前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成19年版 犯罪白書 第7編/第3章/第3節 

第3節 近時の再犯の傾向

 本節では,近時における再犯の傾向を概観する。
 まず,その年に確定した有罪判決において,何犯目の犯罪が多いのかを知るため,100万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,犯歴回数別に各年の犯歴の件数構成比の推移(最近30年間)を見たものが,7-3-3-1図である。

7-3-3-1図 犯歴回数別犯歴の件数構成比の推移

 各年とも,1犯(初犯者による事件)の比率が49%ないし58%と最も高く,この比率は,昭和63年以降,徐々にではあるが,おおむね上昇傾向にある。
 次に,その年に確定した再犯事件において,どのような罪名が多いのかを知るため,100万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,自由刑と財産刑別に再犯の罪名別犯歴の件数構成比の推移(最近30年間)を見たものが,7-3-3-2図である。
 自由刑(懲役,禁錮又は拘留)においては,昭和52年以降,窃盗の比率が最も高く,31%ないし37%を占め,次いで,覚せい剤取締法違反,傷害,詐欺,恐喝の順であった。なお,窃盗,傷害,詐欺の比率が毎年おおむね一定であるのに対し,覚せい剤取締法違反については,経年による変化が比較的大きい。
 財産刑(罰金又は科料)においては,常に傷害の比率が19%ないし26%と最も高く,次いで,暴行,風営適正化法違反が上位を占めることが多かった。なお,財産刑を科された傷害は,一般に,ほとんどが略式手続により罰金に処せられたものであり,比較的軽微な事案が多い。

7-3-3-2図 再犯の自由刑・財産刑別・罪名別犯歴の件数構成比の推移

 次に,経年による再犯状況の罪名別の変化を知るため,100万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,昭和60年(1985年),平成2年(1990年),7年(1995年)及び12年(2000年)の初犯者が,その後,5年以内に再犯に及んだ比率(以下,本節において「5年以内再犯率」という。)を罪名別に見たものが,7-3-3-3図である。

7-3-3-3図 初犯者の年次別・罪名別5年以内再犯率

 7-3-3-3図は,横軸に昭和60年,平成2年,7年及び12年の各年次をとり,縦軸に各年における初犯者の犯罪全体及び罪名別の5年以内再犯率をとったものである。
 初犯者の5年以内再犯率を見ると,犯罪全体では,平成2年の初犯者(14.6%)が最も低く,次いで,7年(15.9%),昭和60年(16.4%),平成12年(18.5%)の順であった。罪名別では,各年次ともに,窃盗及び覚せい剤取締法違反の5年以内再犯率が高かった。他方,7年と12年との比較では,恐喝と詐欺の5年以内再犯率の悪化が目立っており,それぞれ6.6ポイント,4.8ポイント上昇している。

 続いて,100万人初犯者・再犯者混合犯歴を対象として,経年による再犯状況の変化を年齢層別に見たものが,7-3-3-4図である。

7-3-3-4図 初犯者の年次別・年齢層別5年以内再犯率

 7-3-3-4図は,横軸に年齢層をとり,縦軸に昭和60年,平成2年,7年及び12年の各年次別の初犯者の5年以内再犯率をとったものである。
 平成12年の初犯者の5年以内再犯率は,20代を除くすべての年齢層において,他の三つの年次よりも高く,特に40代を中心にその傾向が顕著であることが注目される。
 再犯者の中には,本章第2節で述べたとおり,多数回再犯者が全体の0.8%おり,それらの者だけで全犯歴の6.4%を占めている。こうした多数回再犯者の裁判時年齢層別犯歴の件数構成比の推移を,50万人再犯者犯歴を対象として見たものが,7-3-3-5図である。

7-3-3-5図 多数回再犯者の裁判時年齢層別犯歴の件数構成比の推移

 多数回再犯者は,平成2年(1990年)には,裁判時に40代だった者(41.3%)の比率が最も高く,次いで,50代(36.2%),30代(11.1%)の順となっていた。ところが,17年(2005年)では,裁判時に50代だった者(41.2%)の比率が最も高く,次いで,60代(32.8%),40代(15.3%)の順となっており,30代の者の比率は3.1%に低下した。各年の多数回再犯者に占める50代以上の者の比率は年々高くなっている。