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 平成19年版 犯罪白書 第7編/第6章/1 

第6章 おわりに

1 再犯防止対策の今日的意義

 犯罪を犯して有罪判決を受けた者の約70%は,その後犯罪を犯すことなく更生しているのであり,再び犯罪を犯して有罪判決を受ける者(以下,本章において「再犯者」という。)は,全犯罪者の約30%である。しかし,この約30%の再犯者が約60%の犯罪を犯しており,社会に多大な脅威と被害を与えている(第3章第2節参照)。したがって,有効な再犯防止対策を樹立することができれば,犯罪情勢は,大幅に改善されるであろう。ここに刑事政策における再犯防止対策の重要性がある。
 また,平成2年(1990年),7年(1995年)及び12年(2000年)の各初犯者が,その後5年以内に再犯に及んだ比率を見ると,2年の初犯者においては14.6%であったのが,7年においては15.9%,12年においては18.5%と,上昇傾向にある(第3章第3節参照)。これは,我が国の一般刑法犯の認知件数が,8年以降急激に増加し,14年には戦後最多を記録したことと無縁とは思われない。その後,一般刑法犯の認知件数は4年連続で減少したとはいえ,依然として相当高い水準にあり,このような犯罪情勢の現状を考慮すれば,再犯防止のための有効な対策をいかに講ずるかは,一層重要であるといえよう。
 このような見地から,本特集では,主として,犯歴・統計資料の分析や,特別調査を実施することにより,再犯者の実態を詳細に分析してその様々な傾向を明らかにし,再犯防止対策の視点となるものを示そうと心掛けた。再犯者の実態については,主に第3章及び第4章において詳細に述べたとおりであるが,以下では,これらに基づき,再犯防止対策を検討するに当たり特に留意すべきと思われる若干の点について述べることとする。