性にも留意した捜査・公判活動を行い,寛厳よろしきを得た適正な科刑を実現することが求められる。
 次に,矯正・更生保護の分野においては,受刑者,保護観察対象者の特質を可能な限り解明し,個々の特質に応じた個別の処遇を行うことが重要である。刑事施設においては,平成18年から施行されている受刑者処遇法(その後,これが更に改正されて刑事収容施設法となっている。)において,個別処遇の原則を採ることを明らかにし,この原則の下,個々の受刑者の資質及び環境に応じ,その者にとって最も適切な処遇が行われることとなっている(第2編第4章第4節参照)。また,保護観察所においては,従来から,分類処遇,類型別処遇の各制度を採っている上,19年からは,重点的に保護観察を行うべき者については,保護観察官が集中的・継続的な指導監督を行うなど,保護観察の充実・強化が図られている(第2編第5章第2節本編第5章第3節参照)。これらの新しい施策・取組については,まだ始まったばかりであるところ,今後,効果検証を重ねることにより,処遇現場の実態をも考慮しながら,更に充実・改善していくことが肝要である。
 さらに,再犯防止の実効性を高めるためには,多岐にわたる犯罪の要因を突き止め,これらの多面的・複合的な要因に対し,包括的かつ継続的な対策(指導監督及び支援)を行うことが不可欠である(第5章第4節参照)。刑事司法機関においては,それぞれが再犯防止という刑事政策上の目的を強く意識し,相互に連携して職務を遂行すること,さらには,支援に関連する就労,教育,保健・医療,福祉等の機関・組織,民間団体,個人等とも密接に連携することの必要性がますます高まってきている。また,犯罪を犯した者の多くがいずれ地域社会に戻ってくること等に照らせば,犯罪者の更生に対する国民や地域社会の理解を促進していくことも重要である。